ITプロフェッショナル対談

注目企業の現場に聞く。IT業界経験者のリーベルのコンサルタントが、業界経験者ならではの切り口でキーパーソンにインタビューし、その核心に迫ります。

  1. IT転職リーベル ホーム
  2. ITプロフェッショナル対談
  3. GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(後編)

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(後編)

「化け物クラスの天才」でなくても大丈夫! セキュリティのプロフェッショナル集団・イエラエが今、求める人材とは?

「セキュリティ業界の風雲児」イエラエの牧田誠社長に、リーベルのコンサルタントが迫るITプロフェッショナル対談の最終回。今回はいよいよ、イエラエで今、どんな人材が求められているのかを訊いていく。セキュリティ分野における「化け物クラスの天才」が数多く集結していることで知られる同社だが、求めているのもそういう人材だけなのか? 採用の際には何が決め手となり、そして入社後に成長し、活躍しているのはどんな人材なのか? 牧田社長の熱い言葉に耳を傾けてみよう。

プロフィール

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社
代表取締役
牧田 誠 氏
群馬大学工学部情報工学科を卒業後、ソフトバンク及びサイバーエージェントでセキュリティ診断チームの立ち上げを行う。2010年から、経産省主催のCTFチャレンジジャパンや、世界最大のハッキングイベントであるDEFCON CTFに日本人ハッカーチームの一員として参加し好成績を収める。2011年にイエラエを創業。今まで手掛けたセキュリティ診断実績は約900件を超える。

「もっともっと技術を突き詰めたい」という意欲のある人が欲しい

リーベル:ではここからは、人材についてのお話を伺っていきたいと思います。ズバリ、イエラエさんが求める人材像とは、どのようなものなのでしょう? どういう人が御社にマッチするとお考えですか?

牧田氏:弊社と合う人は、もちろん、今現在、優秀であることも重要ですが、それよりも「勉強意欲という意味でのポテンシャルをお持ちの方」です。
弊社は常に、「もっともっと技術を突き詰めたい」という意欲がある人を欲しいと思っています。一方でそういう方は、「自分が成長するために、日本トップクラス、世界トップクラスの人たちと一緒に働きたい」と思っているのではないでしょうか。弊社にはそのような人が数多くいますから、必ず満足してもらえるはずです。
逆に、「自分は言われたことをしっかりやりたい」「マニュアルを渡してもらえばそのとおりやります」みたいな人は、弊社には全く合いません。そういう人を求める会社もあるので、そちらへ行けばいいと思います。弊社には、もっと技術を深めて上を目指したい、その一方で、きちんと給料を上げていきたい、家庭も大事にしたいのでバランスを取っていきたい、という気持ちをお持ちの方がマッチすると思います。

リーベル:かなりポテンシャル重視なんですね。意外です。未経験や新卒の人も、ポテンシャルを見極めて採っている感じですか?

牧田氏:そうですね。ただし、リーベルさんのようなエージェントから未経験の人をご紹介いただいても、たぶん、落ちる確率が高いと思います。

リーベル:ですよね(苦笑)

牧田氏:私が面接をする場合は、ポテンシャルややる気について、ちょっとした証明をしてもらいます。例えば、「セキュリティをやりたいです」と口にしている人に対して、「何をやってきたの?」と尋ねた時に、「このCTF(Capture The Flag)のハッキングコンテストでこれくらいの成績だった」みたいな答えが返ってくるとか。「やりたい」ということと「こういうことをしてきた」ということがマッチしている人はポテンシャルがあると判断するので、私なら採用します。他のメンバーが面接をする場合はどうかわかりませんが(笑)

リーベル:正直、転職希望者に御社をご紹介しようとしても、「イエラエは化け物みたいな技術者ばかりだから、自分程度ではついていけない気がする」と尻込みしてしまうケースもあるんですよ。そのあたり、実際、どうなんでしょう? ポテンシャルがある人ならやっていける環境なのか。教育環境は整っているのか。エージェントとして伺っておかないといけないところなのですが。

