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第943章
2019/12/20

IT業界で食っていけるフリーランス、ジリ貧のフリーランス(第七回)

これまで六回にわたり、食っていけるフリーランスはどういう人なのか、ジリ貧のフリーランスになるのはどういう人なのか、どうすれば食っていけるフリーランスになれるのか、どうすればジリ貧のフリーランスにならないようにできるのか、といったことをお伝えしてきました。

今回は、これまでの話をまとめるとともに、こういう誘い文句に騙されてはいけない、という話をして、一連のコラムを終えたいと思います。

これまでのまとめ

【第一回】フリーランス市場のいま

第一回では、フリーランス市場について語るにあたり、歴史的背景から今に至るまでの働き方の変遷を振り返りました。

まず、家内制手工業というフリーランスの働き方に近い時代があり、その後、産業革命が起こって工場制機械工業の時代、すなわち会社員として働く時代が到来しました。そして、長らく会社員として働くのが当たり前という時代が続き、その時代にはフリーランスという選択肢を選び辛かったものの、近年は多様な働き方が選べ、副業解禁もさかんに行われるようなハイブリッドな時代になりました。

このような働き方の変遷を経て、フリーランスとして生きていける風潮と環境がようやく整い、フリーランスという生き方を選べる時代となったわけですが、フリーランスが絶対に良いわけではない、ということもお伝えしました。

【第二回】食っていけるフリーランス

第二回では、まず食っていけるフリーランスはどういう人なのか、という話をしました。端的にいえば、会社員としてもフリーランスとしても、どちらの立場でも生きていける人が、フリーランスとして食っていける人材といえます。

そして、そもそもフリーランスになるのに会社員の立場に戻るという選択肢があるのか?という疑問をお持ちになると考え、一度フリーランスになった方がまた会社員に戻りたいと思う典型的なシチュエーションを列挙しました。

会社員に戻りたい、と考える一番のきっかけは、ライフステージの変化です。結婚、出産、進学、不動産購入といった、収入の安定と社会的信用が求められるタイミングです。独身であったときは問題にならなかった働き方が、自分だけの人生でなくなったときに問題になるわけです。配偶者やそのご両親などの圧力もかかり、自らも将来への危機感を覚え、フリーランスを辞めざるを得なくなります。

続いて、体力的限界があります。自分の身体が動かなくなると即収入が減るという働き方は、若いうちは無理がきくので余り大きな問題にはならないのですが、年齢が高くなるにつれて体力が落ち、病気への抵抗力も衰えていくため、辛くなってきます。チームで仕事をする環境や、有給休暇などが使える環境を求めて会社員に戻りたくなります。

そして、金銭的限界やモチベーションの限界があります。フリーランスの仕事は、ともすると同一の仕事を繰り返すことになるため、ある時期になると単価が上がり辛くなり、仕事のモチベーションも下がっていきます。仕事の内容に広がりがあり、年収もある程度上がっていく会社員という立場がだんだん羨ましくなってきます。

そのため、フリーランスからいざ会社員に戻りたいとなったときに戻れるように、意図的にキャリアを作るべき、というお話しをしてこの章を終えています。

【第三回、第四回】ジリ貧のフリーランス

第三回第四回では、まずは成功するフリーランスの方について言及しました。成功するフリーランスの方は、会社員としての素地を残しており、一定の素養、ビジネスマナー、ビジネススキルを持っています。

発注者たる企業としては、そういったフリーランスの方には、話がしやすい、頼りになる、といった印象を持つため、様々な仕事を任せるようになりますし、場合によっては自社に入社してよ、という話をしたりもします。この様な方が、フリーランスとしても会社員としてもどちらでも生きていくことができ、結果としてフリーランスとして大成する人と言えます。

一方、ジリ貧のフリーランスは、素養に乏しく、ビジネスマナーやビジネススキル的にも厳しく、会社員に戻ることができない方と言えます。そのような方は仕事も広がっていかない傾向にあるため、フリーランスとしても、どこかで限界が来てしまいます。そして、どういう方がそのようになってしまうのか、その理由を列挙しました。

まずは、組織適性です。会社員として組織に所属していると、時に我慢が必要となります。ただ、フリーランスとして長く働いていると、我が儘な性格になってしまう方が多いため、そのような方は会社員としての組織適性がないと見做されてしまいます。

