COLUMN
コラム:転職の技術
第911章
2019/07/05

縁を掴む人、逃す人

— 縁を逃がす人は、自ら手放していることに気付いていない —

この仕事をしていると、縁というものを強く感じます。

いま転職のご支援を差し上げている方々も、過去にご支援を差し上げた方々も、元々は赤の他人で、普通に生活をしていたら接点はきっとなかったと思われる方々です。そのような方々が弊社にサービス登録をされたり、弊社からスカウトを送ってお声掛けをさせていただいたりしたのをきっかけにお会いして、いつのまにかともに戦う仲間のようになっていきます。

そして、転職活動を終えて振り返るとき、「本当にこれは縁ですね」という言葉がお互いから自然に出ます。そういう意味では、弊社は100%縁に囲まれて生きているといえます。

そんな縁だらけの仕事をしているせいか、縁に対しての勘が鋭くなるようで、「この人は企業との縁を掴む人だな」「この人は縁を逃していく人だな」という傾向がある程度見えてきました。

縁を掴む人は、凄い特徴があるわけではありません。むしろ、普通に考え、普通に活動して、真っ当な縁を掴んでいかれるという印象です。一方、縁を逃す人には一定の傾向がみられるため、ここでは、縁を逃す人の傾向についてお伝えしていきたいと思います。

慎重すぎる

弊社は基本的に、慎重に転職活動をして頂きたいと思っているのですが、慎重すぎて縁を逃してしまう方がいます。

求人には、通年でオープンしているものとスポットで出るものがあります。特に有名な企業のスポット求人は注目度も高く、応募者が殺到する傾向にありますので、普段は慎重に慎重にと言っている弊社でも、この時だけは早めに応募を!と促します。

しかし、縁を逃す方は、以下のようなお話しをされ、すぐには動かれません。

「まだ十分に準備ができていない」
「もっとよく調べてからにしたい」
「事前に企業と会ってからにしたい」
「知人に話を聞いてみてからにしたい」

いずれも気持ちは分かりますし、間違ってもいないのですが、準備や検討で2週間も3週間もかけてしまうと、いざ応募!となった時には既に求人がなくなっていたりします。

兵は拙速を尊ぶと言いますが、有名企業のスポット求人が出た時は非常時でありスピード勝負です。調査や準備にダラダラと時間をかけているヒマはありません。敢えて言えば、企業調査も書類作成も、本気でやれば半日程度で十分なのです。こういったときに慎重すぎる方は、せっかくの縁を逃してしまいます。

実際、とあるWeb系企業で業務系SEでも応募可能な求人が出てきたときがあり、ある方の希望にフィットしていたため、急いでご提案をしました。ただ、その方は面接に進むにあたって万全を期して臨むタイプで、会社説明会か事前面談の場が絶対に欲しい、というご希望をお持ちでした。ご意向を受けて企業側に相談をしたところ、企業からの回答は「面接時に聞きたいことはなんでも聞いてくれていいので、面接に来て欲しい」という内容だったため、面接への参加を促したのですが、どうしても事前に会話したいということで、1ヵ月ほども平行線の状態が続きました。最終的には面接にて話をすることになったのですが、一次面接が終わったあとすぐに、別の方で採用が決定したとのことで求人がクローズしてしまいました。もう少し早い段階で面接が組めたらと思うと残念でなりませんでした。

欲張る

転職活動に苦戦する方に意外に多い傾向なのですが、1つ内定が出たときに、欲が出てしまう方がおられます。それまで選考が通過せず、自信も無くしかけていた時に内定を貰うと、いまならもっといい企業からもっと良い条件でオファーを貰えるのでは、と思ってしまわれます。

もちろん、内定を頂けたポジションが、自分の実力よりもレベルが低いものであれば、その考え方は間違ってはいません。また、より良いオファーを貰える可能性がないかといえばゼロではないので、あるなしでいえば「ある」ともなります。ただ、内定が出た時というのは、当然良い評価を得たうえでの内定のため、気持ちが大きくなりがちです。ともすると、実力以上の自己評価をしてしまい、かなり背伸びしたポジションを追加で受けはじめ、また苦戦が続く、という状況に陥りがちです。

確かに、最終的に実力よりもレベルが上の企業から内定がでることもあります。そして、そのような話は記憶に残りやすいため、人からそのような話を聞くと、自分もそうなるはずだと思われるのも無理からぬことと思います。しかし、現実はどうかというと、結局最初に内定を貰ったオファーが一番良く、最終的にはそこから少し落ちたところに行かれる方が多いです。

そのため、内定が出た時には、そのポジションが実力相応のものかどうかを冷静に判断し、相応ならば欲張らないで頂きたいと思っています。

仕事を優先する

面接のキャンセル理由で最も多いのは、当日急な仕事が入った、どうしても抜けられない、といったものです。責任感が強く、実直に仕事に取り組んでおられる方が多いことは喜ばしいことで、日本も捨てたもんじゃないなとも思います。

しかし、面接をキャンセルしたときのデメリットは予想以上に大きく、同じ企業の面接を2回キャンセルしたら見送りになるケースも少なくありません。それほどリスクがあるにもかかわらず、いまの仕事に引きずられてしまい、せっかくの縁をフイにしてしまうことは意外に頻繁に起こります。

