ITプロフェッショナル対談

注目企業の現場に聞く。IT業界経験者のリーベルのコンサルタントが、業界経験者ならではの切り口でキーパーソンにインタビューし、その核心に迫ります。

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PwCコンサルティング合同会社(第1回)

最新テクノロジーと多彩なコラボレーションで、コンサルティングの未来を追求するPwCコンサルティングの今

監査、コンサルティング、法務、税務、アドバイザリーなどをグローバルに展開するPwC。その日本のメンバーファームであるPwC Japanグループでは今、最新テクノロジーの活用、強化に注力している。背景には、将来予測が極めて難しい社会の中で、これからのPwC Japanグループがトップランナーを目指し、パーパスである「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」には、テクノロジーが鍵であり、最も強力な手段だととらえているからだ。
そこで、今回から4回にわたって、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のテクノロジーおよび人材についてお伝えする。第1回はパートナーであり、テクノロジーコンサルティング事業部を牽引する荒井慎吾氏を迎え、PwCコンサルティングのテクノロジーに対する視野、姿勢、人材観などを聞いた。

プロフィール

PwCコンサルティング合同会社
上級執行役員 パートナー
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
荒井 慎吾 氏
2003年に新卒でPwCコンサルティングに入社。中期IT戦略立案やグローバルIT戦略を経験した後、2020年にパートナーに就任。現在はテクノロジー視点から、DXに関わる企業・組織・オペレーションの変革、業務変革を伴うシステム導入、インフラ刷新など、幅広いコンサルティングに携わる。

仕事のやりかたもアジャイル型に

—— まず、PwCコンサルティングが、なぜ今、テクノロジーおよびデジタルに注力しているのか、その背景を教えてください。

荒井氏:現在は極めて予測困難な不確実性の時代です。コロナ禍、ロシア政府によるウクライナ侵攻、少し前では英国のEU離脱など、過去の常識からは想像すらできないことが次々起こっています。その中で企業は、変化に対応して事業を運営し、エンドユーザーや消費者から支持され、選ばれなくてはなりません。そのためのビジネスモデルの変革や競争優位性の獲得のために最も有効な手段がテクノロジーであり、デジタル化です。ですから当社はここに注力をしています。

—— 従来から社会の変化の激しさは指摘されてきましたが、今起こっているのは、それを凌駕するような変化ということですね。

荒井氏:そうです。かつては変化が早くとも、まだ予測や計画の範囲でした。だからプロジェクトや事業では目標を設定し、そこに向かって後戻りせず、手順を踏んで遂行していけば成果を出すことができました。しかし現在のように変化のスピードが早い世の中では、小規模のトライアルを繰り返し、その結果を見ながら事業を形にしていくアプローチが効果的な場合があります。例えばウェブ系の新ビジネスを立ち上げるとしたらプランニングに始まり、ユーザー調査を経て、リリースまで1年半をかけるというやりかたでは遅過ぎてしまいます。その間にニーズが変わることも珍しくないからです。そこでまず一部の機能をリリースし、ユーザーの反応を確認しつつ、組み立てていく。その方が市場にリーチしやすく、効果も大きい。つまり、システム開発がウォーターフォール型からアジャイル型にシフトしてきたのと同じような変化が、仕事のやりかたにおいても起こっています。

—— 新しい技術やサービスも次々に登場してきます。

荒井氏:しかし単独の技術やサービスで目的を果たすことは困難になっています。さまざまな技術やサービスを組み合わせることが求められる時代です。

—— 不確実性の時代には中長期計画の意味も薄れてきますね。

荒井氏:もちろん根幹にあるパーパスやビジョンは重要ですし、企業の意思を形にした中期経営計画も重要です。ただし、それに沿って具体的な事業計画を立てても、予想通りに進むことはなかなかないという状況が起きています。従って、変化に備えて、いくつも選択肢を用意し、アジリティをもって事業を運営できるようにすることも大切です。これは技術だけでなく、組織、制度、設備などすべてに関係してきます。例えばCOVID-19の拡大によって従来の海外の生産拠点で部品の生産ができなくなったとき、別の地域の拠点が稼働できるようにデータ接続を可能にし、物流を最適化するといった戦略も必要になります。

最も大切なのはコラボレーション

—— そうした現状の中で、PwCコンサルティングの人材に求められる資質や特性は変わってきていますか。

荒井氏:変わってきていますね。私は大きく三つを挙げています。まずはコラボレーション。社内の他部門はもちろん、社外の協力会社、異業種などとうまく連携して仕事をする力です。私は何より、コラボレーションに対する積極的なマインド、カルチャー、ビヘイビアが大切だと考えています。第二は、強いケイパビリティ。個々の人材が高い専門技術や能力を持っていれば、必要とする人も活躍の場面も増えるわけで、当然とも言えます。第三は、これから(社会や企業が)どうなっていくか、つまりFuture Storyを自分なりに描く力です。未来ですから間違える可能性はありますが、それでも、こちらの方向に変わっていく、向けていくべき、とストーリーテリングする力が大事だと思います。

—— これらはマネジメントクラス以上に限らず、全員が持つべきものと考えてよいのですね。

荒井氏:その通りです。中でも最も大切なのがコラボレーションだと思います。異なる価値観、バックグラウンドの人間と一緒に仕事をすることをポジティブにとらえてほしいですね。

—— Future Storyを描くこともなかなか難しいように感じます。

荒井氏:最初は「この会社が競争力を失うとしたら、何が理由になるだろうか」とか、「あの会社に勝つためにどのようなサービスや仕組みがあればよいだろうか」と考えを巡らすだけでもかまわないと思います。そこから未来の絵を描ければ、実現するための技術はいくらでも探すことができますから。

