
- 筆者プロフィール: ケンゾウ
- 大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第53話
ファスト・トラッカー
ファスト・トラッカーとは
こんにちは、ケンゾウです。戦略ファームは完全なる実力主義です。その点に関しては、非常にフェアな評価がなされていると思います。もちろんコンサルタント個別でみると、自分の評価に不満を持っているケースもあるかもしれませんが、全体で見れば、通常の会社と比較して圧倒的に実力主義が徹底されていると思います。
そうすると何が起こるのか?個人ごとにプロモーションするスピードが大きく異なってくるのです。中には、驚くようなスピードで上り詰めていく人もいます。いわゆる「ファスト・トラッカー」と呼ばれる人々です。今日は、そんなファスト・トラッカーについて書いてみたいと思います。
通常の会社であれば、ランクが一つ上がるのにどれくらいの期間が必要でしょうか?例えば、平社員から係長になるまで。係長から課長になるまで。大企業であれば、5〜10年といったところでしょうか。
戦略ファームの場合、通常の人でも2〜3年でタイトルが一つ上がるところを、早い人では1年で、年に2回プロモーションのタイミングがあるファームでは最短半年でタイトルがあがることがあります。これを繰り返すと、どうなるか?中途の場合は何歳でファームに入るかによるので新卒入社の場合で考えると、早い人では30代前半でパートナーまで上り詰める人が出てくるのです(極小数ですが)。
パートナーとは共同経営者の一人です。自分でプロジェクトを売ってきて、プロジェクトの最終責任を持つ人です。30代前半で大企業の役員相手にそんなことが出来るのか不思議に思われるかもしれませんが、実際にそういう人がいるのです。
どんな人がファスト・トラッカーになれるのか?
では、ファスト・トラッカーになれる人はどんな人なのでしょうか?宇宙人なみに頭が切れる人でしょうか?特殊なスキルや人脈を持っている人でしょうか?
頭が切れるのは確かに要素の一つになりえそうですが、それだけでは十分ではありません。特殊なスキルや人脈については、新卒でもファスト・トラッカーになれる人がいることを考えると、最初から持っている必要はなさそうです。
私自身は残念ながらファスト・トラッカーでは無かったので、あくまでも第三者的に見ていて感じたことでしかありませんが、一つは、プロジェクトでバリューを出すことに集中し、徹底できる人であることがあるように感じています。戦略ファームのコンサルタントは、誰もがバリューを出すために頑張りますが、ファスト・トラッカーの人は、その徹底ぶりが一段上のレベルにある感じがします。普通のコンサルタントが、ここまでやれば十分バリューが出ていると判断できるレベルでも、納期までにまだ時間があるから、更にもう一段上のレベルのアウトプットが出せるんじゃないかと突き詰めていく姿勢があるのです。
また、バリューを出すためには、時にメンバーに対して厳しい姿勢を示す必要があります。現場メンバーに過剰な負荷がかかることが想定されても、バリューを出すためには頑張らないといけない場面が多々ありますので。
あとは、徹底したクライアント志向があることです。パートナーまで行き着くには、クライアントから最初に相談を持ちかけられる存在である必要があります。どこまでもクライアントの事を考え、コミットしていると思ってもらえない限り、なかなか最初に連絡をしてもらえる存在にはなれないのではないでしょうか。
このように書いて自分で読み直してみると、なんだか当たり前のことしか書いていないようにも思えてくるのですが、お伝えしたかったのは、頭の良さやスキルもあるんですが、それ以上に「姿勢」であるとか「考え方」のほうが、より重要になるんじゃないかなと感じているということです。
(次回につづく)
バックナンバー
- 第60話 広がるポストコンサルの活躍の場
- 第59話 コンサルを使いこなす(その2)
- 第58話 コンサルを使いこなす(その1)
- 第57話 医者の不養生(コンサルタント編)
- 第56話 仮説思考のコツ
- 第55話 経営=サイエンス×アート
- 第54話 他コンサルから戦略コンサルへの転身
- 第53話 ファスト・トラッカー
- 第52話 圧迫面接って必要?
- 第51話 人気のプロジェクト
- 第50話 コンサルタントが改革したい会社...(その2)
- 第49話 コンサルタントが改革したい会社...(その1)
- 第48話 御曹司のコンサル修行
- 第47話 真逆の戦略で攻める!
- 第46話 アンケートの落とし穴
- 第45話 ナチュラルハイ
- 第44話 ホワイトボードを制するものは...(その2)
- 第43話 ホワイトボードを制するものは...(その1)
- 第42話 キー・スライド:究極の1枚
- 第41話 臨界点に達したか?
- 第40話 他人と違うところを探そう
- 第39話 さかなクンにみる差別化戦略
- 第38話 持つべきは信頼できるエージェント(その2)
- 第37話 持つべきは信頼できるエージェント(その1)
- 第36話 コンサルタントと起業家の違い
- 第35話 経営者には鈍感力が必要?
- 第34話 コンサルは経営者へのステップか?
- 第33話 コンサル会社は役に立たない?
- 第32話 罵倒されることでバリューを出す(その2)
- 第31話 罵倒されることでバリューを出す(その1)
- 第30話 なぜコンサル会社を使うのか?(その2)
- 第29話 なぜコンサル会社を使うのか?(その1)
- 第28話 使えるものは使い倒す
- 第27話 上司のマネジメント
- 第26話 自分の勝ちパターンを見つける
- 第25話 英語力はどれくらい必要?
- 第24話 エンジニアとコンサルの関係
- 第23話 コンサルはモラトリアム?
- 第22話 突き抜ける瞬間
- 第21話 コンサルは言いっぱなし?
- 第20話 オープンすぎる職場環境
- 第19話 戦略ファームの入社面接(その2)
- 第18話 戦略ファームの入社面接(その1)
- 第17話 戦略ファームへの入り方(MBA編)
- 第16話 戦略ファームへの入り方(中途編)
- 第15話 戦略ファームへの入り方(新卒編)
- 第14話 ヘッドハンターから声がかかる
- 第13話 よく働くのはどの国か
- 第12話 M系男子は戦略ファーム向き?
- 第11話 在職期間とその後のキャリアについて...
- 第10話 在職期間とその後のキャリアについて...
- 第9話 戦略ファームの社員旅行
- 第8話 アップ・オア・アウト
- 第7話 恋愛における問題解決スキル
- 第6話 コンサルタントは出世魚?(その2)
- 第5話 コンサルタントは出世魚?(その1)
- 第4話 戦略ファームでのワークライフ・バランス
- 第3話 衝撃の初プロジェクト(その2)
- 第2話 衝撃の初プロジェクト(その1)
- 第1話 戦略コンサルの実態を語ります!