転職者たちの「今」

リーベルで転職した人たちは新たな舞台でどのようなキャリアストーリーを描いているのでしょうか。転職後の「今」に迫ります。

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株式会社リクルートライフスタイル

小川 健太郎さん

自分が「正しい」と思ったやり方で突き進み、覆した常識
マネージャーとして、社内文化を変え、新風を巻き起こす

プロフィール
高校卒業後にソフトウェア開発会社に入社。約6年の間に、医療や建設会社、広告代理店、金融系、食品店、商社、人材系など、多岐にわたる業種かつ短納期のシステム開発を多数経験。そのうち3件はプロジェクトマネージャーとして開発の陣頭指揮に当たる。その後、転職してリクルートに入社(のちに、会社分割に伴いリクルートライフスタイルに配属)。新規事業開発に携わり、現在はディベロップメントデザインユニットプロダクト開発3グループのグループマネジャーを務める。
もっと作りたい、もっと提案したい。
しかし、予算が少ない受託開発ではやろうとすればするほど、会社の不利益になる。
そんな「生産工場」のような職場に身を置きながら、いつしか、事業会社に憧れ、リクルートへ。
自分が「正しい」と思ったことを思う存分やり抜ける理想的な環境を手に入れ、才能が開花した。
新しい風を吹かすんだ、ここから文化を変えるんだ。
その熱い想いを胸に奮闘する日々のリアルと、リクルートライフスタイルで働く魅力を聞いた。

やれはやるほど、会社の不利益になる

前職では来る日も来る日も、短納期の受託開発でプログラムを書き続けた。ひたすらスループットを上げることが「価値」だった日々。しかし、ある日、問題が頭をもたげるようになる。それは、もっと良いものを作りたいと思えば思うほど、会社の不利益になる現実への疑問だった。

—— 前職は受託開発会社で、在籍した6年間で主な案件だけでも17件携わったようですね。

小川さん:システム開発の案件で、主にプログラミングを担当していました。職務経歴書に書かない様な小さな案件も掛け持ちしつつ、最後はマネージャーという役職にありながら、自分でもプログラムを書いていました。一定期間で決められたものを作ることこそが「価値」で、ひたすら仕事のスループット(単位時間当たりの処理能力)を上げることだけを突き詰めた日々。今想い返せば、辛い毎日でしたね。

—— 数々の実績を残す中、疑問に思うこともあったそうですね。

小川さん:あるシステムを作っていた時、ふと考えさせられることがありました。私としては相手から要望を聞くだけでなく、自分が良いと思う機能も追加したいし、提案もしていきたい。ですが、予算が決まっている中、それを言ってもお金を取れない。これをこうすれば良くなるのにと、考えれば考えるほど、それは会社の不利益になるというジレンマがありました。使いやすさやソフトウェアの品質を上げることが、必ずしも会社の事業モデルとマッチしていなかった。

—— 転職活動を始めたきっかけは?

小川さん:じつは、親しい人が私に内緒でIT会社に応募したのがそもそもの発端です。突然、「書類選考に通りました」と連絡を受け、応募した覚えがないのに、何だこれはとびっくり(笑)。でも、事業会社には興味がありましたし、せっかくだから話だけでも聞きに行こうと面接を受けました。すると、面接がとんとん拍子に進み、内定が出てしまった。

—— けれども、そのIT会社には入社しなかった。

小川さん:仕事内容は良かったのですが、その会社で働いているイメージがどうしても沸かなかったからです。ただ、話を聞いて、受託開発よりも事業会社の方が間違いなく仕事の内容は良いことがわかりました。そこで、改めてレジュメを書いて、転職サイトに登録すると、スカウトメールが一斉に来ました。1週間くらい放置していたのですが、再度メールを送ってくれた転職エージェントが1社だけあり、それがリーベルでした。

—— リーベルから紹介されたのが、リクルートだったのですね。

小川さん:そうです。ただ、面接では、リクルートという事業会社に入って何をしたいか、自分の価値は何かなどは、全く話せなかった。私はひたすら生産性を上げることしか仕事で考えてこなかったので、事業会社という畑違いの環境で自分がどう貢献できるかまだイメージができなかったからです。それでも、面接官(じつは今の上司)は、経歴から読み取れる私の「価値」を一緒に考えてくれた。

—— 面接で応募者の価値を考えてくれるとは…レアなケースです。

小川さん:面接ではなく、これはキャリアカウンセリングではないかと錯覚するほど(笑)、とても親身になって話してくれました。こんな上司と一緒に働きたいと思いましたね。また、「何がしたいか」「こういうことはやってみたいか」と聞かれて、「明確にこれがやりたいということはありません」と正直に言ったものの、「ただ、たぶん私だったらその仕事はできると思います」と、答えたことを覚えています。根拠はありません。自信過剰だったのかもしれません。そんな私をリクルートは採用してくれました。懐が深い会社だと思いましたね。

「正しい」と思うやり方を見つけ、やり通す

リクルートに入社し、その後組織改編に伴いリクルートライフスタイルに配属された小川さんは、今まで携わったことがないような大規模なプロジェクト、体制に戸惑う。自分の価値をどう発揮すればいいか、自分はこの会社で何がやりたいのか。しばらくして、その答えが見つかる瞬間が訪れた。

—— リクルートに入って最初の業務は?

