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コラム:転職の技術

第806章

上場を目指す企業に行くべきか

— 上場すべきビジネスかを見極めよう —

2017年7月28日

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上場を目指すのが良いのか。

転職先としてどのような会社がいいかとお聞きしますと、キーワードの一つに『上場』が出てくることがあります。

「上場している会社がいい」という、文脈で出てくることが多いですが、若手の方については、「上場を目指している会社がいい」と仰る方も少なくありません。

しかし、上場を目指していることがそれほどいいことなのか、よくよく考えてみる必要があります。上場はメリットもありますが、反面、様々なデメリットもあります。

かくいう私も、学生の頃は、上場している会社ではなく、これから上場するかもしれない勢いのある会社を就職先として狙っていました。

感動の上場のシーンに立ち会いたいとか、上場まで頑張ったという連帯感や達成感を味わいたいとか、ストックオプションなどで上場の恩恵を得たいとか、先見の明があることを自慢したいとか、自分が起業するときの参考にしたいとか、そんなことを考えていた学生でした。

そのため、若手の方が上場を目指している企業に行きたいという気持ちがとてもよく分かります。ただ、上場のメリットばかりに目が向いていて、デメリットが考慮されていないのは良くないと思っています。

上場のデメリット

上場をするということは、会社の所有権を赤の他人に切り売りするということです。

上場していなければ、自社の方針でやりたいようにやればよいのですが、上場して会社の所有者が増えてしまうと、『俺の会社なんだから言うことを聞けよ』という話が株主からあれこれ出てきてしまい、会社運営や意思決定における自由度が低くなってしまいます。

また、株主は投資としてお金を提供していますので、利益を出すことは当たり前、より高い利益を出して配当を上げることを要求してきます。長期的視野に立って思い切った投資をしようとしても、それで赤字になろうものなら株主は激怒して許さない、といったことがあちこちで起こっています。

更に、会社のことなど全くわからない人が株を買い占めて、発行株式の過半数を保有してしまうと、会社が全然違うものになってしまいます。大枠の方針だけではなく、細かなオペレーションレベルのことまで好き勝手に口を出してくる場合もあり、働き方などもガラッと変わってしまうことがあります。

ある上場した企業では

もともとこのコラムを書こうと思ったきっかけは、ある転職希望者から、『上場しない会社がいい』という希望を頂いたことにあります。

その方は、いまの会社が非上場のベンチャーであった時代に入社をされたのですが、市場にまだない新しいサービスをどんどん作り出しているところに魅力を感じたのが入社を決めた一番の理由だったそうです。

そして、入社後もしばらくは希望通りの環境で楽しく仕事が出来ていたのですが、上場したあとくらいから徐々に何かと制約が多くなり、ついには『既存事業の維持拡大』『コストダウン』が企業方針になってしまったとのことでした。

背景を詳しくお聞きしたところ、思い切った投資や新規事業の立ち上げをしようとしても、それによって利益が圧迫されるとなると、株主としては期待していた配当が得られないため難色を示すそうです。

また、株主が右肩上がりの収益向上を期待しており、現状維持も許されないことから、出来ることの一つとして、業務改善や人員削減といったコストダウンという名のリストラをやらざるを得なくなったそうです。

その結果、モチベーションの下がった社員が次々と辞め、残った人の業務負荷が上がったためにその人たちも疲弊して退職し、残った人の負荷がますます上がって辞める人が後を絶たない、という負のスパイラルが起こっているそうです。

一方、お金だけは市場から調達して豊富にあるため、減りすぎた分を中途採用で補充しているのですが、既存システムの分からない人達がどんどん入社してくるため、既存社員の負荷がますます高まり、社内は大混乱しているとのことでした。