牧田氏:私以外の人はちゃんと面接をしていて(笑)。彼らの採用基準には「自分が育てられるかどうか」が入っていると思います。だからちゃんと面倒を見ていますよ。教育プログラムもあるので、それに基づいてOJTをしたりしています。
「化け物だらけ」というのが強調されがちですが、実際は、弊社には普通の人もたくさんいます。まあ、中には本当に化け物クラスの天才もいて、そういう人に話を聞くといきなりハードルが上がってしまうんです。例えば、天才に「どうやってそんなにできるようになったの?」と聞くと、「いや、1日16時間、3年間やっただけだよ」みたいな答えがサラッと返ってきたりする。そうなると普通の人は「これはブラックすぎてついていけない」となり、挫折してしまうんです(笑)
でも実際は、その天才にとっての「1日16時間、3年間」というのは、仕事じゃなくて、ただ好きなことを趣味でやっている、遊びの時間なんですよね。モンハンとかゲームをやっている感覚で。だから、話を聞く人を間違えちゃいけないなと思います(笑)

リーベル:ごく一部、そういう天才みたいな人がいるのは事実だけど、もちろん普通の人もいて、普通に育てているし、普通の人に相談すれば問題ないと(笑)

牧田氏:そうですね。まあ、元々はそういう化け物じみた人しかいなかったですけど、最近は普通の人もいますから(笑)

「凄い人」と「普通の人」の補完関係が成り立っている

リーベル:そういう化け物じみた人がたくさんいて、技術力が圧倒的に優れているのが御社の強みでもあるわけですが、どうしてそういう人たちが御社に集結しているのか、そもそもどこで見つけてきたのか、私はもちろん存じ上げていますが、読者にも伝わるように改めてお聞かせ願えますか?

牧田氏:もともと日本にも私を含め、趣味でセキュリティをやっている人たちがいて。先ほども話に出たCTFのハッキングコンテストが世界規模で開催されており、私も参加していたんです。そういうコミュニティにいたので、起業に際して周りの人に「セキュリティのビジネスを始めるんだけど一緒にやらない?」と声を掛けて、参画してもらった感じですね。

リーベル:面白いですよね。

牧田氏:で、「凄い人の周りには凄い人がいる」という法則があって。日本全体で見ると10万分の1とか、100万分の1かもしれませんが、凄い人の周りには、10分の9くらいの確率で凄い人がいるんですよ。弊社は待遇が良いので、そういう凄い人たちが凄い人を呼ぶというか。「あそこは給料が高いし、休みも多いし、やりたいこともやれるらしい」「じゃあ一緒に行こうか」みたいな感じで人材が集まってきたという流れですね。

リーベル:エージェントからの紹介は無理なレベルの人たちですね。

牧田氏:彼らは転職市場に出ないです。

リーベル:逆にそういうレベル感ではない人でも採用してくれるようになったからこそ、私からも紹介しやすくなったなと肌で感じているんですが(笑)

牧田氏:そういう凄い人たちは、凄く特殊で誰でもできないような仕事はできるのですが、逆に、誰にでもできる仕事にはあまり興味なかったりするんです。だから普通の人と補完関係が成り立ちます。
例えば、彼らが見つけた脆弱性をお客様にわかりやすく文章にするとか、タスクやスケジュールを管理するとか、お客様に連絡するとか。実際はそうやってサポートし合いながら仕事をしているんです。

リーベル:そうなんですね。

牧田氏:だから、イメージ的に「イエラエには化け物じみた天才しかいないから自分は無理」と考え、諦めてしまうのはもったいないです。実際は補い合って仕事をしているわけですから。

リーベル:天才と普通の人が両方いるから仕事が回ると。普通の人にとっても、本当に日本トップクラス、世界トップクラスの天才みたいな人と実際に働きながら成長できるのは、すごく魅力的だと思います。

牧田氏:私も普通の人なので、彼らと話したり、仕事の結果を見たりすると、感動することばかりですよ。私からしたら絶対不可能だろうと思うことが可能になってしまうので。

リーベル:例えばどんなことがありましたか?

