COLUMN
コラム:転職の技術
第887章
2019/03/08

働き方改革をやってみた

— 在宅勤務などの良いところ、悪いところ —

働き方改革が進み、フレキシブルな働き方が徐々に浸透してきました。
在宅勤務やフレックスタイムなど、多様な働き方が認められるようになり、それに伴いリモートワークやモバイルワークを取り入れる企業も増えてきています。

弊社でも、働き方改革を進めるべく、会社の制度や運用を見直しているところですが、実際にいろいろ試してみると、良いところと悪いところの両方が見えてきました。

特に悪いところは、まだ余り情報が出回っていないようにも思えますので、私個人の感想にはなりますが、お伝えしたいと思います。思いつくまま書くため話題がMECEになっていませんが、その点はご容赦ください。

在宅勤務

家族がインフルエンザや風邪にかかったとき、1週間ほど自宅で働きました。いわゆる在宅勤務をやってみたわけです。

仕事に充てる時間を増やせる

私の自宅は東京の郊外にあり、通勤はDoor to Doorで1時間半程度。往復3時間超の時間が浮くため、その分を有効活用することができました。実際、1日を丸々仕事に充てられたときは、あれ、もう今日の仕事は終わり?と思ったものです。

私は普段、通勤中も仕事をしているため、在宅勤務をしていても通勤をしても、仕事に充てる時間はそれほど大きくは変わらないはずなのですが、実際の通勤時は、隣に座っている人を気にしたり、前に立っている人の鞄がぶつかってきたり、電波が悪くてリモートデスクトップが切れたり、喧嘩やアナウンスなどがあって気が散ったり、乗り換えがあったりして、時間があるわりには思うように捗りません。

その点、自宅であれば安定した環境で仕事ができるため、通勤時間分を仕事に丸々充てられます。効率的で非常に良いなと思いました。

プライベートに充てる時間が増やせる

また、空いた時間をちょっとしたお出かけに使ったり、平日しかできないことをしたり、家のことや家族との時間に使うことができました。

例えば、役所の手続きや各種サービスの手続きをはじめ、平日限定のランチであったり、普段混んでいる人気スポットをゆっくり楽しむこともできます。私は銭湯に行くのが好きなのですが、スーパー銭湯で2時間ほどゆっくり過ごし、リフレッシュすることもできました。加えて、子供や家族との団欒の時間も増えますし、就寝時間も早くなりますので、健康的な生活を送ることができます。

出不精になる

一方、デメリットもありました。まず、仕事が多い場合、外に出る機会が減ってしまいました。一日中家にこもって仕事をすることもあり、気付くと2~3日家を出ないということもザラでした。

仕事中に割り込みが入る

また、家族が近くにいるということは、その分仕事に集中することができなくなることもあります。最初のうちは家で仕事をしているんだよ、ということでみなも気を遣ってくれますが、そのうち家にいることが当たり前になり、家の用事が多くなったり、子供もなにかと話をしてきます。結局、徐々に仕事に集中できなくなってしまいました。

会社にいたらすぐ終わることがもたつく

そして、職場から離れて仕事をしていることにもデメリットがあります。

その場でさらっと話せば済むようなことなのに、離れているがゆえに、わざわざメッセンジャーや電話でやり取りする必要がありますし、コミュニケーションのタイミングが合わずにもたもたしたりもします。特に緊急を要するときは不便さを感じます。

実際、在宅勤務中に社内システムに不具合が起きたり、急ぎの決裁&決済が必要だったり、面接時刻になっても転職希望者が面接場所に来ていないなどのトラブルがあったりしました。これらはいずれも社内にいればさらっと対応できたものなのですが、特にトラブル時は、情報が錯綜したり、自分と社内で重複して対応をしたりして、なかなか解決しないということがありました。

