
退職トラブルは増えているのか?
転職エージェントになってもうすぐ13年。これまで数多くの方を支援してきましたが、退職交渉に難航された方もいました。思い返すと、特に大変だったのは5名ほどです。
退職交渉における転職エージェントの仕事は、現職企業と円満に合意いただけるようサポートすること。エージェントが代行することは出来ないので、本人が現職と向き合って話をしてもらうことになります。私からは基本的にアドバイスを送って支援をしていました。
ただ、思い返してみればいずれも10年近く前の話です。最近は退職交渉で揉める、時間がかかるというケースはほとんどなくなりました。
感謝と覚悟が、円満退職をつくる
そもそも日本においては正社員が退職することは完全に正当な権利で、民法では期間の定めがない雇用契約は原則2週間前の申し入れで終了できると規定されています。職業選択の自由も憲法において定められており、退職すること自体は認められた行為なのです。会社が退職を止めること自体は基本的には難しいのですが、引き留めの話をしたり、退職時期の相談をすることは問題ありません。実際、多くの方がそうやって調整をした結果、円満退職に至っています。社員が抜ければ、企業側の影響というのも当然あります。引継ぎの進め方や退職日までの活動内容等、双方で認識を合わせる必要があるので、ことさら真摯に向き合う必要があるのです。
退職を最初から強く申し出るスタンスは、基本的にはお勧めしていません。感謝の気持ちを伝えつつ、次に進むという固い意志を伝える方が、企業側も納得してもらいやすいのです。時間は掛かることもありますが、本音を全てぶちまけた退職交渉の方が時間がかかるケースが多いと思います。
一方で、それが通用しないケースもあります。
退職交渉におけるトラブル事例
よくあるのは、退職の申し入れを上長が受け入れてくれないことです。話をしたのにはぐらかされたり、考え直せと突き返されたり、とにかく話を進めてくれないことがあります。〇月に辞めると退職の意思を伝えたのに、上長だけで話を止めてしまい会社として意志を受け取っていないと扱われたり、はぐらかされるのです。IT業界だと常駐先の顧客への影響もあるため、過去には営業側が話を進めたがらないという困ったケースもありました。
こういった場合も最初は粘り強く話をするように働きかけるのが良いのですが、場合によってはメール等での証跡を残しておく必要もあります。最初は対面(或いはWeb)で、顔を合わせて申し出るのが良いのですが、話が進まない際には別の打ち手が必要となります。
中には、退職の意思を伝えたところ逆に恫喝を受けた。という事例もありました。
私が転職支援をしてきた中で、唯一の事例です。社員全員の前で裏切り者(!)呼ばわりされたり、転職先の企業へ連絡するぞと息巻いたりされた方がいました。現職企業の代表がそういう考えに固執し、色々と否定的な言動を受けたようです。
転職者さんは10年以上頑張って働いてきたのに、そのような言われ方をされ精神的にも大きなダメージを受けていました。何度も電話をして励まし、その方自身の正当性を伝え、勇気づけて色々と対応案をお伝えしたことを覚えています。
昨今、退職代行業者が何かと話題になっていますが、こういった業者に駆け込みたくなる気持ちというのも分かる部分があります。単に退職を否定してくるというより、人としての尊厳まで深く傷付ける言動をしてくる企業も実際にあるのです。そういった企業と一人で対峙しなければならない時、誰かの支えが必要になることもあると思っています。
円満退職に向けて
一方で、その方も無事に予定通り退職が出来ました。退職交渉が難航された方々も、みなさん無事転職をされています。
繰り返しになりますが、退職自体は正当な権利。この権利を不当に扱うというのは、結果的には企業側にとってもマイナスにしかならないのです。法律上でも当然認められていますし、就業規則にも退職に関する規則が必ずあります。そういった事実を踏まえて、情報を確認した上で話をすれば、企業側とも合意が必ず取れます。前述の方のようにハードな状況となるケースもありますが、エージェントを使っていたなら色々と相談してみてください。アドバイスを送るだけでなく、話を聞いたり元気付けたりするのもエージェントの仕事だと思っています。
10年前よりも転職自体が一般化し、IT業界ではトラブルもほぼ聞かなくなりました。それでも悲しいことに、今の世の中で退職代行を必要とされる人がいるのも事実なのでしょう。こういったトラブルが社会からいち早く無くなることを切に願います。
そして退職交渉が単に面倒だから、何となく気が滅入るからと、文字通り代行してもらうというのも安易な考えだと思います。感謝の気持ちと固い意志を伝えれば、時間はかかっても多くの企業はその決断を応援してくれるはずです。


