ITプロフェッショナル対談

注目企業の現場に聞く。IT業界経験者のリーベルのコンサルタントが、業界経験者ならではの切り口でキーパーソンにインタビューし、その核心に迫ります。

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株式会社NTTデータ
金融技術戦略推進部(金融事業推進部 技術戦略推進部)(中編)

「金融」の仕事の面白さはどこにある? どんなキャリアを選択できる? NTTデータ 金融技術戦略推進部のエンジニアに直撃質問!

リーベル社長の田中祐介が聞き手を務め、NTTデータの金融技術戦略推進部の全貌に迫るITプロフェッショナル対談の第2回。前回は同部のミッションやプロジェクト内容について訊いたが、今回は主に、同部における仕事のやりがいやキャリアパスについて訊いていく。今回登場してくれたエンジニア3人はそれぞれ、どのような点に魅力を感じて金融技術戦略推進部で働いているのか? とりわけ「金融」部門における仕事のやりがいとは? さらに「お客様の力が強くて窮屈」「残業が多くブラック」などとイメージされがちな金融業界担当の職場環境の本当のところや、ジョブディスクリプション型の新しいキャリアパス「テクニカル・グレード」制度についてもじっくり話を伺った。

プロフィール ※インタビュイーの所属等情報は、2022年6月時点のものです。

株式会社NTTデータ 金融事業推進部 技術戦略推進部 システム企画担当
エグゼクティブITスペシャリスト
テクニカル・グレード
成田 雄一郎 氏
2010年、NTTデータに新卒入社。全社に向けた技術支援とR&Dを行う技術革新統括本部に配属され、研究所や銀行のシステム開発を経験。2016年、金融事業推進部 技術戦略推進部へ異動し、以後は一貫して金融分野を担当。最近は主に、AWSやMicrosoft Azure、GCPなどを用いたクラウドやコンテナの開発プロジェクトの支援、さらにはDXによる組織変革、インフラ刷新などを手掛けている。
株式会社NTTデータ 金融事業推進部 技術戦略推進部 プロジェクトサポート担当
エグゼクティブITスペシャリスト
テクニカル・グレード
内藤 淳 氏
ネットワーク事業者、ネットワーク機器の販売会社を経て、2011年、NTTデータに経験者採用入社。技術戦略推進部(当時は金融と公共の両方を担当)に配属され、最初の5年間は、基盤インフラに近いネットワーク、サーバー周りのシステム開発プロジェクトの支援を多数経験する。以後は主に、セキュリティの側面からシステムの運用開発をサポート。企画段階でのセキュリティの盛り込みや運用フェーズでのインシデント対応などを幅広く行っている。
株式会社NTTデータ 金融事業推進部 技術戦略推進部 システム企画担当
課長代理
近藤 卓未 氏
メーカー系SIerを経て、2019年にNTTデータに入社。金融事業推進部 技術戦略推進部に配属となる。以後、金融業界のお客様に向け、クラウドネイティブのセキュリティ関連サービスの創出や、コンテナを用いたシステム構成の検討・実証などを行っている。
株式会社リーベル
代表取締役 チーフコンサルタント
田中 祐介
Javaエンジニアからキャリアをスタート。要件定義から設計・開発、保守運用まで自ら経験したのち、アビームコンサルティングに転職。ITコンサルタントとしてフィージビリティスタディやIT基盤構想策定などの上流からプロジェクト推進まで幅広く対応。
リーベルでは、IT業界における多方面にわたる経験を生かして様々な方を支援。2016年、代表取締役に就任。

「いろいろなことがやれる」のが金融の一番の面白さ

田中:ではそろそろ、仕事のやりがいやキャリア構築のお話に移らせてください。皆さんのキャリアを拝見すると、「金融」だけにこだわる必要はなかったと思うんですよ。もっと別の業界の担当に行く選択肢もあったわけで。そんな中、皆さんはどうして金融を選んで、それを続けていらっしゃるんでしょうか?

成田氏:私の場合は、たしかに金融である必要はそんなになかったです。特にこだわりはない。でもまあ、居心地がいいです(笑)

田中:どのあたりが、居心地がいいのでしょう?

