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第1017章
2021/03/12

官庁DXを推進するのは誰か

デジタル庁の創設

官公庁のITニーズが高まっています。この仕事をしていると、今の日本ではどの業界でシステム投資意欲が活発なのかが分かってきます。これまでもオムニチャネルが流行した際には小売流通、グローバル化が進んだ時の製造業、5Gをきっかけとした通信事業者など、タイミングによってエンジニア需要が高まっていました。そしてついに2020年、官公システムにも注目が集まり始めました。

実は前職では官公庁のSEだった私。10年前にこの業界へ転職した際にも、官公システムのポジションが圧倒的に少ない!という事実に驚きました。一定数の需要はありましたが、昨年からは目に見えて求人が増えています。

理由は幾つかあります。一つは分かりやすくデジタル庁の設立でしょう。今年の9月1日に設立が決まっているデジタル庁は、これまでの官庁が弱かったとされるシステムの旗振り役を期待されています。マイナンバーカードから自治体システムの統一化まで、課題の残る現行システムに変革を促す立場を任されるようです。またデジタル庁には各府省に対する勧告権を与えられることになっており、行政の縦割りを解消するような強力な総合調整機能を持つことになると言われています。

もう一つは新型コロナの影響もあるでしょう。役所での仕事はセキュリティ上だけでなく、システム面からも色々な制約が掛かる仕事環境でした。また今後に向けてもワクチンの管理や助成金の受付など、コロナ禍の緊急対応を支えるべく柔軟なシステムが求められるはずです。これらをスマートに実現するために、DXが不可欠なのです。そして、その為にはエンジニアの力が何より必要です。

自治体にも広がる取り組み

中央官庁だけではありません。自治体にもDXの取り組みが増えてきました。
身近なところで言うと昨年の11月、自治体職員向けにテレワークシステムの運用が始まりました。自治体の職員はLGWANというセキュアなネットワークに接続して日常業務をしています。それまでは庁内からしかアクセスできなかったLGWANに対して、自宅からのリモートアクセスが可能に。テレワークが一気に広がりました。

また政府が昨年決定した基本方針には「2025年までに自治体の情報システム標準化・共通化を推進する」とあります。現行では、全国1700の自治体が個別に行政システムを発注・開発・運用しており、そこに大きな無駄があると言われています。2025年が現実的なのかは分かりませんが、今後大きな変化がありそうです。

長期的な施策を挙げれば、スマートシティ構想があります。スマートシティとは、IoTのセンシングデータやエネルギー消費量、交通機関や行政サービスなど、都市における生活インフラデータを一元的にコントロールし、市民に有益な情報として提供する仕組みを指します。これからの都市作りには、住民サービスを高めて住みたい街・行きたい街に選ばれるための努力が必要です。まだ実証実験フェーズではありますが、役所だけでなく病院や学校、交通インフラなど組織を跨いだ取り組みサービスデザインから構築まで一気通貫に推進する旗振り役がカギになってきます。

それ以外にも、地方には農業や文化芸術など、その地方その土地でしか成り立たない産業も多々あります。就業人口も減少していく中、各々の公的機関でもDXによる効率化が始まっています。

推進する担い手は誰か

これら取り組みの中軸となるのが、ITエンジニア/ITコンサルタントです。既存システムを数多く手掛ける大手SIerはもちろんですが、コンサルティングファームの存在感も増してきたと思っています。既存に無いサービスを考え、最新技術で実現することにDXの本質があります。諸外国の事例収集や戦略企画に強いファームは、今後の官公システムの重要なプレイヤーになるでしょう。

一方で、デジタル庁が関わるような重要案件を円滑に構築する為には、大規模なマネジメント力も重要です。組織間を跨ぐような横断的システムであればあるほど、より一層大手SIerへの期待値も高まるはずです。

ベンチャー企業にもチャンスがあります。モビリティやIoT、AIなど、専門領域に強いITベンチャーや新興企業が、官公庁や自治体の案件を受託するケースも増えてきました。既存システムの業務知識が不要な分、新規参入がしやすいのがDXの特徴と言えるでしょう。

官公向けシステム開発というキャリア

DXがこれだけ社会に広まっている中で、官公・自治体が提供する住民サービスはあまりにその恩恵を受けなすぎでした。デジタル庁はそれを突き動かす役として、行政のシステム化がより促進されるという期待が高まっています。

2000年前後にも電子政府というキーワードがもてはやされ、私もそれに共感して官公向けエンジニアという道を当時歩み始めました。それから20年。間違いなく今の方が、刺激的で面白い官公システムに関われるだろうと思っています。

デジタル庁でもIT人材の中途採用を始めていますが、人数は約30人。非常勤職員で週3日程度の勤務となるようです。この体制だけですべての課題に対応するのは当然難しいでしょう。外部のエンジニア、コンサルタントの力が必要です。

筆者 鈴木 裕行
コンサルタント実績
  • 紹介求人満足度 個人の部 第2位
    出典元
    株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT
    対象期間
    2014年4月1日〜2014年9月30日
    調査名称
    第12回転職エージェントランキング
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