IT業界職種研究

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第2章:プロジェクトマネージャに必要なスキル

第3回 その他のスキル

知的財産権の知識

ビジネス上、如何なる場合でも、他社あるいは他人の所有する知的財産権を侵害することの無いように注意する必要があります。プロジェクトにおいても同様で、他社あるいは他人の所有する特許と同じアルゴリスムやアイデアと同じものを無断で使用することはできません。

IT関係のプロジェクトで特に注意しなければならないのは下記の5つです。

知的財産権 注意しなければならない点
特許権 プロジェクト内で他社、他人の持つ特許(アイデア)を侵害しないよう注意します。
著作権 他社、他人の著作物、書物を、仕様書やマニュアルの中で無断引用することのないように注意します。
営業秘密 機密性の高いデータ(顧客データなど)を漏洩することのないように注意します
デザイン・意匠 Webサイトのデザインなど他社、他人の所有するデザイン、意匠を模倣することのないように注意します。
商標
商号
他社、他人の所有する商標や商号と同じものをシステム名称等に使用しないようにします。

プロジェクトで新しく生み出されたアルゴリスム、ビジネスモデルなどの斬新なアイデアは、外部に漏れないように秘密にしておくこともできますが、特許申請しておくこともできます。

公知になってしまったアイデアは特許申請しても認められませんので、プロジェクトの成果物として発表する前に、特許申請しなければなりません。特許申請した場合には、1年半後に特許庁から公開され、誰もがそのアイデアの内容を知ることができます。

一方、特許を申請せずに、外部に漏れない様に秘密にしておくことも可能です。実際に、製法を秘密のままにしている、皆さんもよくご存知の清涼飲料があります。

なお、プロジェクトで新しく生み出されたアイデアをもとに製品を開発し、これを販売するような場合には、やはり商標登録するだけでなく、防御の意味でも特許申請をしておくべきでしょう。もし特許申請しておかないと、同じようなアイデアを製品化したり、特許申請をした他者と係争することにもなりかねません。

近年、インターネットの普及とビジネスモデル特許が認められるようになったこととにより、コンピュータを利用したビジネスの仕組みを考案しこれを特許申請している例がたくさんあります。ビジネスモデル特許の非常に怖いところは、業種を問わないところです。たとえばコンピュータを製造販売している会社と弁当を作っている会社が、製品とか製法の特許で争うことはまずありえないことでしたが、ビジネスモデル特許では争うことがありえます。とくにITを使ったシステムを作る場合には同様なビジネスモデルが特許申請されていないかどうかに気をつける必要があります。

以上のような意味で、PMだけでなくシステムを企画する人たちにも知的財産権の基本的な知識は必須です。

メールを使用する機会が多くなってきたこともあり、正確でシンプルな日本語の文章を書くスキルは益々重要となっています。特にPMは、状況を端的に表し報告したり、相手を納得させたり、何かを申し入れたり、人を動かしたりするための文章を書く機会が増えますので、簡潔で分かりやすい文章を書くスキルは欠かせません。

知的財産権の分類 保護対象となるもの 保護するための法律
知
的
創
造
物
発明 斬新な製品、方法のアイデア 特許法
考案 物品の形状・構造・組み合わせに関する考案(小発明) 実用新案法
デザイン・意匠 商品のデザイン、意匠 意匠法
商品の形態 不正競争防止法
営業秘密 顧客情報、製造技術 不正競争防止法
半導体集積回路 半導体集積回路 半導体集積回路の回路配置に関する法律
植物新品種 植物の新品種 種苗法
著作物 著作物(小説、音楽、プログラム、文書など) 著作権法
著作隣接権(演奏者、レコード・CD製作者、放送事業者
営
業
上
の
標
識
商号 会社名称などの商号 商法
商標 商品名称などの登録商標、未登録(周知)商標 不正競争防止法
地理的表示   不正競争防止法
商標法
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律