成田氏:意外に飽きが来ないというか。私は飽きっぽいので、1つのお客様だけをずっと担当するのは無理なんです。その点、金融は銀行、証券会社、保険会社、カード会社、さらには政府に近い組織など、いろいろなお客様がいて、それぞれ文化が全く違うし、スケジュールのスピード感も、技術セットも全く違う。学べることがたくさんあるので、出たいと思う機会がないんです。小規模から大規模まで案件の大きさも様々ですし。
だから扱える製品のバリエーションも多い。OSSだけでシステムを作るのではなくて、商用製品も含め、これを使いたいと言えば使えますし。そういう意味で、思ったシステムが作りやすいというのはありますね。

田中:そうなんですね。思ったシステムが作りにくい筆頭が金融だと勝手に思い込んでいたのですが(笑)
内藤さんはいかがでしょう?

内藤氏:私は10年前にNTTデータに転職してきたのですが、その時は技術戦略推進部が金融と公共の両方を担当していたんです。で、分かれる際に私は金融に残りました。民間企業として新しいことをやっていかなくてはならず、その分、求められるシステムのバリエーションも多いんじゃないかと。そのほうが苦労もあるだろうけど面白いし、やれることもたくさんあるだろうと考えたんです。端的に言うと、いろいろなお客様のいろいろなシステムの仕事がやれて楽しそうということですよね。それは実際にそうで、今もそこが大きなやりがいになっています。
それぞれの業界に良いところ、悪いところは必ずあるはずなので。その中で、新しいことをいろいろやれるチャンスがあるのが金融だと私は思ったわけです。

田中:「いろいろなことがやれるから金融」という理由は、成田さんとも被りますね。近藤さんはいかがでしょう?

近藤氏:私も正直、そこまで金融じゃないとダメという思いはないのですが(笑)。以前、メーカー系のSIerにいた時に、最初に配属されたのがクレジットカード会社のシステム開発だったんです。そこで何年かやっていたのですが、金融系のお客様は、セキュリティ面やシステム構成をとてもしっかり考えていらっしゃることと感じていて。私自身、不安症というか細かい性格でもあるので、そのようにしっかりやっていけるところが自分に合うというか、やりがいを感じるということから、金融系をやっている感じです。

田中:確かに金融系と聞くとしっかりやっているという印象があります。金融系の人材の評価は二分されがちなんですよね。ネガティブなほうだと「かっちりやらないと気が済まないよね」と評価される。でも逆にそこをポジティブに、「凄くかっちりと、ミッションクリティカルなものでもしっかりやってくれるので信頼度が高い」と評価してもらえるケースもあって。「完璧に近いものを出していく」という力をつけるのであれば、金融分野は凄く良いのではないかと言う印象は持っていますね。

近藤氏:なるほど。そうかもしれません。

田中:今、金融分野は「いろいろなことができる」「しっかりしている」みたいな話がありましたが、その他に何か、金融分野ならではの良いところ、面白いところがあれば教えてもらえますか?

成田氏:私は研究所と金融にしかいたことがなく、他の業界についてはよく知らないので比較は難しいのですが。金融はレガシーなイメージがあると思いますけど、レガシーな部分も含めて新しいことにチャレンジしていこうとする気概みたいなものは感じますね。

田中:お客様も「変えたい」「変わりたい」と思っているのですね?

内藤氏:そうですね。単純にクラウド化したいとかではなくて、レガシーというか、オンプレミスの部分でも、新しいことをやっていきたいと思っているのではないでしょうか。

田中:そうなんですね。レガシーの分野でも面白い仕事ができそうですね。お話をまとめると、いろいろなお客様がたくさんいて、要望や要件もいろいろあって、レガシーも最新も両方扱えるので技術者として飽きないし、ずっと成長していける、というのが、貴社の金融技術戦略推進部で働くメリットということですかね。

成田氏:そういうことだと思います。

内藤氏:あと、これは特に金融業界だからという話ではないですが、私の場合、自分たちが考えて作ったシステムやサービスが、お客様のメリットにダイレクトに反映されるケースが多いのも、やりがいにつながっていますね。

