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第1028章

成長したければ名手につけ!(前編)

2021年6月4日

ちょっと古めなのですが、最近、ヒカルの碁というアニメを見ました。藤原佐為(ふじわらのさい)という平安時代の碁の名手が主人公である進藤ヒカルの前に霊として現れたのをきっかけに、未経験だったヒカルが碁を打ち始め、やがては一流の棋士になっていくというストーリーです。

ヒカルは初め、碁石の置き方も分からず、ただ佐為が指し示すままに碁を打つのですが、次第に興味を持ち、佐為とともに毎日碁を打つことにより、メキメキと腕をあげていきます。

そして、どんどんヒカルが佐為に近づいていくわけですが、その成長過程に社会人としての成長のポイントがあるなと思い、コラムの題材にすることにしました。

真似る

佐為は歴史上でもトップクラスの打手。一方のヒカルは全くの素人。レベルの差がありすぎるのですが、ヒカルはまずは佐為の打ち方を真似ていきます。

最初はただ真似て打つため、深い理解はありません。こういうものなんだと打ち方をひたすら覚えていくわけです。このプロセス、一見意味があるのか?と思ってしまいますが、実は、ただ覚えるだけでも意義があります。名手の打ち方には勝つための定石が細かく織り込まれているため、ただそれを真似るだけでも、将来高いレベルで戦うための基礎力を早期に身につけることができます。

新入社員の時や転職した直後などは、周りの人たちと自分を比べ、果たしてこの人たちのようになれるのだろうかと思ってしまうことがよくあります。

私自身も、コンサルティングファームに入社したときは、ただの開発者が場違いなところに来てしまった、こんな人達のようにはなれないよ、と思って落ち込む日々を過ごしました。でも、転職してしまったんだから仕方がないと、とりあえず見よう見まねでドキュメントを作り、お客様と話し、議論を重ねていくうちに、徐々に仕事を進められるようになっていきました。

ヒカルもまた、見よう見まねで碁を打ち続けます。最初は本当に下手なのですが、徐々に力をつけていきます。

そんな感じで、自分にスキルがない場合は、とにかく名手を真似ることです。初めは深い意図が分からなくてもそのうち分かるようになりますから、分かるようになるまではとにかく真似て、名手の型をたくさん身につけておいてください。

注意しなければならないのは、誰を真似るかです。誰かを真似るときは、できれば自分の周りで一番力がありそうな人を真似るのがベストです。ここで間違った人を真似てしまうと変な癖がついてしまい、後で修正するのに時間がかかってしまうため要注意です。

変な癖がついた例ですが、あるコミュニケーションに自信のない方が、流暢に顧客と話す先輩を頑張って真似て、コミュニケーション力を身に付けようと努力されていました。

ただ、その先輩はコミュニケーションに癖があり、多弁で、瞬発力とスピードはあるものの、冗長に話をする方でした。もともと論理的かつ端的に話せた方だったのに、長々と話してしまう方になってしまっていて残念に思ったことがあります。

その方は、その先輩くらいしか周りに学べる人がいなかったため仕方がなかったのですが、周りにいろいろな人がいる場合は、誰を真似るべきかをきちんと選ぶようにしましょう。

打ち方を学ぶ

真似を続け、実戦経験を積み重ねていくと、この手ってこういう狙いがあるんだな、とか、こういう時にはこう打つのが良いんだな、というのが徐々に分かってきます。

ヒカルも佐為と打ち続ける中で、この一手はこのための布石だったんだなとか、この劣勢を打破するためにはここに打つのが良いんだな、というのを徐々に学んでいきます。

名手は名手だけあって、優れた戦略眼、緻密な計画力、臨機応変の対応力を持っています。何気ないように見える手であっても、名手は一つとして意図のない手は打ちません。結果的に普通の一手になったとしても、それはただの結果であって、全ての一手に深い考察と判断が組み込まれています。

