ITプロフェッショナル対談

注目企業の現場に聞く。IT業界経験者のリーベルのコンサルタントが、業界経験者ならではの切り口でキーパーソンにインタビューし、その核心に迫ります。

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デロイト トーマツ サイバー合同会社(DTCY) 自動車セキュリティ(中編)

求めるのは「脳みそに汗をかきたい人」デロイト トーマツ サイバーの自動車セキュリティ部隊にマッチする人材像に迫る

デロイト トーマツ サイバー合同会社(DTCY)の自動車セキュリティ部隊を率いるシニアマネジャーの高橋宏之氏に、リーベルのコンサルタントが迫る対談の中編。前編ではDTCYが現在、自動車セキュリティについてどのような取り組みを行っているかを中心に訊いたが、中編では高橋氏自身のキャリア形成や仕事のやりがい、さらにはDTCYの自動車セキュリティ部隊で今、どんな人材が求められているかについて話を進めていく。高橋氏の語る「脳みそに汗をかきたい人」といったキーワードをとおして、同社にマッチする人材の姿が、具体的にくっきりと浮かび上がってくるはずだ。

プロフィール

デロイト トーマツ サイバー合同会社(DTCY)
シニアマネジャー
高橋 宏之 氏
国内SI企業で省庁関連の大規模システム開発やERP製品導入を経験後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、ビジネスプロセス改善やCIO向けアドバイザリー業務に従事。デロイトトーマツリスクサービス(現デロイト トーマツ サイバー(DTCY))に転籍後は、セキュリティ全般のコンサルティング業務に従事。近年は、自動車業界向けのセキュリティ管理に係るエキスパートとして、情報システム領域および自動車セキュリティ領域に関する様々なコンサルティング案件に関与。

セキュリティコンサルティングに偏見を持っていた

リーベル:ここからは主に、人材について伺っていければと思うのですが、その前に、高橋さんご自身のキャリアについて伺えればと。もともと高橋さんご自身は、どのような経験を積んで、現在、DTCYで自動車セキュリティのお仕事をされているのか、お話し願えますか?

高橋氏:はい。大きく分けると、私のキャリアは3つのステップで構成されています。まず私は、SEとして社会人経験をスタートしました。これが1つめ。SE時代はごく当たり前に、プログラムを書いたり、仕様設計や要件定義をしたりしていましたね。しばらくするうちに、もっと上流の仕事をしたいと思うようになったのですが、一方で当時、私は結構、テッキーな人間でして。土日もゴリゴリと自宅でコンピュータをいじって、技術を突き詰めようとするタイプでもあったんです。

リーベル:そうなんですか! なんだか意外ですね。

高橋氏:そんな感じですから、若い頃は、当時の上司に「お前はコミュニケーション能力が低いから、お客様から要件を聞く仕事には向いていない」みたいなことを言われて、不遇だった時期もあったんですよ。

リーベル:今からはまったく、想像もできないですね。

高橋氏:ははは。そんなことを言われていたのもバネになって、「よし、ならばいっそのこと要件定義どうこうを飛び越えて、コンサルタントになってやろう」と一念発起して、コンサルティングファームに移ったんです。移ったといっても完全な転職ではなく、SEをしていた会社の出向制度を利用したのですが。

リーベル:なるほど、いきなりですね。

高橋氏:その後、デロイト トーマツ コンサルティングに転職し、ビジネスコンサルティングやITコンサルティングに携わりました。これが私の2つめのキャリアになります。具体的には、M&AのコンサルティングやIT戦略立案、CIOアドバイザーなどをしていました。そこで弊社の丸山(満彦社長)と出会い、当時のデロイト トーマツ リスクサービス(DTRS)(現デロイト トーマツ サイバー(DTCY))に転籍し、セキュリティに携わることになります。それが3つめのキャリアですね。
ただ正直、私は、セキュリティのコンサルティングに対して、ある種、偏見のようなものを持っていたんです。

リーベル:偏見ですか? どういうことでしょう?

高橋氏:コンサルタントのヒエラルキーの中では、やはり戦略コンサルティングやビジネスコンサルティング、ITコンサルティングみたいなものが花形で、セキュリティコンサルティングなんていうのは末端の仕事じゃないかと。特に当時はセキュリティに今ほど注目が集まっていませんでしたから。売上にもつながらない、顧客拡大にもつながらない、後ろ向きな活動・・・端的に言うと、“ブレーキ”・・・そんなふうに思っていたんです。

リーベル:なのにどうして、セキュリティコンサルティングの道に入ったのですか?

高橋氏:デロイト トーマツ コンサルティング時代に、私は、丸山たちのメンバーと組んで、企業のセキュリティ施策立案の仕事をしたのですが、報告会の時に、そのメンバーが作成した資料がとにかくクライアントに刺さりました。「ぜひともウチの経営陣に話を持っていきたい」というコメントがありましたが、そのシーンを見て「企業の経営にとって、セキュリティリスクってこんなに大事なものなんだ」と、すごく刺さるものがあった。そこから丸山と意気投合して、セキュリティに関する様々な話を聞くうちに「一緒にやってみないか?」みたいなことになりまして。

リーベル:そういうことでしたか。しかし、セキュリティが経営課題としてこれだけ注目されるようになった今、その決断は時代を先取りしていて大成功だったといえるのではないでしょうか。

高橋氏:今にして思えばそうかもしれませんね。

自動車セキュリティの仕事の醍醐味とは?

リーベル:転籍後は、自動車のセキュリティを担当されるわけですが、高橋さんにとって、自動車セキュリティの仕事の面白さや醍醐味は、どこにあると感じていますか?