※黄色の網掛けは、IT関連プロジェクトで特に留意しなければならない事項です。

日本語のスキル

メールを使用する機会が多くなってきたこともあり、正確でシンプルな日本語の文章を書くスキルは益々重要となっています。特にPMは、状況を端的に表し報告したり、相手を納得させたり、何かを申し入れたり、人を動かしたりするための文章を書く機会が増えますので、簡潔で分かりやすい文章を書くスキルは欠かせません。

日本語教育のレベル

残念ながら日本の作文教育は単に書かせるだけで、書いた文章を論評してシンプルで正確な文章に改良させたり、また全体の構成を改良させたりすることは、ほとんど無いようです。同様に、プレゼンテーションの訓練も稀です。

一方、英語圏にはessay writingのように自分の主張したいことを文章にまとめる能力の訓練やプレゼンテーションの訓練が一般に行われています。つまり欧米の文化の中では、自分の言いたいことを相手に分かりやすく説明する能力は、訓練してより改善されるべきだと見なされているのですが、日本では授業でも講習会でも説明が分からないのは生徒や学習者が悪いからで、先生や講師の説明のスキルが問題にされることはほとんどありません。結局、日本語そのものの教育が進歩していません。

シンプルで正確な日本語を書く

シンプルで正確な日本語を書くためには、普段から以下のことに注意すればよいでしょう。

  1. 一文の長さを短くし、平易な日本語を使うこと。
  2. 本当に必要な場合以外は、二重否定や敬語、丁寧語を使わないこと。
  3. 曖昧な言い方を避けること(例えば「〜の限りではない」という曖昧な言い方をしないこと)。
  4. すぐに結論を出せず曖昧な言い方しかできない場合でも、できるだけ具体的に述べること。
  5. 分かりやすい図や表を描き、文章で補うこと。図や表が誤解を招かないよう注意が必要です。
  6. 文章の構成と順序に気を配ること(先に主張を置いて、その後、理由を箇条書きにして述べ、再度、主張を再確認する形式など)。
  7. 箇条書きにして、さらに順序に気をつけて分類したりまとめたりすること。
  8. 数回読み直して、余計な単語、余計な箇所を可能な限り削除すること(削除する勇気が必要)。
  9. 他の人に読んでもらい、意味不明の箇所、間違い等を指摘してもらうこと。

英語のスキル

ご承知のように、欧米の人々だけでなくアジア人とコミュニケーションを取るためにも英語は必須のスキルです。バブル崩壊後、日本経済が低迷に向かうのとは逆に英語の重要性が高まって来ました。しかし、両親が日本人で、日本で育ち、日本で仕事をしている平均的な日本人には英語を読む機会はあったとしても、聞いたり話したり書いたりする機会がほとんどありません。

ところが、今の世の中、外国人と英語でコミュニケーションを取る機会は、ある日突然やって来ます。突然、海外から訪問者が来る、あるいは、海外への出張を命じられる。ヤバイと思っても英語が分からないでは済まされないし、どうしようか・・・と思いあぐねることになります。おまけにPMP(Project Management Professional)の認定試験には英語力は必須ですし、もはやPMという仕事に英語力は不可欠になってきています。

私自身、皆さんにアドバイスができるほど英語のスキルはありませんが、拙い経験の範囲でアドバイスをしてみます。

英語教育のレベル

私が中学1年で最初に英語を習った文章は「I am a boy.」、「This is a pen.」でした。しかし、ちょっと考えれば分かるように、こんな文章を実際に使うことは、まずありません。

私自身、某国立大学の入学試験で満点を取るほど受験英語は得意でしたが、当時の受験英語はまるで西洋文化を必死に取り入れた明治時代のように「難解な英文を知性あふれる日本語に訳して理解する」勉強でした。例えば「There is no way for crying over spilt milk.」を日本語に訳すと「覆水盆に返らず」になると習いました。でも、それは嘘で、この英文は「こぼれたミルクを泣いても無駄だ」ということで、決して「ひっくり返した水は元に戻らない」とは言っていません。

さすがにこの頃に比べると、最近の教科書はNative Speakerがチェック済みの色々な教材が掲載されていますし、実際にNative Speakerの先生も多く、英語教育の質はかなり上がってきています。

