COLUMN
コラム:転職の技術
第776章
2016/12/16

己を知るものは強い

— 等身大の自分で未来を切り拓け —

自分自身をよく知ること

先日、ご支援していた方が、ある企業の内定を勝ち取りました。
その方は、新卒時はITではない企業に入られた方です。ある時、手に職をつけたいと考え、一念発起してIT業界に飛び込まれました。IT業界での1社目はヘルプデスク、2社目はインフラの運用監視、3社目では運用のリーダー、プロジェクトマネージャーにまでなりました。転職により確実にステップアップをしてきておられます。

そして今回、インフラ業界でも最高峰クラスの企業から内定を得て、転職することになりました。次は、導入経験や技術経験ができるポジションであり、今回もステップアップとなる転職になっています。

通常、この方のご経験では、導入案件の多いこの企業に入ることは困難です。それでも内定を勝ち取れたのには理由があります。それは、自分自身のことをよく知っていた事だと考えています。

強みと弱みを正確に把握していた

まず、この方の良かったところは、ご自身の強みと弱みを正確に把握していたことにあります。

強みとしては、プロジェクトマネージャーの経験や運用設計の経験でした。多くのメンバーを率いておられたことや、運用といっても運用作業をひたすらしていたわけではなく、運用改善や業務設計をしてこられていました。

弱みとしては、技術経験と導入プロジェクトの経験が少ない点でした。結構、この弱みを隠そうとする人が多いのですが、この方は見栄を張ることなく話をして下さいました。

何が良かったかといえば、エージェントとして適切な提案ができたことと、企業側も変な期待をせずに検討ができたことです。強みと弱みが正確に分からないと、求人のご提案のピントがずれてしまいますし、選考に進んでも、企業側の期待に満たないという理由で面接で落ちてしまいます。正直かつ正確に強みと弱みをお話し頂けたことが、アンマッチの防止に繋がりました。

現実的なキャリアを知っていた

次に、自分がやりたいことをどうやって成し遂げるかについて、現実的なキャリアイメージを持っておられたところも良い点でした。

転職後は、技術に触れる・構築に関わる、の2つを成し遂げたいとお考えでしたが、それをいきなり出来るとは思わず、あくまで中途採用は即戦力採用であること、年齢が高めの自分の場合はより高い即戦力性が求められることを自覚しておられました。

そして、転職直後は、まずは運用側のPMで活躍したい、その中で技術を獲得し、将来的に導入側に関わりたいという、自分自身のバックグラウンドを踏まえた上での現実的なキャリアイメージをお持ちでした。

この冷静な判断に基づくキャリアイメージが今回企業より評価されました。技術はまだまだだけど、この人なら地に足をつけて成長していけるだろうと判断して頂けました。

等身大の自分を見せることが結局自分のためになる

転職活動では、少しでもいい立場で働きたいと思う余り、等身大の自分よりも自分を大きく見せがちです。それでたまたま内定・入社となる例もあるため、つい自分もと思う気持ちも良く分かります。

ただ、企業の面接官は多くの候補者に会ってきており、会ってきた人が多い方ほど、等身大でない方に違和感を覚え、鋭く突っ込んで聞いてきます。そこで経験を大げさに言っていたことがばれると、この人は信用できない人だと見なされてしまい、他の経験がいくら良くても選考に通過することが難しくなります。

もちろん、面接はアピールをしなければならないため、謙虚過ぎるのは良くありません。自分は雇う価値があるということを分かって貰うためには、それ相応の言い回しは必要です。ただ、その時も、事実を如何に伝えるかがポイントであって、経験していないことをさも経験したかの様に言ってはいけません。

お互いのニーズが合致するかどうかをお互いが確かめ合うのが面接です。己を知り、できることとできないことを冷静に認識した上で、変な齟齬の無いように、きちんと自らについて話をしてください。そうすることで、ご自身にとって最もよい未来を切り拓くことができると思います。

なお、仮に自分を大きく見せて質問攻めを乗り切って入社できたとしても、自分の実力とアサインされる業務のレベルにギャップがある事実は厳然として存在します。変に入社前の期待値が高い分、実力がそれほどでもないと分かった時の周りの評価は酷いものになってしまい、リカバリーに通常以上の時間と労力が必要となります。入社後のことを考えても、面接では等身大で話をすることが、最終的にご自身にとって良い結果となるということを覚えておいて頂ければと思います。

筆者 田中 祐介
コンサルタント実績
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