その他、社内で自分宛に電話がきた時も、わざわざ誰かに対応して貰わなくてはいけなかったりして、ちょっと周りの負荷を高くするなと思いました。

軽い浦島太郎状態になる

以上のことは経験しなくてもある程度予想ができたことなのですが、会社のことがだんだん分からなくなった、というのはやってみて初めて分かった感覚です。派遣エンジニアとして働いたことがある方は分かると思うのですが、会社にしばらくいないと、やはり会社の人とだんだん疎遠になります。私も久しぶりに出社した時には、少しだけあれっ?と思いました。在宅勤務していた期間に起こったことや会話などが当然分からず、軽い浦島太郎状態になったのです。

海外の企業で在宅勤務を取り入れながらも、結局取りやめたという話を聞くことがありますが、こういうことが頻繁に起こってしまったのではと思っています。

在宅勤務は、特に家族がいる人にとっては有難い制度ですが、ずっと仕事を在宅でやるというよりは、仕事が落ち着いた時期に、家庭の方に時間を使いたい時などに上手に利用するのが良いかも知れません。

子連れ勤務

妻がある日、用事があって出かけねばならず、私も外せない仕事があって出勤せねばならず、結果、妻が私の職場の近くまで来て、乳児を私が預かる、ということがありました。

会社に託児所があれば良いのですが、いまのところ弊社にはなく、かといって会社に連れて行っても迷惑にしかならないので、社外の場所で子連れで仕事をすることにしました。

こちらについては、正直なところメリットと言えるものはありませんでした。

子連れで働ける場所がほとんどない

まず、子連れで働ける場所が非常に少なく、あってもそのビルのテナントのみ利用可能、などになっているところが多く、郊外ならまだしも、都心では適当な場所を見つけることができませんでした。

乳児と一緒は仕事が全く進まない

仕方なく電源のあるカフェに入ったのですが、そうは言ってもカフェですので、それなりに周りに気を遣います。そして、乳児の場合、ミルクとむずかりの時間が交互にくるので、約2時間のうちまともに仕事ができたのは15分ほどでした。これなら最初から帰宅して仕事をした方がましだったなと思いました。仮に子連れOKの場所が増えてきたとしても、少なくとも乳児を連れての仕事はちょっと難しいかなと思っています。

リモートワーク

在宅勤務も子連れ勤務もリモートワーク前提の話なのですが、ちょっと切り口を変えて、リモートワークそのものについて話したいと思います。

好きな時間、好きな場所で仕事ができる

リモートワークの利点は、なんと言ってもいつでもどこでも仕事ができる点にあります。先ほど通勤中も仕事をしていると書きましたが、出社前や帰宅後の自宅内はもちろん、電車などの交通機関での移動中、カフェの中、緊急の場合は路上であってもWi-fiルータとPCさえあれば仕事をすることができます。スキマ時間や自宅での空き時間を仕事に充てられるため、忙しい時には一日あたりの仕事量を増やすことができますし、忙しくない時には、仕事時間の割り当てを社内に限定しなくてよいため、プライベートの時間を確保しつつ仕事をこなす、といったことができるようになります。リアルタイムに対応できる、という点も、ことサービス業においては他社と差別化するための強力な武器となります。

仕事とプライベートの境目がなくなる

一方、デメリットとしては、24時間仕事モードになってしまいがち、ということが挙げられます。自宅でPCをつけっぱなしというのが日常的になり、ちょっとした時につい仕事をしてしまいます。パパ、もうパソコンダメよと、何度子供に言われたか分かりません。

また、リアルタイムで対応できるとなると、だんだんリアルタイムで反応しなければ、という強迫観念に支配されてしまいがちです。そして、リアルタイムにメールなどを返していると、そのうちコミュニケーションを取っている相手の方から、なぜこんなにレスポンスが遅いのかと、ちょっと反応が遅くなっただけで言われてしまったりもします。そもそも仕事のオン・オフを明確に分けたい方は、精神的に辛くなりがちです。

仕事量が増えたり生活が不規則になる

また、結局仕事の時間が長くなったり、生活が不規則になってしまいがちです。私だけでなく、リモートワークをしている方々からも同じ話をお聞きするのですが、子供が寝てから仕事をすることになると、日を跨いで仕事をするのが普通になってしまうこともありますし、それを誰かが歯止めをかけてくれるわけではないので、際限なく仕事をしてしまうこともままあります。