—— ケイパビリティについてはどうお考えですか。

荒井氏:米国の統計を見ると職種ではアーキテクト、フルスタックエンジニア、データサイエンティストなどのニーズが高くなっています。これは複数の技術を組み合わせて事業やサービスを構築すること、データを駆使して価値を生み出すことが求められているからでしょう。これはPwCコンサルティングでも同じです。これらに限らず、さまざまな技術が必要ですし、アジャイル開発の経験や能力は大歓迎です。

—— テクノロジー以外のマインドについてはどのようなことを期待しますか。

荒井氏:現在が、不確実な時代であることを前提に言えば、失敗を恐れず、チャレンジする姿勢を求めたいですね。

—— プロジェクトマネジメントにおいて失敗はマイナスでしかないことが業界の通念のようになっています。その結果、プロマネやSEは失敗の回避ばかりに心を奪われてしまいがちです。

荒井氏:もちろん失敗はしたくない。けれども既存の延長上で予測可能な仕事だけをしていては、新しい価値の創造もドラスティックな変革もできません。ですからリスクを取って未知に向かう姿勢を評価しています。

新技術のルールづくりから考えて社会に実装

—— PwCコンサルティングはテクノロジー部門の組織再編や強化に力を入れていますが、他社に比べ、PwCコンサルティングならではの特色として意識されている点は何ですか。

荒井氏:私のリードするテクノロジー&デジタルコンサルティング事業部のビジョンは「社会やクライアントの現在を支え、未来を創造する」。つまり現在の課題解決や事業支援と、未来創造という二本の柱を掲げています。特に未来まで踏み込んでいるのが特徴だと思います。また差別化戦略の一つにはハイヴァリュー(High Value)があります。他社がまだ手掛けていない、私たちしかできないサービスを手掛け、ときにはマーケットまで創ることです。このように未知の領域、新しい技術に積極的なのが当社の特色だと思います。

—— 技術を、企業や社会の中で実際に応用し、サービスから事業にするところまで関わるのですね。

荒井氏:はい。実はドローンやメタバースを初めて産業に応用したのはPwCコンサルティングなのです。それを担ったのはPwCコンサルティングが3年ほど前に設立した部門Technology Laboratoryです。新しい技術を制度やルールまで含めて考え、社会実装する役割を担っています。産官学連携にも力を入れ、特に大学との連携はコンサルティングファームの中でも圧倒的な実績を持っています。

—— 課題解決の規模が大きくなりますね。

荒井氏:当社ではクロスアジェンダ、インテグレート・ソリューションと呼ぶ、総合的な課題解決にも取り組んでいます。業界の垣根を越えた広範なサービスやソリューションのことで、例えばスマートシティ実現のためのデジタル基盤である「都市OS」の開発には、自治体、学校、金融機関など、多種多様な要素が参加するため、こうした総合的課題解決の必要があります。

—— なるほど。コラボレーションを強調された理由がわかります。すべて自社で実行することを理想とするファームもありますが、PwCコンサルティングの場合はそのテーマに最適なさまざまなプレーヤーを選び、コラボレートしていくやりかたですね。

荒井氏:そうです。特にまだ世に出ていないものについては、ルールづくりから取り組み、実装フェーズに入ったら企業や大学と一緒に実証実験などを行っていきます。このほか、データアナリティクスが取り組んでいるものには例えば、AIによる分析で匠の技を再現する取り組みがあります。日本の熟練工や伝統芸能の“匠の技”は暗黙知の塊ですが、これをデータ化して形式知化しようというものです。社会の少子高齢化が進み、こうした技能の継承が危うくなっている中で、社会的な意義も大きいと思います。また、コンサルティングファームとしては初のシンクタンク部門、PwC Intelligenceを昨年、設立しました。ここではビジネス環境やマーケットが短期だけでなく、中長期的にどう変化するのか、経営者や有識者と議論して知識を得、それをコンサルティングに活かしていきます。

こうしたい、こうなりたい、を持ってきてほしい

—— そこで、あらためて人材についてうかがいたいと思います。と言うのは求職中のエンジニアと話してみると、PwCコンサルティングのことをよく知らないまま、自分が採用される可能性はないと思い込んでいる人がかなりいるからなんです。

荒井氏:PwCコンサルティングのテクノロジー部門で求める人材の幅は非常に広いですね。エンジニアリング全般もしくは専門分野で高い能力を持つ人、これからのエンジニアリングに関心を持っている人、UIやUXのデザイン経験のある人、マーケッターなど。またテクノロジーには詳しくないが、ある業界のビジネスを熟知していてITユーザーだった人、事業のIT化を手掛けた人なども積極的に募集しています。

—— この対談を読んで、PwCコンサルティングを受けてみようと思い立った人もいるのではないでしょうか。そうした方々にメッセージをいただければ幸いです。

荒井氏:私は職員の一人一人が、PwCコンサルティングという器や環境を使って自分のしたいことを実現してほしいと思っています。ですから自分の、こうしたい、こうなりたいという思いをここに持ってきてほしい。PwCコンサルティングはトップランナーを目指し、従来の安定的な事業に甘んじず、常に新しいテーマ、困難なテーマに向かっていきます。新しいテクノロジーに触れたい人、それを使って未来を創りたい人、ぜひ、一緒にチャレンジしてください。PwCコンサルティングはトレーニング環境に投資するなど、人の育成にも力を入れています。仕事と人生を楽しみながら、共に成長していきましょう。

ライター プロフィール

織田 孝一(おだ・こういち)
1959年生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業後、広告制作会社および人材採用サービス会社の制作ディレクターを経て、1989年にライターとして独立。ビジネス誌などの他、企業広報・採用関連の執筆も多い。現在注力しているジャンルは、科学技術、IT、人材戦略、農学、デザインなど。
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