とはいっても、最初から全ての打ち手の意図を理解することは不可能なため、要所要所で、なぜこの手なんだろうか、というのを考えてみるのが良いです。そして、可能であれば、直接本人に「なぜこの手なのか」と、その意図を聞くと良いでしょう。

聞く際に大事なことは、自分なりの仮説を持って話をすることです。ただ意図を教えて貰っても、自分の思考と名手の思考のどこに差があるかが分からないため、自分の手に応用することができません。

名手の手が自分が考えたものと違った場合はもちろん、同じだった場合も聞いてみることをお勧めします。同じ結果であったとしても、そこの裏にある考え方が全く異なる場合があるからです。

また、話をした結果、意図が合致していたり、自分の仮説の方が名手より深い手だった、となった場合は、名手も、なるほど、この人はここまで考えられるのかと認識することができます。そうすると、では、ここも教えてあげようかと、更に一段高いレベルの話をしてくれたりもします。

そうして、名手の思考プロセスを自分にインストールしていくことで、実戦力を高めていくことができます。

逆算思考を学ぶ

名手である佐為は、序盤のかなり早い段階から終盤を見据えて手を打ちます。

相手がまだそこまで重きを置いていない序盤に、この相手はどのような癖があり、この戦いはどのように進んでいきそうか、どのような陣形で終局を迎えそうかを読んだ上で、相手に分からないように布石を打ちます。

そして、相手が気付いたときには、自分で打っているように見えて実は打たされている状況になっていて、挽回しようとしても劣勢な状況を打開することができなくなります。

もちろん、競った戦いを勝ち抜くことは大事です。どれだけベストを尽くしても力が拮抗している場合はどうしても競ってしまいますし、競った状況におけるプレッシャーやストレスに打ち勝つことで、勝負強さを獲得することができます。また、競った戦いに勝つのは格好良いですし、競り勝ったという高揚感や達成感を得ることができます。競った戦いに勝ち抜く力は、獲得しておくべき力と考えます。

一方、本当の名手であれば、そもそも競ることを良しとしません。競っているということは、終盤を読むことができず、進め方にも落ち手があったことに他ならない、恥ずべきことだからです。さざなみも立てずに勝つこと、それを目指すのが名手と言えます。

これは囲碁に限らず、古今東西には通用する真理です。

古くは孫氏が「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」と喝破しています。「兵は詭道なり」から想像される奇手の数々をイメージしてしまう孫氏の兵法ですが、実は戦闘をせずに勝つことを最良の策と位置付けています。

また、豊臣秀吉は、墨俣の一夜城や中国大返しなど、奇策を駆使する智略の武将というイメージがあると思いますが、後半生は出来るだけ外交により諸国を味方につけており、小田原征伐においても、大軍を擁することで無駄な大戦を避けています。

そして、スポーツの世界では、ファインプレーは二流である、と言われています。特に野球は、テレビでもファインプレーを取り上げることが多いのでイメージしやすいと思いますが、本当の名手はファインプレーが少ないと言います。

バッターが打った瞬間、もっと早い人はピッチャーが投げる前から、ここにボールが飛んでくるなと予め予測し、誰も気付かないうちにすっと身体を動かしてボールを待ち構えているそうです。

名手であるほど自然な打ち手であっさりと勝ってしまうため、見ている側としては面白みがなく、参考にしたいという気になりません。もっと激しい戦いを勝ち抜いたような試合の方が、見応えがありますし、学ぶべきことも多そうに思えます。

しかし、本当に学ぶべきは、戦いの最中に必死にならなくて済むやり方です。初めから終盤を予測して適切な手を打ち、戦わずして勝つ力の方が、競り勝つ力よりも格段に上なのです。

そのため、さらっと終わってしまったなんでもないものこそ、どのようなゴールをイメージしていたのか、ゴールに辿り着くためにどのような布石をどのタイミングで打ったのかを、丁寧に観察し、振り返ることで、名手の逆算思考とその実現方法を学んでいきましょう。(後編へ続く)

<参考書籍>
集英社 『ヒカルの碁』 ほったゆみ(原作)、小畑健(作画)

筆者 田中 祐介
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