小川さん:リクルートポイントや当時立ち上げの真っ只中だったボンパレモールのシステム開発に参画しました。前職のプロジェクト規模は5〜10人でしたが、リクルートのシステム開発は100人規模です。足軽く良いものを作ることが従来の自分の価値だったので、そんな大規模プロジェクトの中で果たして貢献できるのか、ギャップは否めませんでした。さらに、打ち合わせや調整が多く、システム設計の方針を決めるのに1〜2カ月かかる点も、戸惑いを感じました。今では、社会的なインパクトを考慮すると、足が遅くなってもしっかり設計しなければならなかったのだと納得していますが、当時はその理由を全く理解できていませんでした。

—— 前職と仕事の進め方が異なる中で、悩みも深かったと思います。

小川さん:しかし、入社から2年ほど経ち、新規事業の企画、開発の部署に移ってから、考え方ががらりと変わりました。それまでは上から言われたこと、与えられた仕事だけをこなせばいいと思っていましたが、新規事業開発では逆にルールが全くなく、皆やりたいようにやっていたのです。そこで、ルールに縛られ過ぎていた自分に気づきました。同時に、自分が正しいと思うやり方を見つけて、それをやり通すことが、何よりも自分がやるべきことであり、やりたいことであると、確信したのです。面接の時に、「やりたいことは何か」を問われた答えを、その時ようやく見出だせました。

—— 正しいと思うやり方とは、具体的に言うとどういうことですか?

小川さん:前述のシステム設計を例に取れば、スケジュールに疑問を感じたら、「こうあるべき」という代替案をセットで考えて提案するということです。他にも、古い技術を使っていたり、体制に問題があったりすると感じたら、「より良いもの」を作るために、自分が正しいと思うやり方に変えていく。そうやって、提案すると、上司は「やってみれば」と、自由にやらせてくれるようになりました。前職では良いものを作ろうとすると会社の不利益になっていましたが、この時に初めて、良いものを作るほど会社の利益になる環境を手に入れることもできました。

—— 自分の力を発揮できるようになった瞬間ですね。

小川さん:結局、「自分が正しい」と思った方向にガンガン突き進むことが許されるのがリクルートの文化だと、今では考えています。念には念を入れてじっくり考えて進めるやり方も、判断を早くしてスピード感を持って進めるやり方も、その人が「正しい」と思えばそれを実践できる場がここにはある。それはリクルートの多様性にもつながる話だと思います。

キュレーションメディア開発での成功体験

いくつかの新規事業開発を経験した小川さんが、最も成功したと感じている案件は何か。また、今では美容領域や新規事業領域の開発グループのグループマネジャーを任されるようになった。小川さんはどのような方法で、グループを引っ張っているのだろうか。

—— 実際に進めた具体的な案件は?

小川さん:いくつかシステムを作りましたが、私が考える正しいやり方を最も上手く表現できたのは「ギャザリー」というキュレーションメディアの開発です。リクルートではオンプレミスでJavaを使ってウォーターフォール型で大規模に作っていくことが通例でした。しかし、ギャザリーではゼロベースで考え、AWSなどクラウドの方がサービスに適しているのではという結論に至りました。さらに、バックエンドをAPI化したり、フロントは足回りを良くするためにRubyを使ったりするなど、古い技術と新しい技術を融合させました。今でいう「マイクロサービス」に近い概念の開発だと思います。マイクロサービスなどの概念に従うことは必ずしも正しいとは限らないのでサービスに適した粒度まで分けるということが大切で、そういったところは今後も意識していきたいです。

—— 新しいことに挑戦して、障害はなかったですか?