リスニングを実践する

リスニングの訓練は最も時間がかかって効果が見えにくいため、日本の英語教育で最も軽んじられてきました。しかし、リスニングに慣れてくるとNatural Speedの英文を理解できるだけでなく、新しい単語を知ることができたり、場面に即した適切な言い方が分かったり、といった副次的効果が期待できます。しかも、毎日少しずつ聴いていると英語の読み方、発音の仕方、しゃべり方が自然と身についてきます。

私の場合、Native SpeakerのNatural Speed Englishのリスニング(と言っても夜寝ながら聴くという1日十数分程度の睡眠学習ですが)を数年続けています。初めの5ヶ月間くらいは何を言っているのか全く分からない状態で、「こりゃ幾らやってもダメだ、素質が無いからもう止めよう」と考えたりもしましたが、5ヶ月目の後半くらいから次第に一つ一つの単語が明確に聞こえるようになってきました。

毎日英語に触れる

今や、空前の英語ブームで英語学校は大流行、CDやカセットテープなどの教材は至るところで販売されています。でも、どんな教材を使用したとしても、1週間に1回だけの勉強では上達は望めません。毎日何らかの形で英語に触れることが大切です。特にリスニングではNatural Speed Englishを聴くことが大切ですが、AFNやCNNのように立て板に水を流すようなものもあれば、複数人の会話形式もあれば、一部の学習教材のようにNatural Speedだけれども文章の後にブランクを入れたものもあります。いろんな種類のものを聴くと、飽きることなく次第に慣れていきます。

英語を英語のまま理解する

Appleならばリンゴのイメージを思い浮かべることができ、「I like an apple.」は英語のままで理解することができます。ところが、「He suffers from depression.」という文章の「depression(鬱)」を英語のまま理解できるのは、おそらく既に英語に不自由していない人だけでしょう。

では「英語のまま理解する」とはどういうことなのでしょうか? 結局、英語の文章を構成するワードの順番を変えずに、リーディングでもリスニングでも、そのままの順番で理解しろ、ということなのです。「I like an apple.」ならば「私、好き、一個の、リンゴ」、「He suffers from depression.」ならば「彼、患う、鬱病」と理解しろ、ということです。慣れてくれば、英語のワードを聞いた瞬間に日本語やイメージが浮かび、ワード単位で意味が頭の中で展開されていくはずです。

ライティングを実践する

英語を書くことは、最初はかなり骨の折れる作業です。本来言語は生活に密着しているものですが、英語は我々日本人の日本での生活に密着しようがありませんので、実感が湧かないのは当然です。しかし一年くらい続けていると、次第に実感を持つことができるようになり苦にならなくなってきます。特にPen Palを作って英語でメールのやり取りをすると、効果は絶大です。

また、Essay Writingの練習は非常に効果があります。

※Essay Writingは、効果的に主張したいことを伝えるための文章形式で、一般的には「先頭のパラグラフで一般論(General)から入ってSpecificな主題にたどり着き、主題をサポートする理由を3パラグラフほど並べ、最後のパラグラフで主題を繰り返して一般論(General)に抜ける」という形式になっています。

英語で独り言を言う

たとえば自転車での通勤途上など一人でいるときに英語で独り言を言っていると、次第に自由に英語で表現できるようになってきます。喋る内容は、道で見たものや人を英語で表現したり、誰かに書いた英文メールを反芻したり、自分自身の自己紹介でも生い立ちでも何でも自由です。最初はなかなか思うように行かず苦しい思いをしますが、慣れてくると楽しくすらなってきます。独り言は誰が聞いているわけでもなく間違いがあれば何度でも言い直しができますから、練習効果は抜群です。

まとめ

担当するプロジェクトによっても顧客によっても、PMに要求されるスキルは様々ですし、昨今のIT技術の多様化によって、要求されるスキルも多様化しています。PMは、プロジェクトのニーズや状況に敏感に反応し、カメレオンのように臨機応変に対応できなければなりません。

これで今回のお話を終わります。次回は、皆さんが日々の仕事をこなしながらどうやってキャリアアップしていけば、優秀なPMになれるのか、についてお話します。

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