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第1228章
2025/08/22

仕事ができないと落ち込んでいる方に

ベンチウォーマーだからこそ監督に向いている

先日、「ハイキュー」という、高校バレーを題材にしたアニメの舞台を見に行きました。合宿での厳しい練習、オフの時間のバカ騒ぎ、夜中に起きての本音の会話、そして、合宿最後の他校との火花が散るような練習試合。負けそうになっても諦めずに戦う姿や、試合の中で成長していく個と進化していくチーム。大学時代バリバリの運動部だった私は、それを見て当時のことを思い出し、胸が熱くなりました。またOBとして部活の夏合宿に行ってみようかな。そんなことも思いました。

舞台ではいろいろな名場面がありましたが、私が特に印象に残っているのは、練習試合をする両チームのコーチが、「自分たちは万年ベンチだったんだよなぁ」と話すシーンでした。どちらのチームも強豪なのですが、そのコーチが両方ともレギュラーではなかった。多くの物語では、コーチや監督と言えば、かつては凄い選手だった、スタープレイヤーだった、という設定が多いために新鮮さを覚えました。

その2人が言うには、自分たちはベンチだったからこそコーチに向いている、ということでした。理由の1つは、ずっとベンチで試合を見ていたからこそ、ゲーム全体が見渡せるということ。誰がどの位置にいてどのように行動すれば、上手くいくかいかないかを判断することができる、という意味のことを話していました。もう1つは、自分たちが出来なかったからこそ、出来ない人の気持ちが分かった上で指導ができるということ。天才は、そこまで何かを意識しなくても出来てしまうから、人がなぜ出来ないかが分からないが、自分たちは、出来ないのをどうすれば出来るようになるかを必死に考え積み重ねてきたから、出来ない人の気持ちが分かるし、どうすれば上手くなるかも言える、だから指導者として向いている、とのことでした。

一流のプレイヤーだけがチームを率いる資格があるわけではない

確かに昔、似たような話を聞いたことがありました。

ある天才肌の野球選手が監督をされた時のこと。その方は有名なスタープレイヤーで、日本において知らない人はいないと言えるくらいの大スターだったのですが、鍛え抜かれた感覚の鋭さや情熱の強さが武器であったと聞いています。そのせいか、選手を教える時も、スッっときた球をグッと力を入れてガッと打つんだ、というような教え方だったと言われています。その監督は、とても真剣に選手を教えているのですが、選手としては何をどうやったらいいのかが分かり辛かったそうです。

一方、別のある監督の話があります。その監督はピッチャーだったのですが、肘を故障したせいで投球スピードはそれほど速くなく、チームの主力ではあったものの、前述の選手ほど有名ではなかったようです。ただ、超一流の監督として野球界に名を残しており、弱小チームをAクラスに押し上げ優勝に導くという素晴らしい手腕をお待ちでした。

恐らくその方は、ピッチャーという位置からフィールド全体を見渡しつつ、球速が出ない自分のボールでチームとしてどのように勝てば良いか、というのを考えていたのでしょう。その中で自然と、他チームに劣る中で、自チームの能力をどのように生かし、伸ばせば勝てるのかも考えていたのではないかと思われます。それが、監督になった時に花開き、名将と言われる存在になれたものと想像します。

もちろん、一流の選手が監督になって、チームとして一流の成績を残すパターンもよくあります。前述した天才肌の監督と同じ時代に活躍したキャッチャー出身の監督は、選手として一流でしたし、監督としても一流でした。やはり、一流になった方は成功するための方法を体得してきていますので、それが説明可能かつ他人に継承可能なものとなっていれば、一流のチームを作り上げることが可能です。

しかし、プレイヤーとして一流となった選手だけがチームを率いる資格があるかというとそうではありません。メンバーの力が弱いチームを凄いチームに引き上げられるのは、実は、もともと成績が伸びずに苦労をした人なのかも知れないと、私は考えています。

不器用だからこその強み

私自身、いまでこそ、年齢を重ねてきたお陰で器用そうに見られることもありますが、実際は非常に不器用な人間です。スポーツを始めても飲み込みが悪くて常に下位にいましたし、仕事においても要領が悪くいつも叱られていました。

しかし、自分が不器用だからこそ、人に対して、特に上手くいってない人に対して、どのようにしていけば人並みに出来るようになるのかを教えられると思っています。

また、チームを率いる時も、スタープレイヤーに頼るのではなく、上手くいってない人や、普通にしている人をどのようにすれば引き上げることが出来るのかを考えながらチームリードを行ってきており、私のチームにおいて、出来ないから、という理由での離脱者はほとんどいないというのが私の誇りでもあります。

もちろん、当人が、上手くいかないことに対して何も手を打たないというのはいけません。上手くいかないなら人の2倍も3倍も努力を重ねる必要があります。それは、体力的にも心理的にも厳しいものがありますが、要領を掴むのが下手な人が、他の人と同じくらい、もしくはそれ以上に出来るようになるためには、それぐらいの努力を積み重ねないと無理だと、私は実体験から感じています。

2倍・3倍の努力を重ね、普通よりも少し出来るようになると、もともと要領が悪かった、というのが強い武器になってきます。苦労なく出来るようになった人よりも上手に人に教えることが出来たり、弱いチームを強くしていくことが出来たりするようになります。

いまのあなたの苦労や悔しい気持ちは将来きっと役に立つ

このコラムを読んでくださっている方の中には、社会人になって頑張っているのに上手くいかないなと思っている方や、こんなはずではなかった、もっと自分はできるはずなのにと思って悔しい思いをしている方もおられるでしょう。

そしていまの時代、転職をするのが以前よりも一般的になってきて、社会人になってから3年未満でも転職が出来てしまう世の中ですから、この会社は自分に合わないから転職してしまおう!と考える方もいらっしゃることでしょう。

もちろん、転職するのも選択肢の1つです。本当にご自身にとって合わない環境であれば、さっさと転職してしまった方がご自身のためにも良いでしょう。ただ、自分ができないという状況は、見方を変えると大きく成長するチャンスでもあります。そのチャンスを生かすことで、自分が想像できなかった未知の自分を作り上げることができます。

そのため、上手くいかないから辞めようかな、と思っている方も、いま一度、これをご自身の成長機会とするかどうかを考えていただければと思います。

また、上手くいかない、仕事が出来ないということに対して絶望する方もいらっしゃると思いますが、先ほどお伝えしたように、それが将来大きなアドバンテージとしてご自身を支えていく可能性があります。そういう方は、他の人よりも上手くいくようになる未来があるということを信じて、人の2倍も3倍も努力をしていただければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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