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第1050章
2021/11/26

月収を気にしすぎる者は年収に泣く、そしてキャリアを潰す

転職活動においてお金を一切気にしない人なんて一人もいないと思います。
ただ「年収」を見るのか「月収」を見るのかは大きな差があります。
確かに毎月の額も大切ですが、月収を気にしすぎると年収、ひいてはキャリアを潰す可能性もあります。
今回はその理由と、どんな方が月収を気にしすぎる傾向にあるのか、また「月収縛り」の負の要素、そしてそこから抜け出すための心構えについて追っていきます。

1. 年収と月収早見表から現実を知る

グラフ:年収と月収早見表

まず年収と月収についておさらいです。
年収は300万から1000万、月収については大まかに3パターンに分け、

  • 「完全年俸制(12分割で毎月支給)」のケース
  • 「賞与が2ヶ月(14分割で毎月支給し、年に2回1ヶ月分ずつを賞与月に支給)」のケース
  • 「賞与が4ヶ月(16分割で毎月支給し、年に2回2ヶ月分ずつを賞与月に支給)」のケース

について分けて記載した表が上のものになります。

※月残業代や固定残業代、みなし残業代等の説明は今回割愛し、分かりやすさのために「年でどれだけ支払われるか」のみ追っていきます。

一概には言えませんが、完全年俸制の企業は(日本ですとそこまで多くはないですが)外資系企業やSESの企業、コンサルティングファームの一部などが導入しています。
賞与2ヶ月のケースはコンサルティングファームやSIerなどに見受けられ、賞与4ヶ月(年の業績によって多少上下する企業)は大手事業会社やプライムSIerなどの企業でよく見られるケースです。
大まかではありますが、以降は自分がどこに位置するのか、を見比べながら読んで頂ければと思います。
その上で、月収を気にする方というのはどの層に多いのか、それはなぜかという点を次に追います。

2. 月収を気にする人の傾向は?

これは圧倒的に300万台、400万台の若手層に多いです。
もちろん一概には言えませんが、職種で言うならばSESの方に多く見られます。

その理由は考えるまでもなく、年収が高ければ高いほど、月の収入は完全年俸制か賞与制かに関わらず「誤差」程度でありやりくりができるから。そして逆もまた然りなためです。
そして、こと転職ということを考える場合には「完全年俸制」から「賞与制」の会社に転職する場合にネックとなるのが、今回のテーマである月収です。
もし「完全年俸制」で年収400万の方が「賞与4ヶ月制」企業にて年収500万でオファーが出た場合、年収としては100万アップにも関わらず月収は下がります(33.3万から31.3万に)。
100万アップでこれですから、20万、30万アップ時の場合にはもっと大きな割合で月収が下がります。
「でも年収としては上がるんだから良いじゃないか」というとそんな簡単なことではありません。固定費があればその分生活費に充てられる額は減るためです。
例えば、

  • (私もまだ支払っていますが)月固定で奨学金を返している場合
  • 両親への仕送り
  • 子供の塾や学校代等
  • 保険

などなど理由は様々ですが、大袈裟な話ではなく「月収が1万円下がるから転職できない」という理由で辞退になる方は年に何名かお会いします。
私はFPではなくキャリアのプロであるため、月の額をどうこうしろと言うつもりはなく、むしろ事情を聞くと確かに理解できる方がいるのも事実です。
ただし、そうは言ってもやはりこの月収を気にしすぎると、年収だけでなく今後のキャリアも潰すことにならざるを得ない事実があります。

3. 月収縛りはキャリアを潰す

先述の通り完全年俸制の企業はSESや外資系企業などに多いのですが、外資系企業の場合には「月収を気にしないレベルの年収」つまり表で言うと下の列の高額年収帯の方が多いのが実情です。そのため転職して賞与制の会社に行き多少月収が下がったとしても、そこまで気にせず、年単位で帳尻が合わせられる方が多い印象です。
そうなると月収を気にする方はSESの方に多いと言わざるを得ず、SESの方こそ「月収縛り」に苦しめられる方が多いのです。
この月収縛りは、キャリアを潰します。

まずSESからのキャリアアップを考えた場合、分かりやすい例としては二次請けSIerや将来的にはプライムSIerに行くことです。(いきなり事業会社に行くのは難しいことが多いことや、商流や契約形態の細かな話は今回割愛します)
ただ実情として、「商流の高いSI」こそ賞与制の場合が多く、先述した「月収縛り」に合うことが多いのです。
もっと言えば、SESからSESへの転職でもそうです。SESであっても、大手かつ案件が多くしっかり評価してくれる会社こそ賞与制を設け、頑張りに応じて支給してくれる会社が多いためです。

