ケンゾウの戦略コンサル物語

戦略コンサルタントの仕事やふだん考えていることなど、戦略コンサルタントの実態をありのまま綴ったコラム

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筆者プロフィール

ケンゾウ
大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第58話

コンサルを使いこなす(その1)

コンサルは上手く使う必要がある

こんにちは、ケンゾウです。皆さん、米国系の戦略ファームが日本に進出してきたのって、いつ頃からなのかご存じですか?早いところで1960年代から1970年代にかけて東京オフィスを設立していますので、実は日本に進出して既にかなりの年月が経過しているんです。そのため、戦略ファームのクライアントには、日本の主要企業が数多く並んでいるような状況になってきています。

その一方で、実際にプロジェクトをやってみると、クライアントの中でも、我々のような外部コンサルタントとの仕事に慣れている方とそうでない方がいらっしゃることに気付きます。それもあってか、言葉は良くないかもしれませんが、コンサルタントを上手に使っているクライアントとそうでないところがあるなあということを感じていました。そこで今日は、いつもと視点を変えて、クライアントの目線でコンサルをどう使っていくべきかについて書いてみたいと思います。

それではまず、コンサルを上手く使うとはどういうことでしょうか?一言でいうなら「コンサルティングの成果を実際の事業に反映させていく」ことだと考えています。つまり、コンサルティング結果を反映して、クライアント企業で何らかの施策が動き出す。その結果として、最終的にクライアントのPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー)の数字が改善するということです。

こう書くと当たり前に聞こえるかもしれませんが、実際には、プロジェクトの成果がクライアントの成果に直接的に結びつかないケースが存在するのです。「コンサルティング会社が作成した分厚い報告書が残されたが、結局何も変わらなかった」という話や「コンサルタントが、理屈はキレイだが現実的でない提言をしてきた」という話がときおり語られていると思いますが、そういった状況が起こり得るということです。

これらのことは、もちろんコンサルタント側にも改善すべき点があると思いますが、一方で、クライアントがコンサルタントを上手く使いこなせるようになることで回避できる部分もかなりあるのではないかと感じています。これはITシステムの導入にも似ていて、上手く使いこなせば非常に大きな成果を生むことが出来る一方で、導入に失敗すると使えないシステムが残され、数億円をドブに捨てることにもなりかねないのと似ています。

コンサルを上手く使うには

私がこれまでコンサルティングの仕事を通じて、コンサルタントを上手く使っているなあと感じるクライアントには、以下の2つの共通点がありました。

(1) コンサルタントが何を出来るかを理解している
(2) プロジェクトのオーナーシップをクライアント側が握っている

逆に言うと、上記の2つが欠如している状況では、プロジェクトが上手くいかない(正確に言うと、プロジェクトは成功裡に終了しても、結果的に提言内容がクライアント側で実行されない)ことが多かったと思いますので、上記についてもう少し説明したいと思います。

先ずは(1)についてですが、これは単純に、戦略ファームと一緒に仕事をするのが初めてという場合に起こりえる話です。端的にいうと、何をやってくれるのかイメージが湧いていない、又は誤解がある状態です。このままの状態でプロジェクトをスタートすると「高いフィーを払っているのに何なんだ?」という話になりかねません。これは、戦略ファームが作成したプロジェクトの報告書を一度でも見てもらえれば、かなりイメージが湧くと思うので、こういった行き違いを防ぐことが出来ると思うのですが、残念ながら他のクライアント向けに作った報告書をお見せするわけにもいきません。

そのため、戦略ファームと初めてプロジェクトを行う場合は、プロジェクト開始前に入念なすり合わせをしておくことをお勧めします。提案段階で、自分たちが解決したい課題をコンサルタントに可能な限りブレイクダウンしもらい、何を成果物と定義するかを明確にするとか、プロジェクトのアウトプットイメージ(例)を提示してもらい、どんなレベル感で作業を進めてもらえるかのイメージを持つことが大切です。

そして、これらの作業は、クライアント側の発注者(通常は役員)とコンサルタントだけで進めるよりも、可能な限り早い段階で、クライアント側の現場のプロジェクトリーダーにアサイン予定の方(部長クラスが多い)も巻き込んだ方が良いでしょう。戦略ファームと初めて実施するプロジェクトでは、発注者である役員とプロジェクトの現場リーダーとなる部長で、期待するアウトプットに大きなズレがあるというのも、よくあることなのです。

また、最初からフルスコープでプロジェクトを開始するのではなく、先ずは小さなプロジェクトで開始して、そのアウトプットに満足いけば続きの部分を実行するように契約を分けるのも、リクスを減らす意味で有効でしょう。いずれにせよ、お互いの期待値にズレが生じないように、プロジェクト開始前後でエネルギーを使うことを惜しまずに丁寧に進めるのが良いと思います。

上記「(2) プロジェクトのオーナーシップをクライアント側が握っている」については、次回のコラムで説明します。実はこの(2)こそが、プロジェクトを成功させる上で最も重要なポイントだと考えています。

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