
「ユーザーの声を聞きながら開発したい」という理由で転職活動をされるSEの方は多くいらっしゃいますし、「だから自社サービス企業に行きたい」と考えるのも自然な流れかもしれません。ただ、自社サービス企業へ行くことが本当にその人の転職理由を満たすものになっているのかは、一度整理いただく必要があります。
面接後や入社後に、「やっぱり違った」とならないよう考えていきましょう。
まず、toC系のサービスを持っている会社の場合、ユーザーの数が多く、サービスに対する反応をレビューや口コミなどから見えやすいというのはあります。ただ、直接ユーザーとやり取りをしながら開発ができるかというと、多くの場合はそうではありません。基本的にはレビューを集めて開発に活かしたり、行動のログやデータ分析から改善点を見つけてサービスをブラッシュアップしたりといった形になりますので、ユーザーの声が聞けるのはあくまでも間接的なものです。この点を理解した上で入社をしないと、「思ったよりもユーザーと遠い」と感じてしまう可能性があります。
toBの自社サービス企業はどうでしょうか。企業向けであれば直接声を聞きやすいかというと、必ずしもそうではありません。ある程度の規模感の企業になると、開発組織と顧客対応を行う組織が分かれているケースが多く、そうなると開発チームが顧客と直接やり取りをするのは限定的になります。顧客からの要件は、営業や導入コンサルタント、あるいはカスタマーサクセスを経由して入ってきますので、こちらも間接的に声を聞く形になります。直接顧客と会話をしながら開発したいという思いで入ってしまうと、やはりギャップが生じやすくなります。
大切なのは、「ユーザーの声を聞きたい」という思いの背景です。フィードバックが欲しいのか、ユーザーと直接会話をしながら課題解決を行いたいのか、自分が関わった開発がどのように使われているのかを実感しながら開発を行いたいのか、など。この違いによって適切な環境は異なっていきます。
もし、直接ユーザーと会話をしながら課題解決まで導いていきたいという考えであれば、必ずしも自社サービス企業が適しているとは限りません。プライムSIerの方がより顧客と直接コミュニケーションを取りながら要件定義や改善提案に関わる機会が多く、こちらの方が思いを叶えられる可能性があります。また、toB系の自社サービス企業でも、開発チームではなく、導入コンサルタントやカスタマーサクセスの方が希望にマッチしている可能性もあります。
もちろん自社サービス企業でも、企業ごとにユーザーとの近さは異なります。例えば、toCの自社サービス企業の中には、定期的にユーザーインタビューの場を設けてユーザーからの生の声を聞けるような機会を作っている会社があります。そのような環境であれば、ユーザーの声を直接聞きながら開発したいという思いに近い働き方ができます。
「ユーザーの声が聞きたいから自社サービス」という考えは間違いではありません。ただ、なぜそれがしたいのかを整理しないと入社後にギャップを感じてしまう可能性があります。なぜユーザーの声が聞きたいと思うようになったのか。どのような形でユーザーと関わりたいのか。これらを整理した上で、企業選びやポジション選びをすることが大切です。


