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第838章
2018/03/30

AI時代にどう生きていくか

— 未来を決めるのは自分しかない —

AIが世界を統制する時代

各国が超高性能なAIを持つマザーコンピュータを保有し、戦争などの国家の一大事から、食事、結婚、生命の誕生まで、あらゆることに対して最適解を弾き出し、全てを統制する世界・・・。

手塚治虫の火の鳥 未来編ではそのような、高度に情報技術が発達した未来が描かれています。当時はこんな滑稽な世界になるわけがないだろうと思っていたのですが、昨今、AI技術が発達してきた事により、架空だった世界が現実味を帯びてきたなと感じています。

これまでもAI技術はありましたが、その多くは、プログラマの想定力を結集させたものでした。考えうる入力パターンとその解をプログラマが何万行というif文に詰め込んでおり、コンピュータが導き出す結果は、突き詰めればいずれもあらかじめ想定されたものでした。そのため、人の想像を超えた解が導き出されることはなく、火の鳥 未来編のような、コンピュータが人間の判断を超え、人間をコントロールするような話は実際にはないなと思っていました。

しかし、今回のAIブームは違うように思います。何が違うのかと言いますと、ディープラーニングの台頭です。

ディープラーニングは人の脳に似ている

ディープラーニングは、例えて言えば人間の直感に似ています。ロジックで判断する部分もありつつ、経験則から暗黙知的に解を導くという特徴を持っています。加えて、人が忘れていたり気付くことができない傾向も膨大なデータから探り出すことができ、ものによっては人よりも優れた判断ができるといえます。

また、学習するほど判断力が増してくるところも人に似ています。赤ん坊や幼児は大人の言葉を聞いてもトンチンカンな答えを返してきますが、成長するにつれて徐々に的確な答えを返せるようになります。それと同様に、ディープラーニングも、インプットのデータが増える(=学習する)ほどその精度が高まってきます。

ディープラーニングも、いまはまだ赤ん坊から幼児期へ進んだばかりという印象であり、知能も教師データ(ディープラーニングの判断精度高めるための正誤データ)も発展途上のため、エラーもかなり多いです。ただ、人間が、経験を積めば積むほど知能が高まり、アウトプットの精度が高まってくるのと同様に、そのうちディープラーニングも良質なデータが豊富に蓄積されるにつれ成熟度を増してくるでしょう。人間のベテランの方が直感的に発した言葉は、その人が言うならと皆が信用するように、じきにAIがそういうなら、となる時代もそう遠くはないと思います。

火の鳥 未来編にまた話を戻しますと、その世界では、人類は高度に発達した知能を持つマザーコンピュータにより、洗練され統制された、安全な社会で生活を送っています。一般人はおろか、政治家までもが『個人的な感傷におぼれやすい人間の政治家より 電子頭脳の計算にたよったほうが確実です』と、マザーコンピュータに従ってあらゆる物事を判断していて、マザーコンピュータにもエラーがあるかもな、とは思いつつも、誰もがその判断に従っています。

あるとき、各国のマザーコンピュータの意見が食い違い、マザーコンピュータ同士が直接対決することになります。そして、高度な計算の結果、お互いに戦争しかないという結論となるのですが、当然人間も、なぜ戦争かと疑問を呈するわけです。

そのときのマザーコンピュータの発した言葉は以下の通りです。

『私の計算では戦争以外にありませんっ』

ここでは、なぜその結論に至ったか、その理由は書かれていません。膨大なデータから導き出された解ではありますが、明確なロジックがそこにはないと思われるため、恐らく、マザーコンピュータ自身にも説明ができないのでしょう。ディープラーニングの究極的な未来の姿が、まさにここに描かれていたわけです。

その後、マザーコンピュータがいうなら、理由は分からないけど正しい結果なのであろうとお互いの国が判断し、宣戦布告をします。そして、同日同時刻に核ミサイルを発射し、敵対国とその同盟国を攻撃しあい、一瞬にして世界が滅びます。

ディープラーニングと人類の行き着く先を暗示した極端な例ではありますが、AIがいうならそうしようか、という未来は、もうすぐそこまで迫ってきていると言えます。

AI時代にどう生きていくべきか

実は、AIは既に私たちの身近なところに使われています。

例えば、広告、ゲーム、適性試験、株式投資、EC、SNSなど、身近なところにAIが入り込んでいます。

また、就職活動や転職活動にも徐々に「HR Tech」という名のもとにAIが導入されつつあり、そのうち結婚、出産、子育て、自宅購入、進学といった大きなイベントから、服装、散髪、食事といった日常生活にまでAIが食い込んでくるようになるでしょう。

しかしそのAI、本当に信じていいのでしょうか。よく考えてみて頂きたいのですが、あなたは誰かの意見を聞くとしても、その意見を鵜呑みにしてしまうでしょうか。人の脳はAIより遥かに発達しています。その人間の言葉であっても、あくまでいち意見として捉え、最終的に自分がどうするかを決めるのは自分自身ではないでしょうか。

AIは、過去の傾向から未来を予測してレコメンドをすることはできますし、過去の経験を分析して隠れた傾向を見つけることもできます。ただ、あくまで経験則から解を出すことに強みがあるわけで、逆に過去に前例のないことへの解の精度は高くなく、明示的にデータ化されていないことを人のように想像して解を出すことは苦手です。

転職活動においても、『AIで分析したところ、あなたにとってはこの選択がベストだという結果が出ています。ご希望とは異なりますが、AIが言っているから間違いありません』というようなことが、そのうち真面目に言われ出すだろうと私は想像しています。

でも、重ねて言いますが、よく考えて頂きたいのです。結婚を考えたとき、AIで計算された『理想的な人』と、あなたは結婚するでしょうか。恐らく多くの方が『No』というはずです。

転職や結婚に限らず、『AIによるとこうだから、そう決めるのが良い』という話はこれからますます増えていくでしょう。

そんな時は、このコラムを思い出して頂き、『いやいや、レコメンドは有り難いけど、自分の頭で考えて結論を出すものでしょ』と思い直し、AIよりも確実に優れているご自身の頭で、ご自身の人生を決める判断をして頂ければと思います。

参考文献:火の鳥 2 未来編 手塚治虫 著 KADOKAWA 出版

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績

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