牧田氏:先日は、インターネットから銀行にマルウエアを送って、ATMまで入れてしまったことがあって。普通、インターネットからATMにアクセスできるとは思わないじゃないですか? それを実際にやって、「セキュリティ製品に脆弱性あって突破できちゃったんですよ」みたいに簡単そうに言ってきたり(笑)
あとは、お客様からゼロトラストのセキュリティを見てほしいという依頼があった際に、クライアント証明書がついていて多要素認証もやっているシステムを突破していましたね。クライアント証明書の安全性はすでに証明されているものだから、これも普通は絶対無理なんですよ。でも「ゼロデイあってバイパスできちゃいました」みたいな(笑)

リーベル:ヤバイですね(笑)

牧田氏:ヤバイんですよ(笑)。だからこそ、退屈することはありませんね。

事業会社とセキュリティベンダー、どちらに行くべき?

リーベル:最近のセキュリティ人材の傾向として、事業会社に行きたがるケースが多いんです。牧田さんの場合、事業会社で経験を積んで、セキュリティベンダーを立ち上げているわけですが、事業会社とセキュリティベンダーそれぞれの働く利点や、「こういう人はこっちにいったほうがいい」みたいなお話を伺いたいのですが。

牧田氏:理想は「事業会社とセキュリティベンダー、交互に働く」ことだと思いますね。セキュリティベンダーで仕事をして、事業会社に転職。その次は再びセキュリティベンダー、そしてまた事業会社、みたいに。これは私の持論ですが。
セキュリティベンダーにいると深い技術が身に付きます。例えば、PHPのセキュリティや、ペネトレーションテストなど。ただ一方で、プロダクトができてからリリースするまでの間しか見られず、幅が狭いんです。要はプロダクトの設計や開発、運用といったフェーズが見られないわけで、そこがマイナスです。
とはいえ、技術が身に付く、手に職が付くのはやはり大きい。だから、まずはセキュリティベンダーで自分の武器・強みを身に付け、それを使って次に事業会社に貢献をするのがお薦めです。

リーベル:なるほど。

牧田氏:一方、事業会社で働くと、自分の専門性を発揮しつつ、ビジネスの全体が見られます。「開発にあたって、こんな理由で、こんな脆弱性が生まれるんだな」「だから手前でやるべきなんだな」みたいな点が見えてくるわけです。けれども、その会社でやっているサービスしか見られません。その会社のアプリケーションしか見られないし、そのアーキテクチャーの開発言語しか使えない。そうなるとエンジニアとして深みがなくなってきます。そこで、もう1回セキュリティベンダーに行き、違う技術に挑んだり、専門性を深めたりするといい。
要するに、専門性を深めたい人には弊社の様なベンダーが合っているし、もっと全体を俯瞰しつつ自分の専門性を発揮したい人は事業会社がいい。一流のセキュリティエンジニアになるには両方の経験が必要なのではないかと思います。

リーベル:なるほど。そういうことですね。「事業会社、事業会社」と何も考えずに言っている人には、今のお話をコピーして伝えたいと思います(笑)

技術を自主的に勉強している人はやはり伸びる

リーベル:これまで御社に中途で入ってきた人で、どんな方が活躍しているかも、ぜひ知りたいです。

牧田氏:総じて言うと、「自主的に動ける人・能動的に動ける人」が活躍しています。弊社は「世界一働きやすい会社」を目指していますけれども、まだ100点ではなくて、30点、40点くらいしか取れていません。そこで「30点だからこの会社はダメだ」となるのではなく、「こうやったら50点になりますよ」「60点になりますよ」と、自らどんどんアクションを起こしていける人が伸びていきます。

リーベル:やはり自主性ですね。

牧田氏:技術を自主的に勉強している人はやはり伸びますよね。技術を十にすることを目指して、「これを次にやりたいのですが」「このトレーニングをやってみたいです」とどんどんチャレンジしていく。部署もどんどん飛び越えて、Web診断だけではなくて、クラウドもやれば、ペネトレーションテストもやるとか。そんな形でエンジニアとしての幅もキャリアも伸ばせている人はいますよね。ウチは成果で給料を払っているので、そうやって成果を出せば、入社3年で給料が2倍になる人だっていますよ。

リーベル:それは凄いですね! 評価は年に何回行うのですか?

牧田氏:年1回ですね。

リーベル:どういう軸で評価するのでしょう?

牧田氏:売上貢献度と技術貢献度の2つの軸で成果を評価しています。かつ、大前提として会社が伸びているので、決算賞与をかなり出します。

リーベル:しっかり技術を伸ばしていきたいという成長意欲の高いエンジニアには、もってこいの環境ですね。

牧田氏:だと思います。

GMOグループに入っても「大事にしている価値観は変わらない」

リーベル:もう1つ、どうしてもお聞きしたいことがありまして。GMOグループ入りするにあたって、もちろんいい面も多いでしょうが、その反面、今日お話いただいたような御社ならではの働きやすさが、グループ全体の方針に従わなくてはいけないみたいなことでスポイルされてしまう懸念もあるように思うんです。そのあたり、正直、どうなんでしょう?

牧田氏:大丈夫です。「社員待遇は変えない」という条件でグループに入っているので。福利厚生、給与、働き方、そういうもの全てを経営陣が決められることになっています。
もちろんプラスの面が大きいからGMOグループ入りするわけで。会社としてのビジネスにもプラスだし、社員にとっても、例えば、渋谷のセルリアンタワーのオフィスに行くと、社食が全部無料で、金曜日の夜はお酒も無料みたいなメリットがあります。

リーベル:もしネガティブな面があるとしたら、どういう点ですか?

牧田氏:あるとしたら採用ですね。今までは、イエラエという独立した非上場の会社で、自由にできそうということで当社を選んでくれた人もいると思うんです。「小さい会社が好き」というエンジニアも多いですしね。それが今度は、上場企業のグループ会社で、かつ弊社自体も上場を目指しているので、上場企業並みのルールが必要になりますから、そこが採用の際のネックにならないだろうかと。

リーベル:ああ、なるほど。

牧田氏:これまで、「イエラエにはエンジニアとして十を突き詰めたい人が集まっている」という尖ったイメージがあったと思うんです。そこは全く変わらないんだよ、ということは強くアピールしていきたいですね。

リーベル:そういうところは思いっきり、転職エージェントである我々の出番だと思います(笑)

社員から億万長者を出したい

リーベル:それでは最後に、牧田さんから、今後、御社に転職を考える方に向けて、何かメッセージがあればぜひお願いします。

牧田氏:実は、私は裏ミッションとして、社員から億万長者を複数人出したいと思っているんです。

リーベル:おお! 億万長者ですか!

牧田氏:新しくストックオプションの枠ができたので、先ほど申し上げた「売上貢献度」、「技術貢献度」、さらに新たに「プロダクト貢献度」が加わるのですが、こうした点で貢献してくれた人にストックオプションを付与していこうと考えています。上場を目指していますので、その時に、ストックオプションで億万長者を複数人、絶対に出したいなと。成果に応じて公平にストックオプションを付与したいと思っています。
これから入社される人にも、もちろんストックオプションを受け取るチャンスがあります。成果を出して、技術を身に付けて、さらに億万長者になる。そんな「一石三鳥」を目指したい人に、ぜひいらしてほしいですね。

リーベル:それは非常に夢のある話で、モチベーションも上がりますね! すごく楽しみです。
最後に私から牧田さんにお願いなのですが。会社が大きくなって、億万長者になっても、このまま変わらないでいてくださいね(笑)

牧田氏:ははは! それも大丈夫です! 私は変わりたくても変われないので。立派な社長らしい社長になりたいとも思いますけれども、無理ですね(笑)

リーベル:それを聞いて安心しました! 今日は長時間、ありがとうございました!

牧田氏:こちらこそ、ありがとうございました!

ライター プロフィール

荒濱 一(あらはま・はじめ)
1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
注目のキーワード: