注目企業インタビュー

リーベルが探る、注目企業の強みと求める人材像。採用現場の生の声をお届けします。

PwC Japan有限責任監査法人

アシュアランスとコンサルティングを提供するナレッジファーム
オーナーシップのある提言で、クライアント企業のリスク管理を支援

リスク・アシュアランス部門
パートナー
宮村 和谷 氏
リスク・アシュアランス部門
高木 円香 氏

PwC Japan有限責任監査法人は、世界4大会計事務所「BIG4」の一つ、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)と業務提携する監査法人(メンバーファーム)だ。2006年に設立された同社は、国内の4大監査法人の一角を占め、クライアントにはグローバルに展開する日本の大手企業が名を連ねる。
そのPwC Japan有限責任監査法人の中で、クライアントの業務プロセス、システム、組織、データの4分野で、リスクマネジメントやガバナンス、コンプライアンスに関する「アシュアランス業務」と「コンサルティング業務」を提供しているのが、RA(リスク・アシュアランス)部門だ。設立当初、約80名で発足したRA部門は10年で230名に増員され、今後も業容の拡大に伴い、陣容を急ピッチで増強する計画を立てている。
PwC Japan有限責任監査法人と他の監査法人やコンサルティングファームが提供するサービスは何が違うのか、その中でRA部門の強みややりがいは何か、どのような人物像を求めるのか。リスク・アシュアランス部門パートナーの宮村和谷氏と、同部門スタッフの高木円香氏に聞いた。

監査法人が提供する価値の本質は、アシュアランス+コンサルティング

PwC Japan有限責任監査法人と他の監査法人やコンサルティングファームの違いを理解するためには、そもそも「監査法人が提供する価値」の本質とは何かを考える必要がある。一般的に監査と聞いて思い付くのが、クライアント企業の財務情報が正しいかどうか、その適正を会計士が評価し、消費者や従業員、株主、取引先、地域社会、行政機関など様々なステークホルダーに対して報告する業務だろう。いわゆる「会計監査」と言われる業務で、かみ砕いていえば「この企業の財務情報は正しく書かれているから、安心してください」と、保証、証明する業務だ。

ただし、保証・証明する対象は財務情報に限らない。内部統制の適正を評価する「内部統制監査」もある。あるいは、「財務諸表に示されている会計計数に関わる業務プロセスは適切に行われているか」「その業務プロセスを支えるシステムは適正か」「組織管理態勢そのものが適正か」、さらには「会計計数の元となる取引データが適正かどうか」を評価する評価業務もある。こうして会社の様々な設計・運営状況を評価して保証・証明する業務を「アシュアランス業務」と言う。そして、RA部門では、今挙げた「業務プロセス」「システム」「組織」「データ」の4つのアシュアランス業務を提供しているのだ。

一方、これらのアシュアランス業務では、クライアントの業務プロセスやシステム、組織、データマネジメントを理解し、評価した上で保証・証明するため、誰よりもその会社の中身を深く知る立場になる。「中身をチェックすれば100点満点の企業はなく、リスクマネジメントやガバナンス、コンプライアンスに関して、必ずどこかに問題点や課題が見つかります。その問題や課題に対し、相談に応じ、解決案を助言することも監査法人の大きな役割であり、これが『コンサルテーション対応とアドバイス』です。監査法人では、様々な企業の監査を行っており、実例やトレンド、課題やソリューションを数多く知っています。そのため、それらの知見やノウハウ、メソッドなどの“ナレッジ”を活用して、効果的で実践的なアドバイスが提供できるわけです。」と、宮村和谷氏は話す。

こうして考えてみると、アシュアランス業務を行うとともに、そこで得た知恵・ナレッジを活かして相談対応・アドバイス、さらにはコンサルティング業務を提供することは、ごく自然な流れだ。つまり、これらのサービスを、独立性を確保しながら、相乗効果を発揮させつつ提供することこそが監査法人が提供するプロフェッショナルサービスの本質と言える。

企業とステークホルダーを俯瞰し、真の解決策を捻り出す

監査法人が提供するプロフェッショナルサービスの本質を踏まえた上で、改めてPwC Japan有限責任監査法人と他の監査法人やコンサルティングファームを比べてみよう。大きな違いは、PwC Japan有限責任監査法人ではRA部門も含めて、アシュアランス業務とコンサルティング業務を一つの部門内のワンチームで提供していることだ。他の監査法人では、基本的にアシュアランス業務とコンサルティング業務を提供する部門が分かれていることが多い。また、コンサルティングファームではそもそもアシュアランス業務を行っていない。

アシュアランス業務とコンサルティング業務の両方を提供する利点は、企業とステークホルダーを俯瞰し、双方にとってメリットがあり企業価値の向上に資するアドバイスやソリューションを提示できることだ。企業にとってステークホルダーとの間に生じるギャップは大きなリスク要因であり、時にそのギャップが企業の存続を脅かす。コンサルティングだけでは、企業や経営者の視点に偏ってしまうこともあるが、アシュアランスを行うミッションを担っているため、様々なステークホルダーの目線を考慮したバランスの取れた解決策が導き出せる。

さらに宮村氏はこう付け加える。「コンサルティングファームの場合、企業の代わりに対策を“やってあげる”ビジネスモデルが主流。例えばシステム化や業務改革の案件では、多くのスタッフがクライアント企業に張り付くアウトソーシングサービスが柱になる場合があります。それに対し、監査法人は企業が自分たちの力で改善できるようにアドバイスすることがメインです。我々は自らをナレッジファームと呼んでいますが、その名の通り『知恵』を売っているわけです。我々がリスクを評価して、その対策を助言し、企業側が自らPDCAを回して改善する道筋が付けることが基本。これができなければ、監査法人として自信を持ってアシュアランス業務を提供することができるような企業に成長してもらうことはできません。自らが本業である監査業務を自信をもって提供できる、自身で継続改善ができる企業になってもらえるようにアドバイスをする。それが監査法人として提供するコンサルティング業務の本質です。」。

