COLUMN
コラム:転職の技術
第1159章
2024/03/22

日本社会の人間関係

昨年の転職動向から

総務省の労働力調査で、2023年の転職希望者の数が1007万人いたと発表されました。7年連続の増加で、前年比39万人増です。1000万人を超えたのは初めてとなっています。
特にIT・通信の分野では求人倍率がどの企業の報告書を見ても一様に高く、体感的にも数年前より転職がしやすい状況になっていると感じます。一方で、実際に昨年転職された方の数は328万人。つまり転職に成功された方の数は1/3程度になっています。転職への思いはあれど、活動には二の足を踏むケースが実はよくあるのです。

面談でお話を伺った際にも、現在の状況・年収・希望の働き方などあらゆる観点からも転職をされた方が良い場合でも「あと〇年は現職に残りたい」という結論に至るケースがあります。今のプロジェクトで得るべきものが多いのでやり切ってから転職したい等、目的がしっかりしていればもちろんOKです。ですが、転職はいつかしたいものの今は現職に留まることにした。知らない環境から再度関係を作り直すことが億劫なので一旦留まる。というケースも実はよくあるのです。

古くから根付く人間関係

『タテ社会の人間関係』という日本社会の人間関係における考察本があるのですが、これが日本社会に根付く意識を分かりやすく記しています。
本書では、日本の集団意識は「場」を重視するケースが多いと記されています。つまり社会においてその人個人への認識・意識より、○○という企業/○○という組織に対する認識が、世界と比べても強い傾向にあると定義されています。また組織を「家」のような概念で形成し、タテ型の組織で構成する形態が一般的。つまり、どうしても論理よりも情が優先されやすい組織環境になっていて、時間を掛けて馴染むほどに居心地の良さや人間関係の濃密さが形成されることになっていると記載されています。
実はこの本が出版されたのが1967年。50年前に出版されたクラシック本なので、正直今の日本ではここまで極端な形態とは言えないでしょう。ただ、この情が優先される心理は現代にも通じるものがあると感じます。

目の前の選択肢に流されない

転職をすれば毎日顔を合わせていた仲間とも離れ、新しくゼロから関係を構築する必要があります。それを億劫に感じてしまうこともよく分かりますし、日本社会にその要因が根付いているのも事実でしょう。
また転職が増える中で、前職への出戻り転職というケースも増えてきました。前職と円満に退職が出来てさえいれば、勝手知ったる環境で人間関係の再構築も不要。転職後のギャップも生まれにくく、このところよく活用されています。
一方で、知っている環境の居心地の良さだけに釣られるのは、その人自身の最良なキャリアとは言えないでしょう。もちろん人とのつながりは大事ですし、そこで生まれる情も人生においては重要です。ですが、目の前の安易な選択肢に流されず、自身にとって必要な決断をされることをお勧めします。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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