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第1240章
2025/11/14

データ活用における新たな潮流

求人ニーズから感じる2025年の潮流

2025年、IT業界における「データ活用」は、新たな局面を迎えていると感じます。
かつてのデータ分析と言えばビッグデータを収集・分析のうえ、意思決定に生かすことが主眼でしたが、今や生成AIがその中心に位置づけられるようになってきました。特にRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索強化生成)によって社内情報も参照して回答を作成する仕組みは、既に実践的な技術となっています。
これまでAIといえば、データサイエンティストや機械学習エンジニアといった専門職の領域でした。しかし、いま進んでいるのは「AIを使う開発」の普及です。
加えて、GitHub Copilot や DEVIN に代表されるように、AIが設計・実装を支援したり、コードを生成したりするケースも増えています。AIが開発を担う時代において、エンジニアは“AIを扱える”ことが強みとなります。AIモデルをゼロから作るだけでなく、サービスや業務アプリケーションにAIを活用できる人材が求められているのです。

生成AIの本格導入:AIを“使う開発者”の時代へ

RAGをはじめとした生成AI技術は、社内のナレッジ検索、FAQ自動応答、ドキュメント要約など、具体的な業務改善に直結する領域で広がりを見せています。これらを実現するには、サーバサイド開発やAPI設計といった従来のソフトウェア開発スキルが欠かせません。つまり、AI専任の職種ではなくても、ソフトウェア開発者がAIを自然に組み込むスキルが標準化しつつあるのです。
転職市場でも「AIを活用したシステム開発経験」を求める求人が増えています。AIやデータ分析に関する高度な知見自体には、依然高い市場価値があります。その一方で、開発エンジニアであれば誰でもAI開発に関わる時代がすぐそこまで来たともいえるでしょう。エンジニアにとって、今後はよりシームレスにAI開発の経験を積みやすくなるはずです。

データガバナンス&プライバシー保護:AI時代の“守り”を設計する

生成AIの導入が広がるにつれて、「データをどう使うのか」「どこまでAIに参照させるのか」といったガバナンスの重要性が高まっています。AIがあらゆる情報を参照し、生成する時代において、企業は「AIがアクセスして良いデータ」「扱ってはならないデータ」等を区分しなければなりません。
また、AIが生成した内容の出典や根拠をどのように説明するかも求められています。国が策定したAI事業者ガイドラインでは、透明性・説明責任・倫理性の確保が強調されており、データガバナンスの設計力は今の時代に求められる新たな注力テーマとなっています。プライバシー保護においては法律的な理解も重要となり、従来よりも高度な知見が求められています。
つまり技術と法務の橋渡しができる人材、「データを安全に活用できるアーキテクト」や「AI倫理・コンプライアンスを理解したエンジニア」は、おそらく今後ニーズが高まって行くはずです。
これまでもデータエンジニアやデータアナリスト等では、データをいかに正しく、合理的に用意するかが求められてきました。そこから更に進み、「どのように安全に使うか」まで含めて設計できる人材が評価される時代に入ったと感じています。

ソブリンクラウド&エッジクラウド:AIを動かす次世代基盤

データ活用を支えるインフラ面でも、大きな変化が起きています。キーワードは「ソブリンクラウド」と「エッジクラウド」です。
ソブリンクラウドとは、データ主権(Sovereignty)を確保するために、自国や特定地域内でデータを保管・運用するクラウドのことです。日本でも国家単位でのクラウド利用ポリシーが整備されつつあり、企業にとっても、法令遵守やデータ主権の観点から保管場所の選定が重要になって来ました。
一方、エッジクラウドは、AI処理をユーザーやデバイスの近くで行う仕組みです。通信遅延を減らし、リアルタイムでデータを処理できるため、自動運転や製造現場などの領域で導入が進んでいます。AIを「現場で動かす」ための基盤として、重要な役割を担っています。
こうした基盤技術の変化により、クラウドエンジニアには単なる構築スキルだけでなく「データ法制を理解した設計」や「分散処理を前提にしたアーキテクチャ設計」といった総合的な知見が求められ始めています。

どの潮流を捉えるか

IT業界の求人に日々触れていると、AI活用・ガバナンス・基盤という3つの領域でそれぞれ変化が起き始めています。AIが広がったことで、攻めと守りを同時に考える設計力が求められるようになりました。ソフトウェアエンジニアにとってAI開発は非常に近い現実的なキャリアになっていますし、データエンジニア、クラウドエンジニアにも新たなニーズが広がっています。
AIを理解し、データを適切に扱い、システム全体の構造を踏まえて設計できる──。その中で、自身がどの領域のスペシャリストを担うか。戦略的にキャリアを検討するのも良いと思います。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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