心理学から学ぶ新・仕事術

現代に生きるビジネスパーソンへ。心理学からアプローチした仕事術をお伝えします。

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第3話

仕事で求められる能力・スキルの高め方

— 仕事の能力は仕事で磨かれる —

自分はどんな能力・スキルを持っている?

今回は、私達の能力・スキルの向上について考えてみましょう。日々の忙しい仕事生活の中では、「目の前の仕事は問題なくできている」「与えられた仕事はこなしている」という実感はあるものの、自分がどのような能力・スキルを持っているのかということはあまり意識しないかもしれません。

一方で、異動や転職といったキャリアの転機では、大きくクローズアップされる点であり、多くの方が「自分はいったい何ができるのだろうか」「他の人と比較して自分の強みは何か」と自問自答を繰り返すことになります。何ができるのかを自分以外の人にわかりやすく説明することはとても難しいことです。

“経験”が能力・スキルを高める

そもそも仕事で発揮する能力・スキルはどうやって得られるのでしょうか。それは日々の仕事を積み重ねることで身につけていくことになります。ですから、能力・スキルを高めるような仕事経験を積むことがスタートになります。

アメリカで経営幹部を対象に“現在のマネジメントに影響を与えた重要な出来事”を聞いたインタビュー調査では、

  1. 何もないところから何かを始める「ゼロからのスタート」
  2. 事業の「立て直し」
  3. プロジェクト/タスクフォースへの参加
  4. 管理する人数、予算、職域の数の増加といった「視点の変化」
  5. ラインからスタッフへの異動

の経験を挙げた人が90%を超えていました。
これは、マネジメント能力の獲得・向上に有効と考えられる仕事経験のリストと捉える事ができます。

したがって、私達が自分の能力・スキルを高めようとする場合には、向上につながる仕事経験を求めていくことが必要になります。具体的な仕事経験は職種によって異なってきますが、皆さんがそれぞれのキャリアを考えたときに、これからどのような仕事経験を求めていくべきか考えてみることもひとつの方法でしょう。

同じ経験をしても個人差が出る

しかしながら、同じような仕事経験をした人が、みな同じように能力・スキルを高められるのかと言えば、そうではありません。大きく伸びる人とそうでない人に分かれます。

その差は「何故うまくいかなかったのだろうか?」「何が勝因だったのだろうか?」といった仕事経験の振り返り(内省)の違いにあると考えられています。自身の仕事経験を振り返り、そこから「どうすればよかったのか」と自分なりの教訓を引き出し、それを実践していく人の方が、より能力・スキルを高めていくことになります。

つまり、経験しただけでは能力・スキルは高まらず、その経験から何を引き出し、何を学び、どのように行動を変えていくのかという点が、どのような経験をするかという点と同等に重要だということです。

仕事経験の振り返り(内省)という観点からみた周囲の人々の役割

仕事経験の振り返り(内省)の程度は個人差が生じやすく、自分に自信のない人が失敗したとき、「うまくいかなかったのはあいつのせいだ。自分に原因はない。」と振り返りをしない傾向があると言われています。そのような人はもちろん自分に自信をもつことも大切ですが、周囲の人をうまく活用していきましょう。

まずは周りの人に自分の仕事経験を話してみてください。「『話す』は『離す』」という言葉があります。失敗経験も誰かに話すことで、少し距離をおいて(=離して)捉えることができます。

その際、すぐアドバイスを返してくるような人ではなく、自分の内省を促してくれる人を選ぶのがよいでしょう。話をよくきいてくれて「どうしてそうなったの?」「なんでそうしたの?」といった問いを発してくれる人自分の仕事経験を話すことで、きっと様々な気づきがあるはずです。

筆者プロフィール

坂爪 洋美
坂爪 洋美
法政大学キャリアデザイン学部 教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 経営学博士。専門は産業・組織心理学ならびに人材マネジメント。主要な著書は『キャリア・オリエンテーション』(白桃書房、2008年)等。
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