近藤氏:私も、自分の手を動かしつつも、お客様とああでもないこうでもないと議論できるのが一番のやりがいです。

成田氏:金融業界のお客様に求められる期待に応えていくためにはものすごく勉強をしなくてはなりません。新しい技術を使うにしても、何となく使うのではなく、「何故その技術を使うのか」を掘り下げて考える必要があります。その上で、自分自身の経験や知見をフル動員し、自分の責任でお客様に提案をし、サービスとして構築し、安定稼働させていかなくてはならないわけです。
こうした業務はプレッシャーもありますが、「最初から最後まで責任を持ってシステムを作れる」のはやはりとても楽しい。私がこの部署に居続けている理由は、そこにやりがいを感じているからだと思います。

お客様企業はパートナーとして対等。長時間労働も本当に改善された

田中:大変よくわかりました。やりがいは本当に大きいようですね。一方で、金融業界は、お客様の力が強いとか、子会社があってそこがいろいろなことをやってしまうのでこちらは何もできないみたいな話を耳にすることもあります。その点、NTTデータさんとしてはどのように感じていらっしゃいますか? 

成田氏:お客様は尊重しますが、対等なことが多いですね。お互いに信頼があるので。もちろん、お金をいただいているので立場はお客様が上ですが、技術者というか、システムを作るパートナーとしては対等だと考えています。ちゃんと説明をすれば信頼していただけます。

内藤氏:あまり他分野との比較では話ができませんが、少なくとも対等な立場で提案もできるし、お客様にも話を聞いていただける。そういう関係を築ける環境で仕事ができていると感じます。

田中:そうなんですね。
ちなみに、職場環境の面では、金融分野だと残業が多いイメージがありますが、そこはどうでしょう? お客様次第、フェーズ次第という感じでしょうか?

成田氏:残業は、業界全体だと思いますが、最近は本当に改善されています。多いというのはあまり聞かなくなっています。

田中:私は前職のコンサルティング会社時代、保険会社のシステムを担当していたので、「残業させると健康を壊して、保険料を払わないといけなくなるから帰れ」と言われていました(笑)。保険は優しいなと思っていたのですが、銀行や証券は忙しいイメージがあって。でも改善はされてきているんですね。

成田氏:はい、労働時間も働き過ぎないようしっかり管理されてきています。
もちろん、お客様やフェーズにもよりますが、全体的には、かなりホワイトだと思いますね。

「テクニカル・グレード」導入で、技術者が技術を極めるキャリアパスが明確になった

田中:それでは続いて、キャリア構築について訊かせてください。金融技術戦略推進部のキャリアパスはどのような形なのでしょう? この組織の立ち位置上、キャリアパスが見えにくいと感じるのですが。

成田氏:テクニカル・グレード(TG)という職位の社員が多いのが最も特徴的だと思います。従来は、この部署でも、一般社員、主任、課長代理とステップを踏んだら、次は管理職の課長。管理職になることが今までのキャリアパスでした。でも、マネジメントよりもスペシャリストを極めたいという志向を持つ人にとって、管理職への道が必ずしも希望するキャリアパスとは言えない面があったのです。そこを解決するために2019年に導入されたのがTG制度。今日のメンバーだと、私と内藤がTGです。

田中:TGとはどんな職位なのでしょう?

成田氏:端的に言えばジョブディスクリプション型で業務を遂行する職位です。組織に必要なミッション、ジョブがあって、それを遂行する。ジョブを定義してそのジョブに就いてもらうとともに、その人たちのジョブに求められる役割の大きさに対して適切に処遇する制度です。
TG制度は必要なジョブを定義し、そこに人をアサインするジョブ型の人事制度です。それが私だとDXや最新のインフラパッケージを作ることです。先進的な技術を使った案件はリスクも高くなるので、プロジェクトを成功させるために品質を上げていくとか、新しい技術を浸透させていくとか、そういうことをミッションとしています。
私の場合、先進的な技術に優先的にコミットする仕事をしていますが、そうした人もいれば、全然違う毛色のジョブもあります。いずれにせよ、技術者が、自分がやりたい仕事の領域で専門性を活かしたキャリアパスにはなっていますね。

田中:成田さんと内藤さんは、全然違うジョブディスクリプションですか?

