COLUMN
コラム:転職の技術
  1. IT転職リーベル ホーム
  2. コラム:転職の技術
  3. Web系企業を目指す業務系SEに希望はあるのか
第858章
2018/08/31

Web系企業を目指す業務系SEに希望はあるのか

— 自己研鑽なくして転職成功なし —

エンジニアにとって幸せな時代がやってきた

私が学生のころは、まだ教育機関や一部の人にしか使われていなかったインターネットが、20年以上を経たいま、我々の生活に欠かせないものとなりました。当時、専門家や書籍などからしか得られなかった情報も、いまや手元のスマホを使えば瞬時に得ることができる時代になっています。

IT技術についても、私が就職した当時はまだまだインターネットよりは書籍を中心とする学習が主流でした。知識については、情報処理試験の勉強をしたり専門書を購入して熟読したり。技術力については、雑誌に付いているCD-ROMを使って自宅のPCに環境を構築し、サンプルコードを見ながらアプリケーションを自作したものです。

それがいまや、初心者でも始められるプログラミング練習サイトが生まれ、専門性の高い情報もTechブログという形でたくさん公開されています。ネットから繋がりが発生し、会社という枠を超えた勉強会も各地で活発に開催されています。

ほぼ独学に近い形で、狭いコミュニティの中でしか学習できなかった当時に比べると、成長意欲の高いエンジニアがスキルアップする環境は劇的に良くなっています。エンジニアにとって本当に幸せな時代が到来したなと思っています。

自己研鑽をしなければ悪

一方、一部の方にとっては、厳しい時代が到来したという見方もあります。

エンジニアを中途採用する企業が、「自己研鑽をしているか」を採用基準に含めだしているからです。

現在、新卒でWeb系と言われる企業に入る方々の多くが、大学や大学院で情報処理を学び、技術が好きで、自発的に新しい言語を使ってみたり、アプリケーションを自作したりしています。

私が学生だったころはまだWeb系企業も黎明期であり、ITバックグラウンドがない方もたくさん採用されていましたが、いまから10年くらい前からITリテラシーの高い新卒社員の採用が活発になり、現在はその方々がWeb系企業の中核となって働き、中途採用の面接をするようになってきています。

エンジニアにとっていくらでも自己研鑽できるこの時代に、もともと自発的に学ぶ人たちが面接官になったいま、当然ながら彼らは転職希望者にも自己研鑽を求めます。それも、自己研鑽はやっていて当たり前、どういう自己研鑽をしているのか、その内容まで見られます。

つまり、時代は既に「自己研鑽をしていればプラス」ではなく「自己研鑽はしていて当たり前、やっていなければ悪」となってしまっているのです。

業務系SEがWeb系企業への転職に苦労するわけ

これは、新卒でSIerに入社し、業務系システムの開発にまじめに取り組んできた方にとっては非常に厳しい話です。

私も新卒でSIerに入社したので分かるのですが、SIerが開発を担当するシステムは、いまでもやはり業務系と呼ばれるものが多数を占めます。

そして、業務系SEの成長として評価されるのは、高い技術力や幅広い技術知見より、業務知識やマネジメント力などとなります。

そのため、情報処理試験の勉強はしつつも、会計やサプライチェーンなどの業務知識を学んだり、マネジメントを学んだり、英語力を高めたりすることが、真っ当な自己研鑽とみなされます。

私がSIerに在籍していたころ、私のように技術力を高めようという同僚は稀でしたが、恐らく割合的には、いまでもSIerでは業務やマネジメントの知識獲得に勤しむ方が大半と思われます。

そういった業務系SEの方々が、いまWeb系企業に転職をしたがっています。使っている技術が古く、技術よりもマネジメントが求められ、いち顧客の業務という狭い範囲で使われるITにしか関われず、そもそも受託開発なのでサービス企画などもできない、だから、Web系企業にいきたい、という方が、この空前の売り手市場という状況もあいまって、非常に多くなってきています。

ただ、もうお気づきと思いますが、その際にネックになるのが自己研鑽です。業務系SEも前述の通り自己研鑽はしているのですが、その方向性がWeb系企業で求められる自己研鑽とは異なるのです。そのため、業務系SEがWeb系企業への転職にチャレンジする際、自己研鑽の種類や質がネックとなり、なかなか転職先が決まらない、ということになるわけです。

近年、特にこの自己研鑽のWeb系企業と業務系SEの認識のギャップが大きくなってきており、Web系企業に移りたいと思っている業務系SEの方にとっては危機的な状況になっていると言わざるを得ません。

Web系を目指す業務系SEに希望はあるのか

では、業務系SEである自分はWeb系企業に転職することはできないのか?と思われた方もいるのではないでしょうか。

もちろん限度はありますが、ジュニアクラス~ミドルクラスの方であれば希望はあります。そして、いますぐWeb系企業の方々がやっている自己研鑽を開始することです。

いまの時代、Web上でコーディング練習ができるサービスがたくさんありますから、まずはそういったサービスに登録し、問題を解いていくところからスタートしてください。

また、ある言語でのコーディングに慣れたら、ほかの言語も試してみましょう。Web系企業でエンジニアが扱う技術は多岐にわたりますし、これまで日本では余り実績がない技術を扱うことがSIerに比べて多い傾向にあります。

いくつかの言語を扱えること、新しい言語でも時間をかけずに習得できることが、Web系企業で生きていくための必須スキルと言えます。

そして、いくつかの言語が扱えるようになったら、アプリケーションを自作したり、学習した技術を本業の中で採用して実装したりしてみましょう。Web系企業では、単にコードを書いたことがあるだけでは評価されません。その技術を使って何かを作ることや、実務にフィードバックすることができて初めて意味のある自己研鑽と評価されます。

更に、もし余力があれば、自分で環境を作ったり改造したりしてみましょう。最近のWeb系企業では、開発環境を作ることはもちろん、スピーディーに環境の生成・廃棄をする仕組みや、開発効率を上げるための仕組みを、エンジニアたちが自ら構築しています。

ここまでくるとかなりのレベルのため、あくまで余力があれば、ではありますが、転職を急いでいないのであれば、ここまでやっておくのがベストです。

実際、Web系企業への転職を実現できている業務系SEの方は、前述のいずれかの自己研鑽を経ている方が多い印象です。私がご支援した方の中には、1年~3年かけてじっくりとプロダクトを自作し、それからWeb系企業への転職を成功させた方が何人もいらっしゃいます。

ここまでやらなければならないのか、大変だな、という思いをお持ちになった方もおられるかも知れませんが、長い人生のうちたった数年頑張るだけで、その後の人生を大きく転換させることができます。そのため、この努力を億劫と思わずに、Web系企業が認める自己研鑽を、いまから始めて頂ければと思います。

なお、そうはいっても時間がないよ、という方もおられると思います。そういう方については、一足飛びにWeb系企業にいくのではなく、Web系企業を顧客としているSIerに転職するという道もあります。そこで数年修行すればWeb系企業の開発の仕方や技術に慣れてきますし、そういった企業ではSIerであっても技術系の自己研鑽をしている方々が周りにいて刺激を受けることができ、自然とWeb系企業の自己研鑽も習慣として身に着きます。

要は、Web系企業が求める技術経験と自己研鑽の習慣を身に着けておけばよいので、時間がある方は時間をかけて自己研鑽を、時間が無い方はWeb系企業のシステム開発ができるSIerへの転職をお考え頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績

関連記事

注目のキーワード: