COLUMN
コラム:転職の技術
第790章
2017/03/31

Heads or Tails

— 転職活動では裏も見よ —

表裏一体の公理

突然ですが、宇宙誕生の話をします。宇宙はビックバン(大爆発)により誕生したことが知られていますよね。それは簡単に言うと、簡単ではないですが「物質」と「反物質」が同量に存在していたものの、「反物質」が瞬間的に、より多く破壊されて消滅し、「物質世界」、つまり現在の宇宙が存在するようになったとのことです。

何を言っているか分からないかもしれないので、もう少し簡単にしましょう。学校で物理を習った方は、力のつり合いの矢印を書くときに、「作用・反作用の法則」によって、二つの矢印を書いたことを覚えていますでしょうか。
もっと身近な話をします。あなたはことコラムを読んでいるときに息を「吐いて」いますか、「吸って」いますか。

前置きが長くなりましたが、一つの物事の事象を見るときに、「正」があれば「負」がある、つまり、表面で何かが起こっているということは、その裏でもそれに対応した何かが起こっているのが一般的に知られている原則です。

私たちは生きるために呼吸をする、それには「吐く」と「吸う」の両面が必ずあります。物理の力学では、物質にある力が働けば、それとは逆の反作用の力が働きます。宇宙が誕生したということは、今の我々が見ている世界と対照的に、「反物質」と呼ばれる何かが本当は存在していました。主に物理世界で語られる内容ですが、例えば「嬉しい」と「悲しい」、「得意」と「苦手」、「眠る」と「起きる」、「上手」と「下手」のように、ひとつひとつの動作や感情にも、もちろん例外はありますが、表裏関係にあるもので成り立っています。生物の枠組みにおいて、「犬」の反対は定義できないですが、無理やり考えれば、「犬ではない生物」が反対の関係にあるとも考えられます。冗談だろうと思われるかもしれませんが、集合論的には、U=生物の集合、A=犬の集合とするとき、U=A∪notAとなります。

さて、この事実をもとに考えてみたいことがあります。あなたが今感じていることには、裏があるのではないですかということです。

転職活動の話をしましょう。あなたが今受けているA社は非常に魅力的です、一方でもう一社Bを受けているものの、そこには魅力を感じません。そこであなたは考えると思います、A社から内定出たらそこへ入ろうと。では、今まで話した内容を考慮するとどうでしょうか。A社は魅力的ではないと感じる裏側があるかもしれない。B社も魅力的に感じる裏側があるかもしれないですよね。

転職活動では表面(ホームページの内容、人から聞いた内容、求人票に書かれている内容など)だけで考えてしまいがちですが、あなたが思っている以上に、「聞いていた話と違う」という理由で再度転職する方が非常に多くいます。なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。そのような事態を防ぐためにも、表面だけを見るのではなく、裏面も見ることができているのかが重要なのです。

とある起業を目指す女性の話

転職活動における表裏関係のイメージを膨らませるために、一つ具体的な話(実話)をしましょう。起業を目指すある女性がいました。その女性にはこれは売れると絶対的な自信があるサービスの構想があるものの、競合他社になるであろう商品を研究しているうちに、あまりに完璧すぎて、何を見てもキラキラしているように見える。もう勝てる自信がないと起業を諦めかけたときに、そのキラキラしている部分をよく見ると、隠れた何かが見えてきました。(まさに表裏一体の公理です)

他社が既に展開しているあまりにも人気すぎて希少価値がある程の商品。女性が殺到しており、3人に1人しか手に入らないほどの商品である。ぱっと見るとそんな人気なところに後発な自分は勝てないと思ってしまうが、よく見ればそれだけ手に入らない人が多いということに気付いた。商品を得ることができないパイは、得ることができているパイの倍近くある。それならば勝つ勝たないではなく、その先駆者が取り逃したパイをいかに集客するかという考えもひとつだ。集合論的な考えで行くと、U=商品を必要とする女性の集合、A=先駆者のパイとすると、notA=U-Aである。そしてこの女性は、notAでのシェア獲得に向けて動き出しました。

ビジネス一つを見ても、表側に隠れた裏側を見ることによって、新しい価値を見出せるということです。

転職活動では裏も見よ

ここまで来ると、私が言いたかったことも何となく想像ができるかもしれませんが、良い面ばかりを見てはいけない、悪い面ばかりを見てはいけないということです。「業界・職種未経験からでも戦略コンサルとしてすぐに活躍して頂けます」という内容があった場合、「自分でもコンサルできるのか!俺はコンサルだ!企業戦略を考えていくぞ!」と意気込むのではなく、「待てよ。未経験でもできる戦略コンサル。その真意はなんだ」と立ち止まってください。実際に私が見た例でも、「未経験からWeb戦略のコンサルができます」ということで入社したものの、蓋を開けてみると「Web広告の営業電話を1日100本かける仕事だった」という方もいました。コンサルと言えばコンサルですが、その人が思い描いていたコンサルでは無かったようです。結局この方は、まさに「聞いていたことと違う」という理由で再度転職しました。この人が考えるべきことだったのは、「Web戦略のコンサルがなぜ未経験の自分にできるのか」です。未経験でコンサルはすぐにはできません。ファーム第二新卒であっても、半年ほどの下積みがあります。では、未経験でもできるという裏の意図は何かを考えると、確かに電話であれば未経験でもできるなと分かります。

「聞いていた話と違う」で退職になってしまうのは、誰も幸せになりません。転職活動でそのようなことに陥らないためにも、表面の内容だけを見るのではなく、その裏にあるであろう内容までを見ることで、「幸せにならない」の裏である「幸せになれる」が待っているのではないでしょうか。

<LAZ>

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