仕事が忙しいからキャンセルすることが何が悪いの?たった一時間程度のタスクがなくなるだけだし、面接官も早く帰れるので問題ないんじゃないの?と思われるかもしれません。でもそれは間違いです。面接をキャンセルされる側の気持ちを知っておかねばなりません。

中途採用の場合、面接官は現場の方が担当します。キャンセルとなった時間はたった1時間かも知れませんが、その1時間のために、いろんな仕事や都合を調整してきています。

私の知り合いが、面接官として準備していたのに直前でキャンセルになった時に「こいつ何様なんだ!後日面接はするけど、よっぽど良くなければ落とす!」と激怒していました。

それもそのはず、彼は旅行の予定があったのを面接のために予定をキャンセルして出社していました。また、当時の稼働場所は八王子で、自宅はその近く、一方で、面接場所は東京駅近辺の自社、プロジェクトの状況は結構ヤマ場で忙しい、という状況でした。面接開始時間は19:00で、面接キャンセルの連絡があったのは18:30ごろ。連絡を受けた時には既に東京駅に到着しており、仕方なくそのまま折り返しの電車に乗って八王子に戻り仕事を続けたそうです。その日はロスした分を取り戻すため、結局終電まで働いたと言ってました。1時間の面接のために調整した全てのことが無駄になっただけでなく、ロスまで発生した彼が激怒するのも無理はありません。「はあ?仕事が忙しいからキャンセル?ふざけんなよ!俺だって忙しいんだよ、調整しろよそれぐらい!」となるわけです。

それぐらい面接キャンセルは危険なものなのですが、それに気付かないで簡単にキャンセルしてしまう方が、縁を自ら手放してしまいます。先の話の後日談ですが、改めて面接を実施したものの、その印象の悪さが残っていたのか、やはり面接を通過することは出来なかったそうです。

もちろん、全ての面接官がこのようなシチュエーションにあるわけではありませんが、あなたの面接官がこのような状況下にないと限りません。いまの仕事を放り出せというわけではありませんが、人生を決める一大事であり、面接官も必死の思いで準備をしてきています。それを考慮して、一度決まった面接日程は、少なくとも当日にキャンセルすることは避けた方が良いと思います。

年収、特に月収にこだわりすぎる

一番勿体ないパターンといつも思うのが、年収が10万ちょっとダウンしたり、トータル年収は同じなのに月収がダウンするとなったときに、オファーに対して激しく難色を示す方です。

もちろん、全く気持ちが分からない訳ではありません。私自身、いまの会社に来るときに大幅に年収を下げたからです。オファーがでたあと、月収が下がりすぎて毎月の収支がマイナス、ボーナスで辛うじてプラスになるということが分かり、かなり慌てた経験があります。

一方、それでも大丈夫、という経験もしています。月収が下がる!となったときに、直感的に「減らせる訳がない!」「生活ができなくなる!」と思ったのですが、それでもいまの会社に入りたかったので、改めて家計を見直してみました。すると、かなり余計な出費があったことが分かったのです。

中でも1番無駄が多かったのが食費です。毎週土日に外食をしていましたし、遅く帰る日は自分へのご褒美ということで割高なお惣菜をよく買って食べていました。また、そこそこの値段のワインを2日に1本程度飲んでいましたし、ワインに合うチーズやオードブルなども一緒に買って食べていました。毎日のランチもお高めで、同僚との飲みもそれなりにあり、計算をしてみたらこんなに食費があるのかと驚きました。

さらに、夫婦ともに旅行好きなため、毎年海外旅行にも行っており、ゴールデンウィークやシルバーウィーク、お盆や年末年始などには、私と妻の両方の実家に行ってもいました。その他にも、年会費のかかるクレジットカードが何枚もあったり、使わない調度品を買ったりと、改めて家計を見直したらそれはまあ酷いものでした。

ただ、ラチェット効果として知られているように、高い生活水準に慣れるとその生活を放棄しにくくなります。傍目から見れば贅沢・無駄に見えるものも、本人たちから見れば「必要なもの」になってしまうのです。

実際に可視化してみたら、思っている以上に無駄がたくさんあることが分かり、贅沢しなければ大丈夫だなと分かるのですが、実際に可視化する方は多くはありません。その理由は、必要なことしかやってないので削れるものはない、と断じてしまうからです。

そして、その結果、いまの生活の心地よさを1つも手放したくないと思い、よくよく考えれば良いオファーなのに、断ってしまわれます。

以前、月収が1万程度下がるから、年収が10万下がるから、という理由でオファーを辞退した方もおられました。手取りにしたら月数千円、外食や飲み会を一回キャンセルすればいいだけなのにです。

もちろん、月収や年収が下がらず、生活水準も落とさないに越したことはありませんが、もし下がるとなったとしても、まずは家計を可視化して、そのうえでオファーを受けるか、断るかを判断頂きたいと思います。

最後に

以上、今回のコラムでは、縁を逃す人に見られる4つのパターンをお伝えしましたが、他にも傾向として見られるものはいくつかあります。それらについての話は今回は控えますが、一つ言えることは、縁を掴むのも、縁を逃すのも、その要因は自分にあるということです。ご自身のポリシーもあるかと思いますが、自分の考えが意固地になっていないか、相手に不快な思いをさせてはいないか、イメージだけで判断していないか、といったことをよく考えて頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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