COLUMN
コラム:転職の技術
第1119章
2023/05/19

IT監査のキャリア

2023年3月3日に掲載させて頂いた第1109章のコラムにて、IT監査のお仕事を簡単にご紹介させて頂きましたが、今回はその続きとして、IT監査の経験を積んだ後に辿れるキャリアのお話させて頂きます。

IT監査で得られるノウハウ

まず復習ですが、先日のコラムでは、IT監査の仕事には①会計監査の一環として会計データの正確性を担保する仕事と、②システムの有効性、品質を担保する仕事の2つがあるとお伝えしました。

つまり、監査人として様々な業界の様々なシステムのチェックを通して、品質の高いシステムには何が必要かを知っていくこと、更にシステムそのものだけではなく、品質の高いシステムを作るために必要なプロジェクト管理体制から作った後の運用体制までも知ることで、新しいシステムを作る際にシステム及び組織的に良い仕組みとは何かをノウハウとして蓄積できるわけです。

目指せるキャリア

さて、本題のキャリアについてですが、SEがPL⇒PMとキャリアアップするように、IT監査人として、そのまま上の役職まで昇りつめる事も可能です。また、先日のコラムでもご紹介したコンサルティングに近い「ITアドバイザリー」に軸足を置くというキャリアもあります。監査法人はクライアントを守ることがミッションですが、監査の専門性を武器にしつつ、クライアントの背中を押していきたい、二人三脚で新しくより良い仕組みづくりをやっていきたい方は、アドバイザリーを選ぶことが多いです。

また、IT監査の経験を活かし、事業会社の内部監査部門やリスク管理部門へ転職して、キャリアを積むこともできます。

事業会社内には生え抜きの監査人がいて、自社の事業や業務および各種社内事情を熟知したうえで業務を遂行されています。ただ、自社のことしか分からないといった方も少なくないため、自社の品質を上げていくことには限界があります。

勿論、監査法人のアドバイザリーやコンサルティングファームなどの専門家を頼ることも良いのですが、内部に第三者視点で様々な企業を見てきて、かつ指摘や助言をしてきた人材がいる方が何かと都合がよい部分もあり、監査法人でIT監査をしてきた方のニーズが一定あるようです。

更に、IT監査の本質は、作られたシステムの品質を保証する業務のため、作ることと保証することのどちらが自分に合っているかを考えたときに、やはり作る方がいい、と判断をする人もいます。その場合は、システムエンジニアに戻る方も一定数いらっしゃいますし、クライアントの上位者との業務経験を生かしたいと思う方は、システムエンジニアではなくコンサルティングファームへ転職される方が多い印象です。

あと、比較的少数派ではありますが、IT監査の中で会計監査に触れたことをきっかけに、会計監査の魅力に惹かれ、内部で会計監査人に転身する方もいます。公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)の資格を取得する必要がありますから大変な道のりではあるものの、ITと会計の両方のスペシャリティを持った方は多くはないため、監査法人の中でも重宝される人材になることができます。

IT監査を経験したのちのキャリアは様々ですが、どの業界に移るにしてもIT×監査の経験は次の職場でも生かすことが可能です。

最後に

以上、IT監査を経験した後に辿れるキャリアの可能性をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

IT監査がSEからのキャリアチェンジとして人気になっている理由の1つとして、ワークライフバランスが整えやすいという面があり、監査法人側もお勧めポイントとしてそこを推しています。

一方で、面接官の本音としては、監査の魅力や監査人になってどんなキャリアを歩みたいかという前向きなお話も聞きたいという思いがありますから、第1109章および今回のコラムがIT監査の仕事やそのキャリアをイメージするための一助となれば幸いです。

筆者 明神 江里子
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