
- 筆者プロフィール: ケンゾウ
- 大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第50話
コンサルタントが改革したい会社は?(その2)
誰のプロジェクトにアサインされるか?
こんにちは、ケンゾウです。前回のコラムでは、コンサルタントが「自分が所属するコンサルティングファームを改革したい」と思う理由として(1)プロジェクトへのアサインメントに関する不満と、(2)過酷な労働環境に対する不満の二つがあるのではないかと書きました。今日は、(1)プロジェクトへのアサインメントに関する不満の続きから始めたいと思います。
前回は、若手コンサルタントにとっては、どんなテーマのプロジェクトにアサインされるかも重要だという話を書きましたが、実は、それと同じくらい(もしかするとそれ以上に)重要なのは、どのパートナー・マネージャーのプロジェクトにアサインされるかです。
誰がパートナー・マネージャーかで、仕事の進め方が大きく変わってきます。もっと簡単に言うと、睡眠時間が大きく変わってきます(笑)。これは上記(2)にも深く関連する話です。全体として、戦略ファームの仕事は深夜に及ぶという話は何度も書いていますが、その程度はプロジェクトによってかなり異なります。ですが、よーく見てみると、プロジェクトと言うよりはどのパートナー・マネージャーの仕事かによってかなりの偏りがあるのです。
戦略ファームの若手はさすがに優秀なコンサルタントだけあって、そこら辺の情報収集も抜かりなく、自分のプロジェクトが終わる頃にかなりキツそうなプロジェクトが始まりそうだという情報をキャッチすると、プロジェクト終了後にちょっと長めの有給を取得してそのキツそうなプロジェクトの開始時期とタイミングをずらそうとしたり、他のパートナー・マネージャーに連絡をしてそっちのプロジェクトに入れてもらうようにアピールしたりと、キツそうなプロジェクトへのアサインを避けようと様々な努力をする人もいたりします(笑)。
アサインメントの無限ループ
しかし、プロジェクトへのアサインメントは、コンサルタントの希望を聞くこともありますが、そうはいっても仕事なので最後はトップダウンで決めてしまいます。また、誰をアサインするかを決める際に、一緒に仕事をしたことがあるかどうかというのが重要になってきます。パートナーやマネージャーからすれば、一度も一緒に仕事をやったことがないメンバーとチームを組むよりも、一緒にプロジェクトをやったことがあるメンバーの方が、スキルや性格がわかっており安心感があるからです。
そうすると何が起こるかというと、一度、キツイ案件が多いパートナーやマネージャーと一緒に仕事をして気に入られると、継続して彼らのプロジェクトにアサインされることになり、ファーム内でもその分野が得意なコンサルタントというイメージが定着し、他のパートナー・マネージャーの仕事をする機会が徐々に減ってくるのです。
これは見方を変えると、ファーム内での評価が確立し、コンサルタントとしては素晴らしい勝ちパターンなのです。そのままの路線で走りきれば、プロモーションも早いかもしれません。しかし、やっている本人からすれば、「こんなキツイ仕事が続いては体が持たない」と感じるかもしれませんし、「おれはもっと違うテーマの仕事がしたいんだ!」という様々な想いが湧き出てくるのも事実です。そうして、自分の意志がなかなか反映されないアサインメントの仕組みに不満を持つようになるのです。
(2)の過酷な労働環境という点については、入社前からハードな仕事とわかってはいるものの、ファーム内でも特にキツイ状況が続くと、そもそもプロジェクト設計が間違っているのではないか?そんな状況がまかり通るのはさすがに会社運営の仕組みとして問題があるのではと思ってしまうのです。
(2)については、最近は多くのファームで改善されつつあると聞きますが、いずれにせよ、こういったプロジェクトへのアサインメントを決める仕組みや、特定のプロジェクトで過酷な労働環境に陥ってしまうことなどに対する不満が、コンサルタントが「自分の会社を変革したい!」と考えることにつながっているのだと思います。ただ一方で、戦略ファームで得るものも大きいため、不満もある一方で、満足している部分も沢山あることは付け加えておきたいと思います。
(次回につづく)
バックナンバー
- 第60話 広がるポストコンサルの活躍の場
- 第59話 コンサルを使いこなす(その2)
- 第58話 コンサルを使いこなす(その1)
- 第57話 医者の不養生(コンサルタント編)
- 第56話 仮説思考のコツ
- 第55話 経営=サイエンス×アート
- 第54話 他コンサルから戦略コンサルへの転身
- 第53話 ファスト・トラッカー
- 第52話 圧迫面接って必要?
- 第51話 人気のプロジェクト
- 第50話 コンサルタントが改革したい会社...(その2)
- 第49話 コンサルタントが改革したい会社...(その1)
- 第48話 御曹司のコンサル修行
- 第47話 真逆の戦略で攻める!
- 第46話 アンケートの落とし穴
- 第45話 ナチュラルハイ
- 第44話 ホワイトボードを制するものは...(その2)
- 第43話 ホワイトボードを制するものは...(その1)
- 第42話 キー・スライド:究極の1枚
- 第41話 臨界点に達したか?
- 第40話 他人と違うところを探そう
- 第39話 さかなクンにみる差別化戦略
- 第38話 持つべきは信頼できるエージェント(その2)
- 第37話 持つべきは信頼できるエージェント(その1)
- 第36話 コンサルタントと起業家の違い
- 第35話 経営者には鈍感力が必要?
- 第34話 コンサルは経営者へのステップか?
- 第33話 コンサル会社は役に立たない?
- 第32話 罵倒されることでバリューを出す(その2)
- 第31話 罵倒されることでバリューを出す(その1)
- 第30話 なぜコンサル会社を使うのか?(その2)
- 第29話 なぜコンサル会社を使うのか?(その1)
- 第28話 使えるものは使い倒す
- 第27話 上司のマネジメント
- 第26話 自分の勝ちパターンを見つける
- 第25話 英語力はどれくらい必要?
- 第24話 エンジニアとコンサルの関係
- 第23話 コンサルはモラトリアム?
- 第22話 突き抜ける瞬間
- 第21話 コンサルは言いっぱなし?
- 第20話 オープンすぎる職場環境
- 第19話 戦略ファームの入社面接(その2)
- 第18話 戦略ファームの入社面接(その1)
- 第17話 戦略ファームへの入り方(MBA編)
- 第16話 戦略ファームへの入り方(中途編)
- 第15話 戦略ファームへの入り方(新卒編)
- 第14話 ヘッドハンターから声がかかる
- 第13話 よく働くのはどの国か
- 第12話 M系男子は戦略ファーム向き?
- 第11話 在職期間とその後のキャリアについて...
- 第10話 在職期間とその後のキャリアについて...
- 第9話 戦略ファームの社員旅行
- 第8話 アップ・オア・アウト
- 第7話 恋愛における問題解決スキル
- 第6話 コンサルタントは出世魚?(その2)
- 第5話 コンサルタントは出世魚?(その1)
- 第4話 戦略ファームでのワークライフ・バランス
- 第3話 衝撃の初プロジェクト(その2)
- 第2話 衝撃の初プロジェクト(その1)
- 第1話 戦略コンサルの実態を語ります!