COLUMN
コラム:転職の技術
第1152章
2024/02/02

良いとこ探し

先生からの年賀状

もう年が明けてから1ヶ月ほど経ってしまいましたが、正月に届いた年賀状の話を、今回のコラムでは取り上げたいと思います。

最近は年賀状を出さない、そもそも出したことがない、という方も増えてきましたが、私が子供の頃は、家にわんさか年賀状が届いていました。年賀状を作成する方法も、最初はイモ版(何のことか分からないですよね)、次にプリントごっこ(知らないですよね)、そして家庭用プリンタへと印刷手段が変遷してきました。今では我が家もオンライン注文で年賀状を作っています。

ただ、携帯電話が普及し、SNSで繋がるようになり、喪中などで出さない・貰わないのをきっかけにして、年賀状のやりとりが年々減ってきました。昔は50~60枚くらい出していた年賀状も、いまでは20枚ほどになっています。

その中で、30年以上年賀状を出し続けている方が5人いるのですが、今回はそのうちの1人、小学校時代の先生からの年賀状を題材にコラムを書いていきたいと思います。

先生との思い出

その先生は、小学5年生の時に他校から転任してきた方で、最初はちょっと変わった先生だな、という印象でした。それまでの先生とは違って型にはまってない方で、月の歌を決めて毎日歌ったり(松任谷由実の「リフレインが叫んでる」とか、阪神タイガースの「六甲おろし」とかもありました)、雪が降って積もった時は1時間目を潰して雪合戦をしたりしました(大阪は雪が積もらないので珍しい)。

また、みんなでボードゲームで遊びたい!と言ったら、どうやったのかは分りませんが授業の枠を一つ潰し、学級クラブと称して週一で将棋やオセロやUNO(まだあるのかな)をさせてくれたりしましたし、月一でお誕生日会を開催し、その中で、クイズ大会を開催したりしていました(6年3組ウルトラクイズと言ってました。ウルトラクイズ、知らないですよね)。

そんな自由な先生でしたが、ただ自由なだけでなく、生徒の行動や発言もよくキャッチしていました。例えば、男子が体育で女子と手を繋いだあと、ばっちいから手を洗おうって言っていたとき、同じ人間なのになぜばっちいと言うのか、言われた人はどう思うと思うか、と静かに問いかけ子供たちが考えるようにしたり、すぐ喧嘩したり暴れたりする男子がいて周りが非難をした時に、なぜ彼が暴れると思うのか、粗雑に見えるが彼は非常に繊細な心を持つことに気づいているかと、考えたこともない視点から問いかけをしたりしておられました。相手の立場・視点に立つことの大事さを、この先生に教えてもらいました。

私の人生に大きな影響を与えてくれた先生で、とても感謝をしているため、卒業して引っ越してからも、年賀状を出し続けていまに至ります。最後にお会いしたのは中学生の頃でしたが、大学合格、就職、結婚、子供の誕生などを年賀状で報告し、その都度丁寧なお祝いのメッセージを頂いています。母が他界した時は、遠い昔のことなのによく覚えてくれていて、当時の私や母の話を交えながら励ましてくれました。本当に良い先生に出会えたなと思っています。

良いとこ探し

その先生との思い出で1番心に残っているのは、良いとこ探しです。帰りの会で気付いたことを発言する場があったのですが、そこでは、今日気付いた友達の良いところを話すことになっていました。

最初、気が付いたことを発現する場ができた時は、あの人がこんな悪いことをした、ダメなことをしたという発言が多かったのですが、あるとき先生がこう言いました。

お友達の良いところを見つけた人はいるかな?

シーンと教室は静まり返って、誰も発言しません。

◯◯くん、何かなかったかな。

と先生がある生徒に話しかけます。その生徒は特になかったと答えました。

どんな小さなことでもいいんだよ。例えば、隣の人に何かを貸してもらったとかはないかな。

そう先生が問いかけると、誰かが、それはあった、でもそんなことでいいの?と問い返します。

先生は答えます。

それでいいんだよ。それって、◯◯さんが優しいから貸してくれたってことだよね。

いまこうして話題にしたから気付けたけど、そうでなかったら◯◯さんの優しさに気付けなかったよね。

人の悪いところを見つけるのは簡単なの。
そんなのは誰でもできる。全然すごくない。
でも人って悪いところばかり見つけたがる。
簡単だし、自分は凄いって見せられるし。

でもね、本当に凄い人って、小さくても良いところを見つけられる人だと思うの。
良いところを見つけるのって、力がいる。
よく見てないといけない。
ちゃんと感じないといけない。

最初は見つけるのが難しいかも知れないけれど、
毎日必ず何かみ見つけることができるようになる。
だから、一つでもいい、どんなに小さいことでもいいから、お友達の良いところを見つけてみて。

それから、私も毎日、友達の何かいいところを見つける様にしました。私は昔から忘れ物が多く(最大の忘れ物はランドセルでした)、隣の女の子に毎日何か借りていたので、最初の頃は大抵それを話してたのですが、だんだん、より細やかな気遣いとか優しさとかに気づける様になっていきました。

いまでも、毎日できているわけではありませんが、会う人、話す人の良いところを見つける様にしていますが、その習慣は、この先生から学んだものでした。

毎日が発見

その先生から今年いただいた年賀状には、いつもの綺麗な字で、次の様なことが書いてありました。

『日々眺める私のお散歩道 里山には 同じものはなく 成長・変化に富み 清々しく 心ウキウキの発見ばかりです。今年もお散歩を楽しみたいと思います。』

先生はいまでも毎日、この世界の良いところを見つけ続けている!

何十年経ったいまでも、先生は私に人生を教え続けてくれています。

仕事をしていると、ついつい周りの悪いところだけが目についてしまうものです。楽な方に逃げてしまうのではなく、良いとこ探しをしようと、改めて思いました。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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