数年前にサポートしたAさんもそうでした。
AさんはIT完全未経験からSESのX社に入りましたが、どうしてもオペレーター案件しかなく、もっと技術をやりたい、フェーズとしても運用やできれば構築案件をしたい。さらに将来的にはプライムSIにもチャレンジしたい、ということで転職を考えられた方でした。
Aさんはものすごく自己研鑽をされる方ではありましたが、いきなりプライムSIerなどにチャレンジするのはさすがに難しく、二次請けSIerにも「業務経験がないため難しい」という理由でお見送りになってしまっていました。
そうなると「まずは業務経験を積むべき」であるため、「案件がたくさんあり、オペレーター案件はない(希望の運用や構築を中心とした)いわゆる”現職より良い”SES」であるY社を受け、無事内定となりました。
年収も、業務未経験であるにもかかわらず現職同等だったのですが、結果としては辞退ということになりました。

Aさんは年収が400万だったのですが、現職のX社は完全年俸制(つまり月収33.3万)、一方内定が出たY社は賞与制(2ヶ月:つまり月収28.6万)だったためです。皮肉なことに現職X社は残業が多く400万以上になることもありえますが、Y社はホワイトな企業だからこそ残業もほぼないため、事実上の月収は現職よりさらに下がるという状況でした。
「月収としてここまで(約5万も)下がると毎月の生活ができない」というのが辞退理由でしたが、あまりにもったいないため私からは「半年、長くても1年、どうにか努力し評価されれば賞与が上がり1年目でも提示額以上になる可能性もある。このまま月収を気にしすぎると一生オペレーターのままであり、時間が経てば経つほど挑戦もできなくなり、数年後になったらさらに行ける企業がなくなる。直近1年でなく将来を見よう。プライムSIに将来チャレンジしたいならば、今の決断が重要だ」というようなアドバイスもしました。
が、どうしても気持ちを変えることができず辞退となり、かつこれ以上の「月収」が出て運用や構築等経験が積める提案企業はなく、それっきりとなってしまいました。
後日談として、数年後Aさんのその後を知る機会があったのですが、Aさんは別の「オペレーターを主軸とする月収はX社より高いSES企業」に転職され、やはりオペレーターをされていました。
元々IT未経験から転職されていることから転職回数もそれなりに多いことを考えると、「将来的にプライムSIなどにチャレンジしたい」というキャリアを築くのは既に難しく、「一生オペレーター」のままの可能性が高いキャリアになってしまっていることにうなだれた記憶があります。

※ちなみに、AさんはSESの方であり、母数として月収を気にされる方はSESに多いのは私のサポート経験上の事実ではありますが、もちろんSESの人だけに限った話ではありません。
その他の例としては「月収が下がるなら転職はNG」と奥様に言われてしまい(いわゆる家族ストップ)転職を断念した大手プライムSIの現年収700万クラスの方なども過去にはいらっしゃいました。

つまりこの「月収縛り」は誰にでも起こり得ることであり、この縛りに囚われるとキャリアの幅を狭め、時に潰すことになりかねません。
ではこの月収縛りから抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。

4. 月収縛りから抜け出すために必要なこと

月収が下がる場合、もちろん支出の調整等は必要になるでしょうが、それ以上にこの「月収縛り」から抜け出すのに必要なのは「覚悟と将来ビジョン」だと思います。
面接において定番の質問でもある「1,3,5年後ビジョン」や「短中長期ビジョン」。ここを真に、強く持っているかどうかが運命を分けますし、転職に成功している方やキャリアアップされている方は本当に、このビジョンが明確であり具体的な方が多いです。

Aさんも、「将来的にはプライムSIに」という思いを確かに面談時には仰っていました。ただ結果的には「目の前の月収>将来の夢」であり、月収を取ってしまいました。
その人の人生として何を優先するかはその人自身によるためその決断を非難することはできません。
ただし私はキャリアのプロであるため、キャリアアップをして頂きたいと切に思っています。そのキャリアアップができるかどうかだけを考えた時には、月収縛りはぶち破るべきものだと断言します。

「真の転職理由」そして「将来どうなりたいか」ここをしっかり固め、固めた限りは多少の犠牲や我慢も覚悟し、突き進むべきです。
成功に努力は必須ですし、時に必要な犠牲は避けられません。その犠牲の対象が「月収」である場合には、覚悟を決めてぶち破って頂きたいと思っています。

<ジャパ>

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