ケンゾウの戦略コンサル物語

戦略コンサルタントの仕事やふだん考えていることなど、戦略コンサルタントの実態をありのまま綴ったコラム

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筆者プロフィール

ケンゾウ
大学院修了後、メーカーでエンジニアとして勤務。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに転職。幾多の苦労を重ねながらも、数年間をそのファームで過ごした後に卒業し、現在は投資ファンドで働いている。
第19話

戦略ファームの入社面接(その2)

戦略ファームの面接

こんにちは、ケンゾウです。前回に続き、戦略ファームの面接で実際にあった光景について書いてみたいと思います。

戦略ファームの面接で出される課題に、「フェルミ推定」と呼ばれる類の問題があります。フェルミ推定とは、例えば「国内の傘の市場規模はどれくらいだと思う?」「日本に電柱は何本あると思う?」のように、ざっくりとした規模感を考えさせる問題です。所要時間は5分とか、そんなイメージです。ちなみに私が現役だった頃は、「フェルミ推定」などという洒落た言葉はなかったのですが、現在はそう言うらしいです(笑)。

「フェルミ推定」についても、ネット上で検索するか書籍を探していただければ詳しい情報が得られると思いますが、簡単に説明すると、最終的な答えが正しいことが重要ではなく(むしろ正確な答えは期待していない)、短時間で自分なりの前提を置きながら試算する力があるか否かを見ているのです。

例えば「電柱の数」事例だと、電柱の数は面積に比例すると仮定して、日本の面積が38万平方キロメートルで、電柱が平均で◯平方キロメートルに1本とあると仮定して計算します。余裕があれば、都市と地方で電柱の間隔が異なるという仮定を織り込んで精度を高めてもよいでしょう(実際には、都市と地方の間隔の違いも仮定の数字となるでしょうから、本当に正しい答えに近づくかどうかわかりませんが)。また、日本の面積がわからなければ、日本には47都道府県があって、1都道府県あたりに平均◯個の市町村があって、1市町村の面積を平均◯平方キロメートルとおいて・・・などと推計してもよいでしょう。いずれにせよ、数値がわからない◯の部分は、○を算出するために更に分解しても良いですが、最後は感覚値で適当な数値を入れて算出します。

実際の面接の様子(例)

フェルミ推定は、推定するためのロジックを組み立てる力があるかが最も重要なんですが、意外にあるのが計算間違いです。一流大学卒とかMBAホルダーの方でも、単純な四則演算で大間違いをされる方が、時々いらっしゃいます。数字に弱いのはかなりのマイナス評価となるので要注意です。実務でもやはり重要で、計算間違いをして、クライアントへの報告書で打ち手の効果を一桁大きく報告してクライアントに指摘されるような状況は、想像するだけでも血の気が引いてしまいます(笑)。

また、私が面接して実際にあった例としては、「国内の飲料市場の規模はどれくらいですか?」という質問に対して、「50億円」という回答をされた方がいました。「ちょっと小さくないですかねえ?」と問いかけても、再度計算ロジックを確認して「やっぱり50億円だと思います」とおっしゃいます。

算出根拠を聞くと、教科書通りにキチンとロジックを組み立てて、仮説を立てながら算出されており、そこまでは問題なかったのですが、最後に感覚値で埋めた数値がことごとく小さかったようで、最終的な市場規模が驚くほど小さな数値となったのです。しかし、市場規模が50億円では、市場シェアを100%獲得しても中小企業のレベルで終わってしまいす。コカ・コーラやキリンビバレッジなど、国内で多数の大企業が存在するのに中小企業1社分の市場ということはないですよね。

フェルミ推定では答えの正確さは重要視していないとはいっても、これでは別の問題が感じられます。つまり、計算に集中しすぎて、一歩引いた見方で検証できていないのです。別のロジック(例えば飲料メーカーの企業規模と計算した市場規模を比較するなど)や常識に照らしあわあせて数値がおかしくないかを見直さないと、実務でもとんでもないことが起こりますからね。

私もマネージャーをしていた時は、メンバーが出してくる数値については、感覚的におかしくないか常にチェックするようにしていました。そうしないと、最終的には自分が大変な目にあってしまいますからね(笑)。

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