小川さん:開発体制を社内の人材のみで整えることができなかったことがハードルでした。そこで、前職時代に知った複数のシステム開発会社へ提案書を持って練り歩き、社長や部長相手にプレゼンしました。その上で枠は用意するので、良い人材をアサインしてほしいと直訴。幸い1社に応じていただき、開発体制を構築できました。ギャザリーは社内で評価され、表彰も受け、副賞で受け取ったお金を使って関係者で焼肉を食べられたことが、とても良い思い出です(笑)。

—— マネジャーに昇格し、仕事の幅も広がりましたね。

小川さん:ギャザリーの成功体験を横展開するため、他のアプリやサービスに正しいと思ったやり方を応用するなど、様々な挑戦を試みています。今年からはヘアサロン・リラク&ビューティーサロンの検索・予約サイト「ホットペッパービューティー」を担当。この100人規模の大きなプロジェクトで、システムの作り変えやあるべき姿の追求を進めています。私自身、従来のエンジニアの立場から、マネジメントなど組織課題の解決に仕事がシフトしていますが、「正しいことをやる」「良いものを作る」といった想いは全く変わっていません。

—— マネジャーとして気を付けている点は?

小川さん:メンバーへのメッセージをシャープにすることを心がけ、その上で会議などで、皆に何を期待するかを明確に要望することですね。例えば、自分がリクルートに入社した当時感じた無力感や徒労感を皆が極力感じないように、「新しい風を吹かすんだ」「ここから文化を変えるんだ」とメッセージングしながら、変化を促しています。具体的に指示することもあります。「プロダクトコードを書こう」というメッセージもその1つ。リクルートのエンジニアは外部の開発会社を管理することだけが仕事と思われがちでしたが、現場をまとめるためにはコードを書くことも大切。社内の常識を覆し、「正しいと思ったら変えていいんだ」という意識付けができたことは収穫でした。

—— 一人ひとりが正しいやり方を考えることが大切ですね。

小川さん:コードを書くことが浸透したので、今度は「事業会社に貢献できることを、それぞれが探して、行動してみて」とメッセージの内容を変えています。色々な意見や考え方があっていい。それらを否定することなく包括する存在に、マネジャーや組織がなれればと思います。

市場価値より存在価値

入社してしばらく経つ小川さんだが、中に入ったからこそ感じるリクルートという会社の真の姿を実感しているはずだ。リクルートとは本当はどんな組織なのか。外からでは見えづらい、会社の実像に迫る。さらに、受託開発会社から事業会社に転身するために必要なことも聞いてみた。

—— 入社してしばらく経ちましたが、改めてリクルートはどんな会社だと思いますか?

小川さん:ひと言でいうと、「人を大切にする会社」です。いまだに「何をやりたいのか」と上司から聞かれますし、私だけでなく、全社員が常に問われています。リクルートは上の役職に行けば行くほど、優れた人材が揃っています。効率を考えれば、その人たちが「これをやろう」と方針を決め、全社員が取り組む方が、1.5倍、2倍の生産性を出せます。けれど、それをしない。しないのが凄い点ですし、そうしなくても売上げを含めて成長していることがリクルートの底力です。他のトップダウン型の企業は50年後にまだ成長しているかどうかわかりませんが、下からどんどん人材が育つリクルートは、50年後も変わらず成長を続けていると思います。

—— リクルートの中で自身のキャリアアップの展望は?

小川さん:正直言って、全く考えていません。その代わり、世界の中での自分の存在価値を日々意識しています。世の中に新しい風を届けるにはどうすればいいか。それを成し遂げることこそが自分の存在価値だと考えています。私自身、リクルートという会社に固執するつもりはありません。辞める、辞めないは別にして、リクルートでなくても、一個人として、どこでもやっていける自信はあります。大切なのは、会社やキャリアにとらわれるのではなく、自分自身の存在価値を高めること。今は、リクルートという組織でやりたいことを自己表現しているという考え方が、一番しっくりきます。

—— 自分の市場価値は意識しませんか?

小川さん:市場価値はどうでもいいと思っています。市場価値とはいわば、どんなキャリアを積めばいくらお金をもらえるかという価値。それこそ、他の会社なら給料が1.5倍、2倍になるから転職するという考え方です。自分はそういう考え方では動かない。ただ、このように思えるようになったのも、リクルートで本当にやりたいこと、やるべきことを見つけられたおかげです。面接で「こういう人と働きたい」と思い、その人を信じて転職して、本当に良かったです。

—— 最後にリクルートのグループ会社への転職を目指す方たちにメッセージを。

小川さん:もし、あなたが受託開発会社のプログラマーであれば、そこはスループットを伸ばせる最高の環境。ですから、その環境をフルに活用し、作ることに対する最大限のスキルと自信を得ておくことが何より大切です。事業会社の面接では「事業のことを分かっていないよね」と言われるかもしれません。それに対し、「自分は作ることに関しては負けない。事業のことはわからないが、やってみたい」と強い自負と意思を示すことが重要でしょう。

—— リクルートの実情、そして、入社後にどのような考え方で仕事に取り組むべきかがよくわかりました。有難うございました。

ライター プロフィール

高橋 学(たかはし・まなぶ)
1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。
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