COLUMN
コラム:転職の技術
第1016章
2021/03/05

明日の百より今日の五十

異なるオファーポジション、どちらを選ぶか

転職先を選ぶとき、複数の会社から内定が出ていると、どちらにすべきか迷います。

オファーポジションがいずれも似たようなものであれば、比較ポイントを整理し、ウェイトをつけていけば、比較的容易に行き先を選択することができます。

しかし、オファーポジションが全く異なるときは、非常に迷います。携わる業務内容が変わってくるため、その後に辿るキャリアも異なってくるからです。

そのようなシチュエーションに置かれたときにどうすべきか。一つには、入社後にどのような業務に実際に関わることができるのかがヒントになると考えています。

あるインフラエンジニアの方の例

数年前にご支援をさせて頂いた方の話ですが、その方は2つの企業の内定を獲得されていました。

一つは、日本人なら誰もが知っている事業会社の情シスポジション。もう一つが、インフラではトップSIerとして知名度のあるSEのポジションでした。

事業会社の方は、これからデジタル化に力を入れようとしているとのことで、オファー条件も十分なものでした。ただ、デジタル化はまだまだこれから、具体的に何をするかは決まっておらず、まずは目の前の仕事をやって欲しいとのことでした。

一方、SIerの方は、これまでのインフラエンジニアとしての経験をしっかり生かせるポジションでした。これまで二次請けの立場で仕事をされてきたのですが、一次請けのSEとしての経験が入社直後から確実に積め、ゆくゆくはPMを目指せるものでした。

ご本人様も悩みに悩んでおられたのですが、最終的にはSIerの方を選ばれました。決め手となった最大の理由は、これからできることが明確だったことでした。

実際、その事業会社はその後、デジタル化に力を入れると言っていた社長が解任され、IT部門の参謀も転職してしまい、ITによる改革がストップしてしまいました。たまたまではありますが、もしその方がここに入社していたとしたら、余り良い仕事ができなかったと思われます。

この方は、入社後に何ができるのか?をしっかりと確かめられたからこそ、実のあるキャリアを掴むことができました。

ある社内SEの方の例

最近ご支援させて頂いた方のエピソードもお伝えします。

その方も2社から内定がでていて、両方ともコンサルティングファームでした。

一つは、現職と近しい立場で仕事ができるオファーで、スムーズに馴染んでいけそうなものでした。また、そこは社内の異動制度が機能しており、異動で希望するキャリアを作っていくことが可能という話でした。ただ、直近の仕事は、その方がしたい仕事からはずいぶん離れたものでした。

もう一つも、現職と近しい立場で仕事ができるオファーでしたが、業務内容はもう一社とは異なり、現職ではやりたくてもできなかった業務でした。キーマンと接点を持ち、未来をどのようにしていくかを語り、新しいシステムを提案していく、そんな仕事が待っていました。

その方は選考中、どちらが良いのかをずっと考え、迷い、実際に志望度も変化していたのですが、最終的には後者の方を選択されました。前者の方が馴染むのは早そうだけれども、希望するキャリアがいつになったら実現できるのかが不確実、後者の方が、希望する仕事に確実に携わることができるから、という理由でした。

実際、前者の企業は、異動制度が機能しているとは言っても、誰もが簡単に異動できているわけではない、というのが実態です。異動願いを出したとしても、異動先で戦力になるかどうかはシビアに見られますし、異動元での案件の引き合い状況、現場の業務負荷および人的リソースの余裕度合いなども絡んできますので、実際には何年も異動ができていない、という方もおられたりします。

この方も、入社後、実際に何ができるのかをしっかり考え、決断をされました。私としても、地に足のついた決断をされたと思っています。

明日の百より今日の五十

明日の百より今日の五十、という言葉があります。大きな話に乗るよりも、今日確実に手に入るほうを受け取るのが賢明である、ということわざです。

世の中には、いまはできないけれどもこれからやりたいと思っている、という話が溢れています。しかし、「これから」が示す未来はいつのことなのか、1年後なのか、5年後なのか、10年後なのか、100年後なのかは全く予想がつきません。

彼らは騙そうと思って「これから」と言っているわけではありません。やりたいという意思はあり、本当にいつかはやりたいとも思っているのでしょう。

でも、それをいつやるの?と言われても、明言はできません。未来というものは、いくら予想してもその通りにはならないため、○年後に実行することを計画している、と口にすることはできても、それを保証することはできないのです。

できるかもしれないし、できないかも知れない。そういったときに、できるかもしれない、に賭けることも、時には大事です。そして、「いまはできないけど、これからやりたいと思っている」と熱をもって話をされると、比較的早い時期にできそうな気になってきます。ただ、意思はあるけれども実際はできない、という例は後を絶ちません。

そのため、自分の願望で都合の良いように解釈してしまうのではなく、これから世の中がどう動いていくのかを予想しつつ、転職後に確実に得られる経験は何であるのかをきちんと見極め、ご自身の道を決めて頂きたいと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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