また、次に多いのは経験不足です。フリーランスの方は、会社員と違って様々なところで働く人であり、何かあったときにも責任を取ることができないため、責任ある仕事を任され難いです。若手の方であればそれほど問題にはならないのですが、年齢が上がるほど年齢相応の責任のある仕事をしているかを見られるため、ミドル以上のフリーランスの方は、年齢と経験のバランスが悪い=責任のある仕事の経験が不足している、と判断されがちです。

その他、お金に非常にうるさい、視野や視点が狭い、管理者としての経験が浅い、一般常識がない(特に若手の方に多い)、組織の成果に対する意識が低い、なども理由としてあります。これらもまとめてしまえば組織適性がない=会社員適性がない、ということであり、こういった方は会社員に戻ることができなくなってしまいます。

【第五回、第六回】どうすれば食っていけるフリーランスになれるか

第三回と第四回ではフリーランスのリスクをお伝えしましたが、第五回第六回では、それらのリスクを踏まえつつ、どうすれば食っていけるフリーランスになれるかを、フリーランスになる前とフリーランスになった後の両方の観点でお伝えしました。

まず、フリーランスになる前に、一通り何かを一人でできるようになることをお勧めしました。フリーランスになると、それまでの経験ベースで仕事を貰うことが多いため、できるだけ会社員時代にできることを増やしておくことが肝要です。

また、会社員としての基礎を身に着けることや、組織をリードするといった経験もしておくとより良いですし、できれば「おっ」と思われる企業に一度は在籍しておいたほうが箔がつき、フリーランスとしての信用度が増すということも実際問題としてはある、といったこともお伝えしました。

そして、フリーランスになってからの話として、楽な仕事ではなくキャリア的に良い仕事を選ぶこと、作業者で満足するのではなくプロ意識を持って仕事にあたること、誰も教育をしてくれないため自分で自分を教育すること、この3点を実行して頂きたいというお話しをしました。

以上、第一回から第六回までを振り返りました。

こんな誘いに騙されてはいけない

最後に、フリーランスを目指すにあたり、こういう誘いに騙されてはいけないということをいくつかお伝えして、当コラムを締めたいと思います。

① 一旦フリーランスで契約するけど、いずれ正社員にするよ

これは、派遣先に誘われるケースとして最近増えている話です。派遣先と派遣元の間の契約には、一般的には引き抜き禁止の条項があります。ただ、引き抜き禁止の条項には期限が設けられており、契約が切れてから半年から1年程度が経てば雇用してもいい、というものがほとんどです。

そのため、一旦派遣元の会社との契約を終了させてフリーランスになって貰い、フリーランスになってからの期間が引き抜き禁止の条項で制限がかかっている期間を超えたら、正式に採用するからそれまで待っててね、ということで「一旦フリーランスで契約するけど、いずれ正社員にするよ」という話を出してきます。もちろん、その通りになる例もありますが、実際はそうならなかった、という話も後を絶ちません。

そもそも、本当はフリーランスにならなくても済む方法があります。例えば、採用したい方との派遣契約を一旦打ち切り、派遣元である現職に残って別のプロジェクトで働いて貰い、制限期間を終えたら改めて採用する、という方法があります。実際、私の元同僚もこの方法で転職をしていました。また、本当に欲しい人材ならば、派遣先が派遣元と協議することも可能であり、結果、堂々と転職することも可能なのです。

ただ、正直なところ、それらはいずれも面倒くさい方法です。前者については、企業としてはプロジェクトから離れている間の交代要員を用意するのが面倒ですし、後者についても、制限があるものをわざわざ破ることになりますので、協議の難航が容易に想像されます。それらの面倒なことを回避できる方法が、一旦現職を退職して貰い、フリーランスになって貰うことなのです。

フリーランスになって貰うことは、企業にとって更にいくつかのメリットがあります。

まず、この人は正社員として抱える価値があるか?という判断を先延ばしにすることができるという点です。派遣で来てくれる分には問題はなくても、正社員として通用するかどうかは、正社員になる前提で仕事を任せてみないと分かりません。十分な力があると分かればそれでよし、そうでないなら正社員にしなければよい、という判断をすることができます。

また、パワーバランスを考えると、交渉事は圧倒的に企業の方が有利になります。フリーランスの方は後ろ盾がなくなってしまうため、自分で企業と交渉をせざるを得ないのですが、企業というのはその手の交渉に長けた人材がいるもので、なかなか対等に交渉を進めることができません。正社員になれる、というニンジンをぶら下げられた状況であればなおさらで、「社内調整がうまくいっていないのでもう少し待って」と言われ続けても、下手なことを言って正社員の話が白紙になることは避けたいため、黙って待たざるを得なくなります。結果、そのような宙ぶらりんの状況が何年も続く、ということは、意外に世の中ざらにあります。