株主の恐ろしさ

上場の話ではありませんが、私自身も、株主の恐ろしさを体験したことがあります。

新卒で入社した会社は株式非公開の会社だったのですが、創業時の資金調達の関係で株主が多数おり、当時の社長が過半数を持っていない状態でした。

あるとき、既に引退していた創業者の1人が、将来的にその会社を自分の息子に継がせたいと考え、他の株主に呼び掛けて過半数の議決権を持ってしまい、あっという間に社長を解任して自分が社長になってしまいました。

私は当時、採用担当として社内にいて、役員たちの怪しい動きを把握していたため、社長解任のタイミングで辞表を出して、解任された社長が立ち上げる会社に翌日には入社したのですが、現場のSEは当日まで何も事情を知る由もなく、後日、転職してきた同僚に聞いたところ、給与改定はあるわ、ゲーム制作をやるというわ、PCの代理店販売をやるというわ、もうすっちゃかめっちゃかだったそうです。

創業から25年、地道に積み上げてきたものが文字通りあっというまに崩れていきました。それが出来てしまうくらい、株主の力は強力で危険なものであると認識した事件でした。

なぜ上場を目指すのか

以上、上場のデメリットや株主の恐ろしさなどについて語りましたが、別に私は上場を目指すことを否定するわけではありません。

上場は資本主義社会における重要な資金調達手段であることは間違いありませんし、企業の状態を第三者の目に晒すことにより、経営者の暴走や横暴を抑え、ガバナンスレベルを高めるなど、一定のメリットもあります。

考えなければならないのは、自分が志望する企業が上場を目指していると言った時に、その会社にとって上場は本当に必要なのか、といった点です。

例えば、私の前職であるコンサルティングファームについて、上場すべきかどうかを考えてみます。

コンサルティングのビジネスは、人が収益の源泉となります。もちろん、オフィスを借りるとかOA機器を用意するといった面での資金調達は必要ですが、極端な話、1人で、自宅をオフィスにして、中古の二束三文で買ったパソコンとプリンターさえあれば、コンサルティングビジネスをスタートすることも出来るため、無理にたくさんのお金を調達する必要はありません。実際、コンサルティングファームのほとんどが、未上場となっています。

一方、製造業等、原料調達や工場建設などに莫大な資金が必要な業界や、製薬など研究開発に何年もかかる業界では、上場による資金調達が必要となってきます。

また、新興のIT業界でも、レッドオーシャンの領域で凌ぎを削っている企業や、画期的なサービスを持っていて、他社に真似をされる前に一気に市場を押さえてしまいたい企業、買収により強力な経済圏を作り出したい企業などは、上場によって莫大な資金を調達する必要があります。先の例に挙げたコンサルティングファームでも、M&Aや大量採用、海外展開などによる急激な事業拡大をするのであれば、資金調達の手段として上場も必要になってきます。

その他、実際にあった例としては、上場企業としか新規取引をしない(規制があり出来ない)という企業をクライアントにするため、敢えて一度上場し、その後、MBOをして株式市場から撤退したという企業もありました。このように、資金調達目的でなくても、企業戦略上、上場が不可欠というケースもあります。

ただ、意思なき上場、もっとストレートに言えば、株主やベンチャーキャピタルなど一部の人たちだけが恩恵を得るためのようにしか見えない上場を目指している場合は注意が必要です。もちろん、当事者がそのような本音ベースの話をするわけがないので、そこは『このビジネスには上場が必要なのか、銀行ではなく市場調達でないと何故ダメなのか』というのを自分で考えなければなりません。

響きに惹かれず、よく考えて判断を

もちろん、考えた結果、上場は不要と判断した場合でも、上場したらストックオプションを売っ払って次の会社に行くんだ、とか、上場のノウハウを盗んでやるんだ、と割り切って入社するなら、目的がはっきりしているので、それはそれで良いと思います。

要は、『上場』の本質を理解し、そのメリットとデメリットを理解し、上場後の会社をイメージし、一方で、自分にとって上場を目指すその企業に行く意味はあるのかというのを加味して、行くべきか、行かざるべきかを決ることが大事だと思います。

<田中 祐介>

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