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第1274章
2026/07/24

AIが開発する時代における、エンジニアの評価とは

AIとエンジニア、相互に補完する関係

AI駆動開発が急速に広まってきました。色々なIT企業からAIエージェントを前提とした開発の話を伺うようになり、各社の取り組みが加速していると感じます。
一時期はAIによってSaaSが不要になる、SIerの価値が低下するといった言説もありましたが、現場のリアルな声を伺う限り、それは過剰な反応と言えるでしょう。AIが開発を支援することはあっても、完全にAIのみで開発が完結・代替されるものではありません。特に金融システムやERPなど、複雑な業務ロジックや厳密な計算処理システムにおいては、AIで補完はできても、その後のレビューを含めて人間の判断が依然として不可欠です。
つまり、AIエージェントとエンジニアは対峙する関係ではなく、お互いを補完する関係であると言えるでしょう。AIエージェントを活用することで、従来の大規模開発も低コストかつ短納期で実現可能となり、開発全体の生産性が圧倒的に向上しています。
そして、こうしたAI駆動開発の普及に伴い、企業がエンジニアに求めるスキルセットも大きく変化してきました。

採用ターゲットのシフト

AI駆動を前提とした開発スタイルへ移行したことで、採用現場では従来以上に上流工程の経験やマネジメントスキルを求める企業が増えています。以前は自ら手を動かす実装力を重視していた企業も、AI活用を前提としたエンジニアへと採用イメージを切り替え始めています。
求められているのは、単なる下流の実装スキルではありません。「ビジネスに対する目的や貢献意識をしっかりと持ち、必要なシステムを定義して具現化できる力」です。プロンプトエンジニアリングの知見も重要ですが、「システムによってユーザー業務がどう変化するか」という部分にこそ、エンジニアとしての新たな価値があると定義され始めています。
一方で、AI駆動開発の時代においては、1プロジェクトに必要なエンジニアの絶対数は縮小していくと言われています。これまで1,000人月を要していた超大規模プロジェクトも、より少人数の精鋭チームで回せるようになるからです。
しかしこれは同時に、若手エンジニアが現場で下流工程の経験を積む機会が減るという新たな課題を生み出しています。

AI技術のキャッチアップ

こうした危機感を背景に、プライベートでAI駆動開発を自主的に学習する若手エンジニアが増えてきました。特に技術志向が強く、最新テクノロジーを自発的にキャッチアップする方の多くは、実業務での機会が限られていても、プライベートでAIエージェントを使ったアウトプットに取り組んでいる印象です。
一方で、採用企業側が求めるエンジニア像は器用にAIエージェントを使いこなすことだけではありません。基礎的なITスキル、アーキテクチャの理解、一連のプロジェクトをやり遂げた経験など、エンジニアとして従来の泥臭い経験値を求める傾向も強くなっています。AIを正しく使いこなし、出力されたコードの妥当性を評価するためには、深い基礎知識が不可欠だからです。アメリカではすでに若手エンジニアの採用数が減少傾向にあるとされ、その波は日本にも押し寄せるでしょう。実際に国内でも、例年以上に即戦力となるミドルクラス以上の採用にシフトし始める企業が出てきました。

いつの時代も変わらない技術力

フレームワークやクラウド、かつてのOSもそうですが、新しいテクノロジーの登場によってエンジニア自身も恩恵を受けてきました。それと同時に、ツール単体ではなく、深い技術知見まで掘り下げた理解力が重要になってくるのは、いつの時代も変わりません。AIエージェントが高度な開発まで担える時代になったからこそ、それらを正しく評価し、レビューや修正を行うエンジニア側の経験値が問われます。
そして今後、若手がどのように現場で泥臭い経験を積み、成長の場を確保するのかは、IT業界全体にとって極めて重要な課題となっていくでしょう。クラウド基盤上でのアーキテクチャ設計、他システムとの連携、サーバーサイド側の深い知見。これからの若手エンジニアには、AIエージェントを使いこなす表面的なテクニック以上に、こうしたテクノロジーの深い構造理解とビジネスを推進する上流の視点を自主的に学び、獲得していく姿勢が求められています。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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