内藤氏:全然違います。私はセキュリティの担当で、そういうジョブディスクリプションがあります。

田中:普通に課長に昇進するルートを選ぶ選択肢もあるのですか?

成田氏:もちろんです。ただ、管理職になるよりも技術を究めていきたいという人も多くて。

田中:私の前職でもいました。

成田氏:そうすると、そのキャリアパスが見えないので、その段階で外資系企業を選択される方もいました。

田中:それは実際、大事な話ですよね。他社へ行ってしまうのを食い止めるためというのは、現実的な話としてあると思います。お二人とも、ご自身で希望されてTGを選んだわけですよね?

成田氏:そうですね。TGになりたいと言ったら必ずしも全員がTGの道に進むことになれるわけではないと思いますが。

内藤氏:ただ、TGの道に進みたいという気持ちは必要だと思います。私は数年前に「マネージャー方向はどうか?」と打診された際に「結構です」と断ったんです。それはネガティブな意味ではなく、NTTデータには自分以上にマネージャー向きな人はたくさんいるのだから、そういう人が行けばいいと思ったからです。

田中:たしかにそういう人材は豊富な会社ですからね。

内藤氏:なので、私はTG制度がなかった頃は課長代理として続けていくのかなという状況でしたが、TGの制度ができて、そちらへ行く話をもらったという感じです。

田中:転職しなくてよかったですね。実際、それがなかったら、転職はあり得ましたか?

内藤氏:すぐにどうこうと思ってはいませんでした。NTTデータは給料待遇面で恵まれていると感じていましたので。

田中:そうですよね(笑)。成田さんは何故、TGに行こうと思ったのですか?

成田氏:私は一期生で、初めてのTGでした。制度ができたと聞いて、技術的なことをやっている時間が好きなので、そういうポジションができたのならばやってみたいと思ったし、初めての制度で面白そうだなとも感じたんです。ちょうどその時、課長の任用試験の入り口にいたのですが、「TGにしてください」と申し出て、こちらの道を選びました。

田中:例えば、これから、課長とかそういうマネージャーのラインに戻りたいと思った時に、それは可能なのですか?

成田氏:ルール上は可能だと思います。

田中:TGにはなくて、課長にはあるものは何なのでしょう?

成田氏:いわゆる組織管理の仕事ですね。

田中:たしかにそれが有るのと無いのとは全然違いますね。私の前職では、一応、コンサルタント職とスペシャリスト職というのがありました。スペシャリスト職は技術職でしたが、そうは言いながらも、結局、マネジメントを求められ、やっていることはコンサルタント職と同じ。いまは改善されているようですが、当時の実態は有名無実でした。それとは全然違うと感じますね。

成田氏:管理職は基本的には部下を持ち、部下のコントロールやメンタルの管理などをやりますが、テクニカルに特化したい人たちにマネジメント中心の業務を担ってもらうより、高度な専門性スキルの活用を中心に貢献してもらおうというのがTGの考え方です。

田中:まさに技術のプロフェッショナルのキャリアパスですね。今、IT業界全体的に流行っているというか、ジョブ型にしていこうという動きが大きくなっていますね。今後、そのジョブの定義自体を変更・更新していく考えはありますか?

成田氏:まだ歴史が浅すぎてわかりませんね。基本的には更新していかなくてはならないと思います。組織は変わっていくので。

田中:近藤さんは今後、どちらのキャリアパスを選択しようと考えていますか?

近藤氏:私も今年、課長代理になって1年目なので、そろそろ考えていかなといけないと思っていますし、選択肢があるのは、当社の特長だなと。技術者としてやっていきたい思いが強いので、今はTG寄りですね。

田中:この部門ではTG寄りの方が多いのではないでしょうか。NTTデータ=PMというイメージをお持ちの方が多いですから、この話は技術志向の高い方にとっては凄く大きなインパクトがあると思います。お話を伺っていると実際に皆さん、手を動かしていますよね。

成田氏:そうですね。技術に触れるのが楽しいですから。

田中:そこは大事ですよね。

ライター プロフィール

荒濱 一(あらはま・はじめ)
1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
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