心理学から学ぶ新・仕事術

現代に生きるビジネスパーソンへ。心理学からアプローチした仕事術をお伝えします。

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第8話

長時間労働を減らすために私達ができること

— 限られた時間の中でどう進めるか —

正社員の長時間労働

正社員の会社や仕事に対する不満の1つに「長時間労働」があります。諸外国と比較して日本人正社員の労働時間が長いことはどこかでお聞きになったことがあるでしょう。正社員の特徴は「いつでも(残業になっても)」「どこでも(どんな勤務地でも)」「なんでも(どんな仕事内容でも)」という会社からの3つの指示に対応することで、雇用され続け、仕事上必要な能力を獲得することにあると言われています。つまり、いわゆる正社員は会社側から求められれば残業することが前提となっているのです。

長時間労働がもたらす問題点

長くなりがちな労働時間にはどのような問題点があるのでしょうか。最も重大な問題点は、長時間労働は心身の健康に対して悪影響を及ぼすことです。ですがそこまでいかなくても慢性的な疲労による仕事に対する意欲の低下、ミスの発生、ギスギスした職場など様々な問題点があります。

労働時間は何故短くならない

「長時間労働は問題だ!」ということは以前から指摘されていることです。それにも関わらず、何故労働時間は短くならないのでしょうか。そもそも日本の職場は、ある程度の残業を見込んだ上で職場に人員配置していると言われています。働き手から見れば、残業しないと終わらないほどの仕事量が恒常的にあるので、恒常的に残業せざるを得ないということです。

他にも、自分だけ帰りにくい職場の雰囲気もあるでしょう。たとえ自分の仕事が終わっても、まだ他の人が仕事しているのに帰りにくく、結果として会社にいる時間が長くなるといったことです。

長時間労働が持つ魅力

今挙げた理由は、働く私達1人1人には対処が難しい理由です。一方で、私達自身が自ら積極的に長時間労働を作り出している部分もあります。

最近の傾向として、「できる人に仕事が集中する」ことがあります。「できる人には仕事が集中するので長時間働かざるをえない=長時間働く人は仕事ができる人」という図式が出来上がり、長時間働く人への賞賛から長時間労働を良いこととする価値観を、私達は知らず知らずのうちに身につけてしまいがちです。「長い時間をかけた方が良い成果につながる」という価値観も同様です。

仕事が楽しくて長時間働くことが全く苦にならないという人もいるでしょう。楽しいことはできるだけ長くしていたいものです。また、残業代という金銭的な部分に魅力を感じている人もいるでしょう。

労働時間は短縮できるのか

働く私達は長時間労働の短縮に対して何ができるでしょうか。長時間労働は会社の仕組みという私達には手が出せない部分によっても発生しますが、私たち自身が発生させている部分もあります。まずはその部分から着手して、労働時間の短縮を図りましょう。

時間の使い方を意識する

ある会社では19時半になると「あと○分でPCがシャットダウンします」というメッセージがPC画面上に表示され、20時になると全社のPCがシャットダウンされます。その後は、立ち上げて直しても5分毎に自動的にシャットダウンされるそうです。そのため社員は、20時までに仕事を終了させるためにはどうするかという意識で仕事を進めるそうです。

この例は会社側の取組みですが、自分自身でも「今日は何が何でも○時までに」と決めて段取りを組むことはできます。ともすれば、時間は無限と考えてしまいがちですが、限られた時間の中でどう進めるかという意識を今より強く持つことは、今の労働時間を短くする第一歩となります。

労働時間と成果の関係性を再検討する

仕事ができる人は長く働いているから仕事ができるのでしょうか。時間をかけたから成果が上がるのでしょうか。仕事ができる人は、「知識があるから」「顧客からニーズを引き出すのがうまいから」仕事ができるのでしょう。かけた時間が成果に繋がるのは、何度も修正をして案をブラッシュアップした結果でしょう。もちろん、案の修正やブラッシュアップには時間は必要です。ですが時間をかければよりブラッシュアップされるわけではありません。成功例から何かを学ぼうとする時、学ぶべき行動を間違うと誤った方向に走ってしまいます。

「長時間労働=優秀な人=良い成果」というもっともらしい関係性を、改めて見直し、成果を上げている人のどの行動が成果につながり、その人の具体的などの行動が優秀さの源泉なのかを、労働時間とは違う視点で捉えてみましょう。

まとめ

  • 日本の正社員の労働時間はまだまだ長く、健康状態を悪化させるなど問題を引き起こす。
  • 長時間労働は、私達ではどうでもできない側面があるが、一方で自ら進んで長時間労働をしている側面もある。
  • 時間の使い方や労働時間と成果の関係性を見直し、「時間をかける」ではない成果を上げ方を身につけよう。

筆者プロフィール

坂爪 洋美
坂爪 洋美
法政大学キャリアデザイン学部 教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 経営学博士。専門は産業・組織心理学ならびに人材マネジメント。主要な著書は『キャリア・オリエンテーション』(白桃書房、2008年)等。
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