
なぜあなたはその仕事をしたいのか
転職者の方と面談していると、「どんな仕事をしたいか」は明確であっても「なぜそれをやりたいのか」が曖昧な方がしばしばいらっしゃいます。もう少しかみ砕くと、曖昧なモチベーションでも「なんとなくこういう仕事に転職しようかな」と考えている方が意外と多いんです。
仕事に対して、やりたい理由なんてどう持とうが自由です。自分の強みが活かせるからでも、社会に貢献したいからでも、本心としてもっとお金を稼ぎたいからでも構いません。そういった思いがなくても、転職を考える方がけっこういらっしゃいます。
そういった方の背景は「周りがマネジメントをし始めているので」「そろそろ管理業務をしておきたい」など、何となく周囲と見比べて次なるキャリアを設定されています。なるほど、確かにそれもきっかけの一つになりうるでしょう。ただ、そういった方は冒頭の「なぜそれをやりたいのか?」という質問に対しては明確な答えが出せません。それはつまり、面接でも窮してしまうことになります。
確かに、年収面を考えるとその考えも大事なんです。周囲の事例や一般的な情報を考慮して、戦略的にキャリアを作って行く方が賢い選択でしょう。業界内で求められる仕事を捉えて、ニーズのある仕事をしていく方が市場価値も高められます。
一方で、周囲の目だけが判断軸である必要はありません。あまり転職エージェントらしくない考えかもしれませんが、自分自身の内なる声を聴いて、それに従って決断していくキャリアも決して悪くない、その人らしいキャリア形成だと思っています。
自分の仕事に向き合うこと
「マイレージ・マイライフ」という映画があります。ジョージ・クルーニー演じる主人公の中年男性:ライアンは、クライアント企業に代わってリストラを推し進めるという解雇通告のスペシャリスト。全米を飛行機で飛び回り、リストラの宣告を面と向かって各地で行いまくる、血も涙もない非常な仕事人という設定です。ただ、そんな非情な彼にも時代の波が到来し、徐々に価値観が変わっていく中で・・・というなかなかユニークなお話。
ここまで書くと一見よくあるタイプの、意固地な中年男性に訪れたちょっとした変化と成長をテーマとしているようですが、この映画の顛末はもっとビター。どんな厳しい現実と向き合ったとしても、ライアンに人生の変化が容易に訪れるわけでも、人並みの幸せを楽に手に入れられるわけでもありません。幸せや苦しさを経験する上で、最終的には自身の進むべき道/自分にしかない価値観をより強固にしていく。というストーリーです。
つまり本作は「時代や周囲の目に流されず、自分らしいキャリアを描くことの尊さ」を非情なまでに描き切っています。リストラの通知人という誰からも望まれない仕事を粛々としていくライアン。ただ彼はその仕事を誇りに思っており、毎日の出張で飛行機のマイレージをためることを何よりの楽しみとしています。彼にしか出来ない仕事をして、彼にしかない得られない人生を謳歌しています。
周囲の目に流される必要はない
今の時代は、IT業界であっても全員が全員マネージャーを目指す必要はありません。技術が好きならとことん技術に関われる環境もありますし、教育やサポートなどの専門職を目指すというキャリアもあります。私のようにエンジニアから異業種へとキャリアチェンジすることも可能ですし、実際それで私自身は満足しています。
つまり、本当に自分がやりたいことを、自分が誇れる仕事を見つけることも重要です。その仕事で、顧客や社会に価値を届けられる場所を転職で見つけられると良いと思います。