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第940章
2019/11/29

IT業界で食っていけるフリーランス、ジリ貧のフリーランス(第四回)

前回のつづき

前回は、食っていけないジリ貧のフリーランスとはどういう方なのか、というトピックのもと、会社員に戻れない2つの理由をお伝えしました。今回は残りの5つをお伝えします。

③ 金銭

フリーランスの方は金銭・年収に非常に強いこだわりを持つ傾向にあります。フリーランスとしては、一円でも単価の高い案件にアサインして貰うことが大事ですから、年収がいまよりも上がらなかったり、少しでも下がったりすると、激しい抵抗を示される方が多いです。

過去、希望年収より10万円満たない、ということで内定を辞退された方がおられました。10万円、とまとめてしまうと少なくない額ですが、月割りで考えると1万円以下、税金が引かれることも考えると月々数千円のマイナスにすぎません。それに、いまでも年々給料が上がる企業も多いため、会社員になってしまえば10万円くらいは1年かそこらで戻ったりもします。

フリーランスとしては、一度下がった単価を上げるのは非常にきついので、年収が少しでも下がるのは嫌だと思うでしょう。その心情は私も理解できます。ただ、立場がフリーランスから会社員に変わると、年収の受け取り方も変わるということを思い出して頂きたいのです。

そもそもフリーランスになると、会社員時代よりも手取り年収が高くなります。会社は社員が個人で支払っているものとは別に、社会保険料や厚生年金などを会社負担で補助をしているのですが、その分がなくなることから、一般的にはフリーランスの方には多めに報酬が支払われます。逆に、フリーランスになってから会社員に戻ると、会社負担の補助が発生する分、手取り年収が下がってしまいます。大体、フリーランス時代の年収の6~7割が、会社員に戻ったときの相場年収です。

しかし、フリーランスになることを積極的に勧める広告のせいか、フリーランスで年収を上げると、会社員に戻るときも同じレベルの年収になると勘違いしておられる方が後を絶ちません。もちろん、実力があればフリーランス時代の年収と同等、もしくはそれ以上の年収が提示される例もありますが、それはレアなケースです。ほとんどの場合、手取り年収は大幅に下がります。それを認識せずに、いざ企業からオファーを提示されたときに「年収が下がる!」といって断ってしまうと、せっかくの会社員になれるチャンスをふいにしてしまいます。

④ 視野・視点

視野が狭いとか視点が低いといった点が、会社員になることを阻害することがあります。要するに、いまの事にしか目が行っていない、自分のことしか考えられていない、ということなのですが、この傾向はいろんな形で表出してきます。

上記の10年位フリーランスをされてきた方が典型的なのですが、自分がいま何をしたいのか、という視点でしか話をしていません。社会からのニーズは何なのか、自分の力のどこが評価されていて、どの辺りが評価されていないのか、長期的にキャリアを見た時に、いま何をすべきで、何を我慢しなければいけないのか、そもそもなぜ企業から別の仕事の提案があったのか、といった視野・視点が欠けてしまっています。

面接を受ける方の視野が狭かったり視点が低かったりすると、面接をする側としては、教育に時間がかかりそうだな、と考えてしまいます。また、面接を受ける方がそれなりの年齢の方の場合、将来のことを共に語ることができないなぁ、困ったなぁ、となってしまいます。会社員の中でも中堅以上の方は、一般的に未来を見据えて仕事をする必要があるため、一緒に働く人の視野が狭かったり視点が低かったりすると、一緒に頑張るどころか足を引っ張られかねないと懸念を持ちます。

仲間としてともに働きたい、という気が起きない方については、部下や同僚にする価値がありませんので、採用としてはお断り、引き続きフリーランスでいてください、となってしまいます。

⑤ 管理者適性

プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャー、ラインマネージャーといった管理者としての経験がないので会社員になれない、というケースが、年齢が上がるにつれて増えていきます。昔に比べると年功序列感は薄れてきましたが、それでも年齢相応の管理経験は求められるのが実情です。

フリーランスの方は、そもそも組織に所属していませんので、ラインマネージャーとしての経験を積むことはできません。また、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーは組織の意思決定をする役割を担うため、責任のある方が担当することになります。そのため、結果としてフリーランスの方にリーダーを任せることは、稀にはありますがレアケースと言えます。

若いうちはメンバーとして動ければよいので、フリーランスになったのちに会社員に戻る、となっても余り問題にはなりません。ただ、若いうちと同じ感覚で30代以降の中堅時代を過ごしてしまうと、気付いた時には管理者としての経験を求められる年齢となっていて、いざ会社員になりたいです、と言って応募しても、でも経験がないよね、となってしまい、会社員としては採用できない、となってしまいます。

いやいや、セルフマネジメントをしてきましたよ、と話す方もおられますが、セルフマネジメントは会社員として普通のことであり、特にアピールにはなりません。また、一般的に管理職の仕事とは、人的リソースの管理だけでなく、育成や評価といったことも職務に含まれます。この経験は、フリーランスという立場ではなかなか積みづらいものです。

また、仮にフリーランスの立場で現場メンバーの管理をしていたとしても、チームの進捗管理をしていただけで、シビアな意思決定を伴っていないケースもよくあります。会社員としては重要な意思決定ができることを求められますので、やはり、経験が不足していますね、と言われてしまいます。

⑥ 常識

年齢相応のビジネスマナーや一般知識が会社員には求められます。日経新聞を毎日読めとは言いませんし、スーツを着て歩けとも言いませんが、相応のマナーや常識感は求められます。

これは若くしてフリーランスになった方に多く見られる傾向なのですが、時間を守らない、すぐ休む、期限通りに納品しない、問題発生時にも何も連絡をしない、面接の場で非常識な行動をとる(例えば、帽子を被ったまま座って挨拶をするとか、くしゃくしゃな書類を提出するとか)など、最低限のマナーができていないことがよくあります。

企業に所属していると、基本的なビジネスマナーはもちろん、年齢や役職相応のコミュニケーションの仕方を教えて貰えるのですが、フリーランスの方は教育を受ける機会がないため、会社員としての振る舞いや会話内容のアップデートが止まってしまう傾向にあります。そうなりますと、この人は幼いな、子供だな、と思われてしまい、語るにたらぬ人材と思われてしまいます。

⑦ 成果

フリーランスの方の多くは、成果に対する報酬というよりは、時間単価や月いくらという契約で働いています。働けば金銭が貰えてしまいますので、成果の定義が「このタスクをやり遂げること」になってしまいがちです。

それの何が悪いの?と思われた方は要注意です。確かにフリーランスの方に求められるのは、このタスクをやり遂げることではあるのですが、会社員に求められることは、自社事業に貢献することが成果となります。この業務の目的は何か、事業のどこに貢献できるのか、ということを考えられないと、採用されることは難しいと言えます。

以上、二回に分けて、食っていけないジリ貧のフリーランスとはどういう方なのか、どうして会社員に戻れないのか、ということをお伝えしてきました。次回以降は、どうすれば食っていけるフリーランスになれるのかをお伝えしていきます。

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