そのため、フリーランスになるならば、覚悟を決めてフリーランスになることです。フリーランスになった瞬間に顧客がいるというのは大変良いことで、フリーランスになる際にはむしろ必須の条件ともいえる状況なのですが、その顧客に縛られていると良いようにやられてしまいます。「自分はフリーランスなので、求められるところにいつでもいける、ただ、いまは良好な関係を築けていて仕事も分かるから、御社の仕事をするんですよ」、そのようなスタンスで対等に交渉し、正社員になれればラッキーだけど、そうでなくても問題ない、そう覚悟を決めてからフリーランスになって頂きたいと思います。

② フリーランスで年収UP!

第四回でお伝えした通り、フリーランスになると見た目の年収がUPします。大体平均的には1.4~1.5倍になるため、例えば年収400万円の方であれば600万円前後、500万の方であれば750万前後となる計算です。会社員として働いていては考えられない、驚くべき年収UPです。

ただ、会社員時代には会社が肩代わりして払ってくれていた健康保険や年金保険などの社会保険料を自分で払う必要がありますし、体調不良等で休んでも、有給休暇という便利なものが使えませんので、その際は単純に収入が減ってしまいます。

また、会社員時代には厚生年金に加入でき、その費用の半分を会社が負担してくれていたのですが、国民年金に切り替わり、厚生年金もその会社補助もなくなるため、将来受け取れる年金は激減します。更に、雇用保険にも加入していない状態になるため、契約を突然打ち切られて無職になったとしても、無職期間を金銭保証してくれるところはありません。

手持ち現金は増えているものの、将来の自分の資産を先に現金化していたり、リスク分を現金として得ていたりするだけですので、手取りが増えたと手放しで喜んでいてはいけないのです。

フリーランスは自由度が高い働き方といわれており、確かに仕事面ではその通りなのですが、自分自身の人生を保証するための努力が別途必要になります。なんでも自由にしているとあとで痛い目を見てしまいますので、フリーランスになるなら、年収がUPしたとしても、自らの人生を守るために、その年収をどう配分していくかをきちんと事前に検討したうえでなって頂きたいと思いますし、その分の収入を得られる案件を選んで頂きたいと思います。

③ あなたらしい働き方を!

フリーランスの醍醐味は、やはり自分の希望する働き方や仕事を選ぶことができる点にあります。私自身、会社に所属しているためフリーランスではありませんが、これまで在籍していた会社に比べ、いまはとても自由度の高い働き方ができており、自分としても家族としても満足度の高い生き方ができています。

自由度の高い働き方は、生活も仕事も充実したものにする可能性を広げます。多様なスタイルでの働き方が認められつつあるいま、自分らしい働き方はぜひして頂きたいと思っています。

一方で、自分らしい生き方を考えるとき、いまだけを見てはいけません。どうしても「働き方がフレキシブルで、自分ができることで、それでいて高単価なお仕事」を選択してしまいがちなのですが、それはこれまでも述べてきた通り近視眼的です。いま自分らしい生き方をしていたとしても、5年後や10年後に生き生きと働けていないとしたら、それは自分らしい働き方とはいえないと思います。

自分らしい働き方とは、自分らしい生き方と言い換えることができます。そして、自分らしい生き方を考えるためには、自分らしいキャリアを定義する必要があります。今だけでなく、将来にわたってどのように生きていきたいか、そのためにどのように働いていきたいか、そのためにいまどういう仕事をするべきか。そういったことまで思いを馳せたうえで、「自分らしい働き方」を選択して頂ければと思います。

なお、最近は上記のようなフリーランスの方の懸念を払しょくしてくれるようなサービスを提供している企業も増えてきましたので、フリーランスを検討される場合は、そういったところに相談してみて頂ければと思います。

また、この記事を読んで、フリーランスになろうか、それとも転職をしようかを迷われた場合は、ご相談に乗りますのでお気軽にお問い合わせください。

いずれにしても、会社が生き方を提供し、それに乗っかればいい時代は終わりました。自分にとってどのような働き方がいいのか、ご自身なりの考えを持ち、ご自身の人生を選んで頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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