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第1224章
2025/07/18

モネの人生に学ぶ、キャリアとアウトプットの変遷

クロード・モネの企画展より

少し前になりますが、都内の美術館で開催されたフランスの画家:クロード・モネの企画展に行ってきました。印象派を代表する画家として知られるモネの作品は、時代を経てもなお多くの人の心を動かし続けています。会場は多くの方が来ていて大混雑。貴重な絵画を堪能していました。
特に私が感銘を受けたのは、彼の絵が単なる風景画ではなく、その時々のモネ自身の人生や視点を色濃く反映している点でした。
光を追いかけた若き日。庭を耕し、同じ風景と向き合い続けた成熟期。病と喪失を乗り越え、なお表現を追求した晩年。彼の作品の変化は、まさにライフステージごとの心の変化を映し出しているようでした。
キャリアにおいても、私たちは年齢や経験の積み重ね、生活環境の変化とともに、自分自身の価値観やアウトプットに変化が生じていきます。今回はモネの絵画を通して、「ライフステージに応じたキャリア形成」について考えてみたいと思います。

モネのキャリアの初期:新しい視点への挑戦と模索

若き日のモネは、従来の絵画技法に縛られず、光や空気の移ろいを瞬間的に捉えるという新たな表現に挑戦しました。そして1874年、「印象派展」の名称のもとに作品《印象・日の出》を出展し、既存の評価軸にとらわれない道を切り拓きます。従来のアカデミックな絵画教育や保守的なサロンに対して疑問を抱き、仲間とともに活動を始めたのは、まさに「自分の目で世界を見たい」という強い意志の表れだったと言われています。
このモネの姿は、キャリア初期における「挑戦と模索」そのものです。周囲の評価よりも、自分が何を表現したいのかを問い、時には反発を受けながらも新しい価値を世に問う。自らの志向や得意分野を模索し、時にリスクをとってチャレンジした姿勢は、20〜30代の多くのビジネスパーソンが通る道でしょう。
モネも初期の作品が酷評され、経済的にも苦労しながら自分のスタイルを貫きました。その探究心が、やがて「印象派」という全く新しい価値を生み出したのです。

モネの成熟期:安定と深化、独自のスタイルの確立

40代以降、モネはジヴェルニーという土地に落ち着き、自宅の庭に池を作り、そこに咲く睡蓮を繰り返し描くようになります。一見、同じような構図の作品を何十枚も描いているようにも見えますが、実際は時間帯や天候、季節によってまったく違う色合いや空気感が表現されています。モネは同じ風景を見ながら、毎回新しい発見をしていたのです。環境を整え、自らの関心を深く掘り下げる。彼の絵は、この時期に技術的にも精神的にも成熟を見せ、世界中で高く評価されるようになります。
これはキャリアの中盤で専門性を深め、仕事のスタイルが固まっていく姿と重なります。若い頃のような目新しい挑戦ではなくても、自分の土俵を持ち、そこを掘り下げて価値を提供し続ける。働く場所やスタイルを自ら整え、周囲の信頼を得ながら自分ならではのアウトプットを続ける中で、他の誰にも真似できない「自分だけのやり方」が磨かれていきます。

モネの晩年:変化を受け入れ、なおアウトプットを続ける

晩年のモネは白内障のため視力が衰え、色彩の認識に大きな変化が現れます。家族の死去にも直面して苦しむ一方、しかし彼は筆を置くどころか、むしろより大胆に、より感情的な色使いで作品を描き続けました。かつての柔らかな印象派のタッチとは異なり、晩年の睡蓮シリーズは、見る者を圧倒するような迫力と、ある種の切実さを湛えています。
この時期のモネの作品からは、「今の自分にしか描けないもの」を追求した姿勢が感じられます。身体の衰えや喪失体験を経てもなお、新たな価値創造の可能性をモネは体現していたのかもしれません。

変わり続けることは、豊かさの証

キャリアの変化は、ふとした感情の変化や揺らめきがきっかけかもしれません。以前のように上手くできないと感じたときや、評価の軸が変わったとき。人は戸惑うものですが、モネの人生に目を向けると、それに合わせて自身のアプトプットも「変化すること」こそが、その人ならではの豊かさだと気づかされます。
今この瞬間の自分だからこそ描ける風景、自分だからこそ表現できる価値。それを信じて、変化とともに歩む——それが、持続可能でしなやかなキャリアの鍵なのではないでしょうか。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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