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第1086章
2022/09/09

VUCA時代を生き抜くキャリア戦略を考える

VUCA時代とは

先週のコラムでは変化に適応することの大切さをお伝えしていますが、今週は変化の激しい時代のキャリア戦略についてお伝えしたいと思います。

変化の激しい現代は「VUCA(ブーカ)時代」とよく言われます。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた言葉で、元々軍事用語だったものが、近年ビジネス用語として使われるようになったそうです。変化のスピードが速く、予測不能で、不確実で不透明な、とにかく大変な時代になった、ということだと私は捉えています。そして、そんな時代のキャリア戦略はどうすべきなのか、みなさま頭を悩ませているのではないでしょうか。もちろん誰にでも当てはまる明確な答えが出るわけではないですが、最近読んだ『雑草という戦略』(稲垣栄洋著)という本が、VUCAの時代を生き抜くためのキャリア戦略についてヒントをくれたので、今回のコラムでご紹介します。

雑草の生存戦略

『雑草という戦略』は植物学者である稲垣栄洋さんがビジネス理論を元に雑草の生き残り戦略を解説してくれるという一風変わった内容です。私は元々庭いじりが好きで、実家にいた頃は雑草抜きが私の仕事でした。そのため雑草の強さ、生命力は嫌というほど身に染みていますが、一見ひ弱にも見える雑草は「変化する環境」に適応する形で進化していった特殊な植物だそうです。

自然界では勝ったものが生き残り、負けたものは滅びるという厳しい競争がありますが、それは植物の世界も同じです。植物にとっては水、日光、土の中の栄養分を得ることが生き残るための条件です。そう考えると、背の高い幹、大きな根っこを持った大木は圧倒的強者です。仮に雑草が大木と真っ向勝負をしたら、残念ながら競争には勝てないでしょう。

そこで雑草が取った戦略は攪乱適用型戦略という戦略です。つまり、スピード感を持って「変化」に対応していけるように進化するという戦略です。大きな生物は概してスピードに対応するのが苦手なので、雑草はあえて大木が生きられない変化の激しい環境を選び、「スピード」で勝負して生きることにしたのです。一方、大木は競合型戦略を取っており、「サイズ」で勝負して、他を圧倒する戦略を取っています。他にも、サボテンや高山植物はストレス耐性型戦略を取っていて、他の植物が生きられない過酷な環境で生き残るために「蓄積」に長けた進化を遂げています。このように植物もそれぞれが生き残るために自分が勝てる領域を見つけ、進化しているようです。

イネ科植物の進化

例えば、道端でよく見かけるイネ科の雑草は草刈りに耐えられるようにある特性を持って進化を遂げています。それは成長点を低く持つこと、素早い再生力(レジリエンス)を持つことです。通常植物は成長点を茎の先端に持っており、成長点を起点に新たな細胞を作りながら上へ上へと伸びていきます。しかしイネ科植物は草刈りで茎の先端部分を切られても成長し続けられるように、成長点を地面近くの低くに持ち、来るべきときが来たら短期間で一気に穂を出して花を咲かせ、種をばらまくのです。さらに同じイネ科植物でも異なる環境で生きるものは異なる特性を持っており、イネ科植物の中にも多様性があるようです。それぞれが変化に適応しながら生き残り続けているというわけです。

VUCA時代のキャリア戦略で大事なこと

VUCA時代のキャリア戦略においてもイネ科植物と同じように、常に起こり続ける変化に適応することが至上命題です。そして、変化に適応するために大事なことは、「強みに集中すること」「できるだけ戦わず、変化によって生み出される新しい環境(ニッチ)を捉えること」「多様であること(選択肢を多く持つこと)」ではないかと思います。

いつどんな変化が起こるかはわからない、だからこそ、自分の強みに集中してスキルを高めておく。そして変化が起こるときに、Aがいいのか、Bがいいのかはわからない、だからこそ、選択肢を多く持っておく。変化が起きたときには変化によって生み出された新たな環境を捉え、自分がそこでどんな役割を果たせるのかを考える。そうやって、常に起こり続ける変化に適応していくことがVUCA時代のキャリア戦略として有用ではないかと思います。

参考文献: 日本実業出版社 『雑草という戦略』 稲垣栄洋 著

筆者 橋本 怜奈
コンサルタント実績
インタビュー記事
資格
  • 国家資格 キャリアコンサルタント
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