高橋氏:本当に面白いですよ。冒頭でもお話ししましたが、やはり自動車って、コネクティッド社会の中心にいるんですよね。車だけの情報じゃなくて、位置情報を使った陸海空の交通の連動みたいなものの中心にもなる。それだけ重要なもののセキュリティに携われるというのはすごくやりがいがあります。そもそも、海空に比べて圧倒的な“数”となるため、その分社会におけるインパクトも大きいわけです。
それからこれもお話ししましたが、日本の産業は、やはり自動車産業中心に発展してきたところがあって、産業として成熟しているんです。成熟しているというと何だか面白味がないように受け取られるかもしれませんが、そうじゃなくて、体制も整っているし、何より優秀な人がたくさんいる。そういう優秀な人たちと一緒に仕事ができるというのも醍醐味の1つですよね。

自動車を取り巻く環境の全体図

リーベル:これから自動車セキュリティに関わるメリットも大きそうですね。

高橋氏:そうですね。例えばIoTをやっていきたいと考えている人は、自動車を知っておくといろいろなところで応用が効きやすいです。「自動車はこうやっていた、他の分野でもこうやったらどうですか?」という提案がしやすいですから。

リーベル:確かにそうでしょうね。

自動車セキュリティ部隊ではどういうメンバーが活躍している?

リーベル:今、DTCYさんの自動車セキュリティ部隊にいらっしゃるコンサルタントの方々は、どういうバックグラウンドの方が多いのでしょう?

高橋氏:現在いるメンバーは、大きく3つのカテゴリーに分けられます。1つは、私のようなコンサルティングをやっていたメンバー。2つめは、企業の情報システム部門やITベンダーでITに関わる仕事をやっていたメンバー。3つめは、これが最近増えてきているのですが、車の開発に関わっていたエンジニア系のメンバーですね。OEMから来た方は今のところいないですけど、例えばサプライヤーで自動車用の半導体を設計していました、とか、ETCの開発に携わっていました、みたいな方です。

リーベル:その3つの中で、今、特に求められているのは?

高橋氏:いずれも必要としています。我々が取り組む課題は複合的で難易度が非常に高いです。ですのでそれぞれの得意分野を活かしてチームとして付加価値を出すということが求められます。一人ですべてをできる必要はないですから、多様なメンバーを揃えていきたいですね。

リーベル:なるほど。現在いらっしゃるメンバーの方々は、どういう動機でDTCYさんの自動車セキュリティ部隊に加わったんでしょう?

高橋氏:今まで採用してきたメンバーはみんな、「脳みそに汗をかきたいんです」とか「ワクワクしたいんです」みたいなことを言っていましたね。
実は私の面接は結構ハードルが高くて、色々なトピックを用いたケーススタディ的な質問も投げかけるんですが、それを打ち返してくるんですよ。気がついたら面接がブレインストーミングのようになっていることもあります。
コンサル系、IT系、エンジニア系、いずれにしても共通しているのは、「頭を使って、ゼロからモノを考え、新しいことにチャレンジしたい」という人だと思います。そういう人ならこちらも、セキュリティという専門性にはあまり関係なく採用しています。

リーベル:なるほど。IT系ではセキュリティ業界出身の人もいるんですか?

高橋氏:デロイト全体には多くいますけど、私のチームにはいないんですよね。理想は当然、セキュリティもわかって、車のこともわかって、IT全般のこともわかっている、という人になりますが、現実にはそういう人はなかなかいない。ではどういう人が欲しいのか、と言われると、セキュリティや車、ITといったことの、どこか1つには関わっていた上で、「頭を使いたい」「脳みそに汗をかきたい」という人なのかなと思います。

「混沌とした物事をスッキリさせる」能力が求められる

リーベル:「頭を使う」「脳みそに汗をかく」とは、より具体的に言うとどういうことなんでしょうか? 例えば、シーズベースで物事を考えるから、そういう創造型・発信型で頭を使いたい、みたいなことでしょうか?

高橋氏:もちろんそうした「何もないところから、こんな水源を見つけちゃいました」みたいなこともあります。ただ、どちらかというとより多いのは、「気がついたら、散らかっていたものをこんなにキレイに整頓できました」とか、「これとこれが繋がりました」みたいな、「混沌とした物事をスッキリさせる」ことですかね。

リーベル:ゴチャゴチャしているものを整理して、1つの筋道だったストーリーにするような。

高橋氏:そうです、そうです。 例えばコンサルの現場では「地頭力」という言葉がよく使われていて、それは「ゴールに向かって筋道立てて突き進んでいける能力」ということなんですよね。「こういうロジックを考えてみました。やってみた結果、そのとおりになりました」みたいな。この地頭力が非常に大事。そう考えると、別に自動車セキュリティでなくても、他のコンサルティングと求めるものはあまり変わらないんです。面接でも、「こういうケースがあったらどうする? ちょっとプレゼンしてみて」みたいなことをやる場合もありますよ。

リーベル:なるほど。そういう地頭力のようなものが必要になるのは、先ほどおっしゃった、自動車が進化した世界でのガバナンスのような、これからどうなるかわからないものについて考えなくてはいけないから、ということなんですかね。

高橋氏:おっしゃるとおりですね。ガバナンスというのは、いろんなステークホルダーがいるので、やはり混沌としているんですよ。混沌としたものに統制を効かせるのは、結構頭を使うので、それが嫌いな人にはしんどいのかなと。

ライター プロフィール

荒濱 一(あらはま・はじめ)
1971年、東京生まれ。上智大学文学部教育学科卒。高校教諭、タイ・インドでの広告代理店勤務を経て、1998年からライターとして活動を開始する。現在、ビジネス(特に人材・起業)、IT/デジタル機器、著名人インタビューなど幅広い分野で記事を執筆するほか、広告コピー分野でも活躍。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(高橋学氏との共著)
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