
以前は紙に手書きで記録をしていた
私が社会人になった頃は、まだノートPCは大きくて重く、高価でもあったため、PC作業は主にデスクトップPCで行っていました。会議のつど、重いデスクトップPCを持ち運ぶわけにはいかなかったため、会議の記録は全て手書きで紙に書き取るしかありませんでした。私が新卒入社した会社が紙文化だったこともあり、コンサルティングファームに転職するまでは、ずっと手書きで各種記録をとり、その後、ExcelやWordに書き起こす、ということをしていました。
ノートPCにメモを取るようになった
転職してコンサルティングファームで働き始めると、一人一人にノートPCが配布されました。そして、会議のメモはみなノートPCに入力。同じような企業に転職したつもりでいたのですが、入ってみれば全く違う世界でした。
それで、私もPCで会議録を取ることにしたのですが、会議に出席している方々の会話が早くてついていけません。結果、全然足りない記述量、大事なポイントの記載漏れ、指摘だらけのWordファイル・・・議事録という基本中の基本でつまずいた私は、場違いなところに転職してしまったと後悔したものでした。
時は流れ、会議を聞きながらタイピングをすることにもようやく慣れてきました。議事録の修正もだんだん少なくなってきます。しかし、困ったことが発生します。
覚えていない、聞けていない事態が発生
まず、確かに自らの手で記録をしたはずなのに、その内容をあまり覚えていないという事態に直面しました。自分で書いたのに覚えていないことに恥ずかしさを覚えつつ、忘れてしまった時は、仕方なくメモを見直して思い出す、ということをしていました。
次に、議論に中途半端にしか参加できていない、という事態も発生していました。議事録だけを担当していた時はメモ取りに集中していても良かったのですが、コンサルタントとして案件に参画するようになると、当然ながら自分も議論に入らなければなりません。しかし、メモをちゃんと取ろうとすればするほど、話を聞けない時間が発生してしまいます。「それ、さっき話したんだけど」と前置きされることもしばしば。これはさすがにまずいなと思うようになりました。
理解、記憶、議論には手書きが有用
そこで思い出したのが前職での手書きメモです。タイプしたものをそのままメモとして残せるPC上のメモとは違い、紙のメモは、改めてExcelやWordで文字起こしをすることが必要になるため、手間がかかります。
ただ、会話の内容を正確に理解したり、記憶したり、議論に集中したりすることを考えると、手書きでメモをとった方が、PCで必死にメモを取るより圧倒的に良いということを思い出しました。
そこで、現状分析や要件定義をはじめ、各種ディスカッションの場では記憶・理解と議論に集中すべく、手書きでメモを取るようにしました。その結果、思った通り、記憶の定着率が高くなり、理解度も増して、議論も進むようになりました。いまでも私は、転職を希望される方との面談の時は、紙に印刷した職務経歴書や履歴書に、お聞きしたことや確認したことを手書きで書き込むようにしています。その方がきちんとご相談に乗ることができるからです。
このように、手書きでメモをする効果は出てきたのですが、全てを手書きに変えたわけではありません。第三者的に参加し、記録者に徹して良い会議では、引き続きPCでメモを取るようにしました。その方が記録としては優れており、転記の手間もないので効率的だからです。いまの会社でも、エージェント向けに開催される企業説明会などに出席するときなどは、PCでメモを取ったり、いまは生成AIが優れているので、会議録作成を生成AIに任せたりもしています。
シーンにあったご自身なりの方法を
いま、世界中でデジタル教育が盛んに行われています。小学校でもタブレットを使った授業が取り入れられ、学校見学に行っても生徒はみなノートPCやタブレットを持っています。私みたいなアナログ時代を生きてきた人間は希少種となり、紙って要る?みたいな時代がもうすぐそこに迫っているようにも思います。
一方で、フルデジタルは学力低下に繋がっているかも知れない、ということが各種研究により示唆されています。このコラムを書こうと思ったのも、『「手書き vs. タイピング」どちらでノートを取った方が成績が良くなる?学生3000人以上を分析』という記事を目にしたことがきっかけです。前述した通り、記憶の定着度や理解の深度が高いのは手書きの方だ、という感覚が私自身にもあることから、そういう調査結果が出てもおかしくないよね、と思いました。
手書きをするときは、どう書こうかという思考回路が働き、頭の中で整理・理解のプロセスが走ったうえで、オリジナルなものを、目や手などの各種筋肉に負荷をかけて書き起こすため、PCでのメモよりも記憶・理解の効果が高いそうです。
一方で、これらの研究・調査についても、私どものようなアナログネイティブな世代が自分たちの感覚を立証するために研究を行っているのかも知れず、本当のデジタルネイティブだと、実は手書きとPCメモに有意な差はないかも知れません。
そもそも大事なことは、紙派だとか電子派だとかで一括りにしてしまわないことです。どういうシーンにはどういうやり方が適しているのかを実際に試し、自分に合うやり方を選ぶことだと思います。
もしいま、議論にしっかり入れていない、理解がきちんとできていない、記録がうまく取れていない、などの悩みがある方は、デジタルでなくアナログを試したり、アナログでなくデジタルを試してみたりしてみてくださいませ。