そのため、リモートワークの利点は享受するとして、生活リズムやスケジュールのコントロールは必要だと思っています。

フレックス

これもまた違った角度からの話です。

弊社でもフレックスタイム制を実運用し始めました。前から10時から15時がコアタイムだったのですが、実際に15時に帰る人は一人もおらず、基本は早くても18時退社、たまに17時頃に申し訳ないという雰囲気を出してコソコソと帰るような感じでした。この形骸化した制度をきちんと運用すべく、まずは率先して私がやってみましたが、これについてはメリットがたくさんありました。

無駄な残業、無駄な気遣いがなくなる

まず、付き合い残業がなくなります。それまでは仕事がなくても、何となく帰り辛くて仕事をしているフリをしていたケースも少なくなかったのですが、そういう無駄な気遣いと無駄な時間はなくなりました。

優雅に帰宅できる

また、とにかく帰りの電車が空いています。17~18時でも帰りの電車はぎゅうぎゅう詰めで(日本人は働きすぎと言われますが結構定時上がりの人は多い)、帰る頃にはヘトヘトになってしまうのですが、15時や16時などであれば余裕で座席に座って帰れますし、太陽の光がまぶしい日中に、景色をぼーっと眺めながら優雅に帰るのはとても気持ちがいいものです。暗い夜道をトボトボと帰るのとは気持ちの持ちようが違います。
時にはちょっとカフェに寄って帰ったり、お店で買い物をして帰るなど、休日にいろいろ詰め込まなくてもリフレッシュができるので、結果として仕事の効率があがります。

家族が喜ぶ

出勤時間については、弊社でも前から10時出社が許されていましたので、今回は特に変化はありませんでしたが、前日に遅くまで仕事をしていた時でもゆっくりと出勤できますし、私などは出社前に子供を園バスに送っていくこともできていますので、家族も喜んでいます。

セルフコントロールしないとうまくいかない

そんなメリットがたくさんのフレックスですが、セルフコントロールが前提のため、うまく仕事をコントロールしないと、休みが増えた分、仕事が進んでない、といった本末転倒なことが起こり得ます。

また、私のように家庭の仕事を分担している場合、早く帰っても家の仕事が増えてしまい、結局トータルの仕事量が増えてしまうというケースもあります。

フレックスはとにかくセルフコントロールがポイントのため、タスクとスケジュールのコントロールをしっかりと行いたいところです。

スマホワーク

リモートワークと被りますが、スマートフォン(以下、スマホ)がパソコンかそれ以上の性能を持つ時代になり、スマホで仕事ができるようになりました。

手軽に仕事ができる

弊社でも少し前まではガラケーだったのですが、スマホに変えてから劇的に生産性が上がりました。このコラムも、実は帰りの電車の中でスマホを使って書いておりまして、改めて座席に座ってPCを開かなくても仕事ができるというのは本当に便利です。

最近のクラウドサービスはスマホでも使えるものがほとんどのため、スマホ1つあれば文字通りなんでもできてしまいます。これはスマホがない時代に仕事をしたことのある人にとっては革命的ともいえることです。

目と姿勢が悪くなる

デメリットとしては、目と姿勢が悪くなることです。もちろん、仕事でなくてもスマホを使っていれば起こりうるデメリットですが、こと仕事で使うと、普段よりも凝視して画面を見るため視力が著しく低下します。

そして姿勢、特に首。とにかくずっと下を向いているので、首の負荷は倍増です。PCで仕事ができるときは、PCで仕事をした方が良いと思います。

まとめ

昨今、こういった働き方改革にまつわる制度に関心をお持ちの方が多くなりました。それを受けてメディアも働き方改革に関連する記事を積極的に出していますが、メリットを強調した記事の方が圧倒的に多いように思います。

ただ、一見メリットだらけに見えるこれらの制度も、実際に運用してみるとデメリットがありました。今回のコラムでは、私の実体験から、私が感じた各施策のメリットとデメリットをお伝えしました。企業選びの際の参考にして頂ければ幸いです。

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