ケンゾウの戦略コンサル物語

戦略コンサルタントの仕事やふだん考えていることなど、戦略コンサルタントの実態をありのまま綴ったコラム

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筆者プロフィール

ケンゾウ
大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第34話

コンサルは経営者へのステップか?

コンサルと経営者は違う

こんにちは、ケンゾウです。知人と話をしていると「コンサルを卒業したら経営者になるの?」という質問をされることが良くあります。今回は、コンサルタントと経営者の違いについて、私なりの考えを書いてみたいと思います。

はじめに、私はコンサルタントと経営者は、全くの別の生き物というくらい異なるスキルや資質が必要な職種だと思っています。もちろん、コンサルタントが持つ知見や問題解決スキルは、経営者をやっていく上では役に立つでしょう。ただし、それは経営者に求められるスキルのほんの一部でしかありませんし、もし問題解決で困ったときはコンサルファームに相談すればいいだけなのではないかとも思っています。

戦略ファームのコンサルタントは、一言で言うと、私は「職人」だと思っています。戦略ファームには、クライアントの悩みの中でも特に解決が難しい高度なものが持ち込まれることが多く、そのような問題でもクライアントが納得できる形で課題を整理し、打ち手を提案する。しかも、いわゆるグレイヘアーコンサルタントの様に経験と勘に頼ってアドバイスするのではなく、ファクト(データ等)とインサイト(データから見えてくる洞察)、ロジックを武器に合理的なソリューションを提案する。これはまさに職人技なのです。

一方で経営者というのは、一言で言うと「リーダー」だと思っています。全ての結果に対して責任を負っており、会社に関する意思決定の最終決断をしなくてはならない孤独な存在です。戦略ファームのパートナーの中には、職人としては最高レベルであるものの、組織のリーダーとしてはいかがなものかと思ってしまう人も正直いますが(もちろん立派なリーダーもいますよ!笑)、若い職人を食べさせていけるくらいの稼ぎが出来れば、個人商店の集まりとも言える戦略ファームのパートナーを務めることは出来るのです。

では、コンサルタントは経営者に向いていないのかというと、そうではなく、コンサルタントだけど経営者に向いている人もいれば、コンサルタントでしかなく経営者には向いていない人もいるのだと思っています。優秀な技術者だけど営業センスがある人がいるのと同じように、両方の素養を持った人もいるということですね。

それでもコンサルは経営者へのステップになり得る

そのため、コンサルタントと経営者の両方の素養を持った人にとっては、戦略ファームでの経験は経営者になるための有効なステップになると思います。
戦略ファームで幅広いテーマのプロジェクトを経験することや、様々な会社の内部に入り込んだ経験は会社全体の運営を行う上で役に立つでしょうし、問題解決スキルは経営者として意思決定を行う上での武器になるでしょう。また、戦略ファームで経験を積むことにより、事業会社のマネジメント(もしくはそれに準ずる)ポジションに転職できる機会も格段に増えます。

ただし、先程も書いたようにコンサルタントと経営者はかなり異なりますので、経営者の素養があるかどうかはやってみないと分からないというのが多分にあると思います。そのため採用する側も、コンサルファームからいきなり社長として採用することは殆どなく、サーチファームのエージェントによると、社長ポジションの応募要件は殆どの場合は「社長経験者」だそうです。ですので、コンサル卒業生で社長になる人の多くは幹部人材として採用され、結果を出した人が社長になる、ということが多いです。

戦略ファームが日本に進出してきて数十年が経ち、戦略ファーム卒業生の数もそれなりになってきたこともあってか、戦略ファームの卒業生が著名企業の社長を務める例もだいぶ増えてきました。役員クラスまで含めると相当な数になります。その多くは、上場したベンチャー企業や外資系企業が多いのが実状だとは思いますが、キャリアパスの一つとして、国内でもかなり定着してきているようです。

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