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コラム:転職の技術

第701章

複数の企業が同じ様なことを言うとき、どちらを信用すればよいか

— 隠れた前提条件を見抜いて実体を見極める —

2015年5月29日

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どの企業も「うちの方がいいよ」と言うけれど・・・

面接プロセスが最終段階に近づくにつれ、「他はどこを受けていますか」という質問を面接の中で受けることが多くなります。そして、受けている企業の中によく競合する企業が含まれているとき、しばしば「あの企業と比べたらうちの方がいいよ!」という話を聞くことがあります。

ところが、A社で「B社よりA社の方が優れているよ」という話を聞いたあとB社の面接に行ったら、「A社よりB社の方が優れているよ」と全く正反対のことを言われたりしてしまい、聞いている方としては「どっちが本当なの?」と混乱してしまいます。では、どの様にすれば、どちらの言うことが正しいと判断することが出来るのでしょうか。

各企業の「うちの方がいいよ」は、実はどれも正しい

私は在籍した全ての企業で採用担当を経験していますが、その経験から、どの企業も正しいことを言っているのだろうな、と思っています。もちろん、多少の誇張が含まれていたり、事実と異なることも厳密にいえば含まれていたりはすると思いますが、まともな企業ほど嘘をつくことはリスクがあるので避けます。では、A社・B社とも自社の方が優れている、と言う場合に、どちらも正しいと言うことはあり得るのでしょうか。

答えはズバリ、あり得ます。

良い例が、映画で良くある「全米No.1大ヒット」です。一体、世の中に米という国がいくつあるのか?と思うくらい、なんでもかんでも全米No.1大ヒットを記録しています。あの類の宣伝をよくよく見ますと、小さく何かしらの注釈がついています。「初日から3日間の観客動員数」とか、「20XX年 アニメーション分野」などです。その前提条件においては本当に全米No.1大ヒットであり、決して嘘はついていない訳です。
各企業が「向こうより優れている」という話をする時も同じで、ある前提条件においてはA社がB社より優れていて、違う前提条件のもとではB社がA社よりも優れている、といったことがあり得ます。

自分が大事にしていることをもとに、隠れた前提条件を見抜く

例えば、「うちは金融が強いよ。金融をするならあっちの企業よりうちだよ」と複数の企業から言われた場合に、どうすれば隠れた前提条件を見抜くことができるでしょうか。

切り口はいろいろありますが、自分のイメージに合った企業を選ぶことが目的ですので、自分にとって意味のある前提条件を見抜くことが必要です。そのため、企業の選択にあたり、自分が何を大事にしているかを切り口にしていけば良いと思います。例えば「大規模プロジェクトのプロジェクトマネージャーをしたい」という思いを大事にしているのなら、どういう顧客のどれぐらいの案件規模のプロジェクトに関われるのかが切り口となります。

その切り口で質問をすると、例えばA社からは「うちは地銀系に強く顧客数でいえばNo.1だが、その故に中小規模のプロジェクトが多い。でも共同系の大規模プロジェクトもあるよ」という回答が、B社からは「うちはメガバンクの基幹系に強く、9割が大規模プロジェクトだよ。クライアント数は少ないけど金額規模・人数規模でいえばNo.1だよ」という回答が得られたりします。

この様な例ならまだ分かりやすいのですが、「上流ができる」とか「戦略ができる」といった類のものは非常に分かり難いです。詳しい業務内容を聞くことで違いが分かることもありますが、話を聞いても違いがよく分からないケースの方が多い様に思えます。そんなときは、その企業の成り立ち、仕事の取り方、シェアなどに目を向けてみるとヒントが得られたりします。

企業の成り立ちで分かり易い例をいくつか挙げると、製造業の情報システム部門から発展した企業なら、製造系の上流に強いことが想像できますし、組込領域で発展してきた企業なら、機械に付随するアプリケーション開発の上流に強いことが想像できます。逆に、これらの企業では、例えば金融系や小売系は弱いかも知れず、もし「小売をやりたい!」という思いをお持ちなら、やりたい事が出来ない可能性が高くなります。

また、仕事の取り方でいえば、経済界のトップが集まる会合などでトップ同士で話をつけるといった仕事の取り方をしているなら、企業の命運を賭けるような戦略案件に関わることが出来る可能性が高くなりますし、シェアでいえば、金融業界向けのサービスで市場シェアNo.1とか、特定顧客内の案件シェアが一番高いといった状況であれば、顧客もその実績を信頼してクリティカルな戦略課題を任せる可能性が高くなります。

逆に、スポット案件に数多く対応する様な仕事の取り方をしていたり、案件シェアが余り高くない場合は、同じ「戦略」の案件でも、実験的なものであったり、既存の仕組みをより堅固にするものであったりと、前述の戦略とは少し性質の異なるものになる可能性もあります。もし「企業の命運を賭けるような戦略をやりたい!」という思いをお持ちなら、ちょっと違う、ということになるかもしれません。

そのため、複数の企業が同じ様なことを言ってきて、どちらが正しいのか、どちらを信用すればよいかが分からなくなった時は、まずはどちらの企業も正しいことを言っているのだと割り切ってください。その上で、面接で企業に質問をしたり、コンサルタントに聞いたり、ご自身で調べたり考えるなどして隠れた前提条件を見抜き、実体を見極め、自分に合った企業を選んで頂きたいと思います。

<田中 祐介>

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