保証をしていくには、自ら継続改善していける企業に成長するよう、必要な助言を行う必要もある。いわば、監査法人におけるアシュアランス業務とコンサルティング業務はコインの表裏の関係だ。アウトソーシングサービスなどの“他力”ではなく、“自力”で根本的な企業体質の改善を図っていく長い視点での支援も、PwC Japan有限責任監査法人のサービスの特徴だ。

10年後のクライアント企業を考慮した本質的なソリューション

では、実際にどのように案件が発生し、どう進めていくのか。案件発生のきっかけは様々だ。今は、日本国内で様々な不祥事が報道され、収益や株価に悪影響を及ぼす例が数多く発生している。グローバルに事業を展開する企業では、海外子会社の管理が喫緊の課題として浮上している。こうした状況を背景に、クライアントからリスク管理の相談を受けたことが発端となり、業務プロセスやシステム、組織などの評価や改善支援を提案して案件化することがある。

実際にシステム障害が発生し、当局から第三者を入れてシステムを検証し、対策を打つように通達を受けたため、RA部門が依頼されてシステム監査を行うパターンもある。しかし、そうした場合、単に評価のみで終わるものばかりではなく、多くの場合、アドバイスの提供を伴うことになり、必要とされる場合には改善支援等のコンサルティングを提供することもある。

例えば、RA部門がクライアント企業のシステム監査を実施した結果、外部委託しているシステムの運営が、期待するパフォーマンスに達成していなかったことが判明したとする。作業状況も不透明、新規開発のスピードも上がっていないなどの問題も明らかになったとする。その場合、そうした状況の報告にとどまらず、どうすればリスクマネジメント、ガバナンス、コンプライアンスが実現するかの“提言”することこそが、RA部門がクライアントから求められることだ。

その他、システム構築のプロジェクトが遅延し、業務が停滞しているという問題が発覚すれば、業務を含めた現状の分析とリカバリーするためのロードマップ作り、人材の採用も含めたプロセス作りなども要求される。「元々、利便性を高め、業務を円滑に回し、結果的に経営を期待する方向に持っていくためにシステムは存在します。ですから、システムの先にある業務や経営へのインパクトを考慮した“経営の視点”でリスク管理の助言を行うことが、我々のシステム監査では最も重要になります。システム監査と言っても、ITだけを見ることはほぼなく、結局業務プロセスや組織も含めて点検し、提言することになります」(宮村氏)

「経営の視点でリスク管理の助言を行う」とは、簡単に言えば「10年後のこの会社を考えた時、このままでいいのかと問いかけること」と同義だと言う。つまり、時間的に長いスパンで物事を考え、対象範囲も業務プロセス、システム、組織、データなど広範に及ぶ。さらに、ステークホルダーのことも考慮の範疇に入れなければならない。その上で、リスクマネジメントやガバナンス、コンプライアンスの解決策を導き出すことは、非常に困難な業務と言わざるを得ない。だが、だからこそ、そこには他にはない価値が生まれ、本質的なソリューションとなり得るのだ。

クライアント企業のルール自体をより良いものに変えていく

現場でクライアント企業と日々対面し、解決策を模索するスタッフの一人が、高木円香氏だ。前職はシステムエンジニア(SE)で、クライアントの本当の要望を捉えた上で業務や組織をより良くするための手助けをしたいと考えRA部門に中途入社した。

「SEの時はクライアントから依頼されたことをひたすらこなすことが中心でした。それが仮にコンサルタントという立場になってもクライアントから求められた範囲内で仕事をこなすことは同じ。いずれにせよ仕事のやり方が『受け身』にならざるを得ないと思います。しかし、監査法人ではたとえ元々の依頼の範囲を超えても、そこにリスクや問題があるなら、積極的に助言し、改善を促すことが求められます。つまり、クライアントと対等な立場で主体的に言うべきことを伝え、業務や組織をより良くしていく手助けができる。この本質的な仕事に携われることこそが魅力です」。

クライアントは「こうしたい、ああしたい」と様々な要望を伝えてくる。だが、それをそのまま鵜呑みにするべきではない。その要望は正しいのか、何か他に適切な方法があるのではないかと、一歩引いて見ると、全く違った解決策が浮かぶこともある。しっかりとした根拠が説明できるなら、クライアントの考えとは異なる、時には耳の痛い話を提案することも厭わない。本当に有効な解決策を提案し、クライアントのリスク管理を適切な方向に導きたいと考える人にとっては、とてもやりがいのある仕事だ。「言ってみれば、SEやコンサルタントはクライアントの提示したルールに従ってより良いものを作るために力を尽しますが、私たちはルール自体をより良いものに作り変えるために尽力します」と、高木氏は説明する。

自分の責任で自信を持って仕事が進められることも、高木氏がこの仕事にやりやすさを感じる要素だ。RA部門では、リスクを評価するプランの作成から問題解決に導く仕組み作りまで、意思決定の支援、現場への導入と定着化の支援、導入後の評価と改善の継続支援など全ての工程に携わる。

「SE時代は懸命にプログラミングして作ったものであっても、システム障害を発生させることがないか、という面では、自分自身が最後まで責任を背負いきれない部分がありました。それに対して、今の仕事は上流から下流までの全工程を客観的に見ることができますし、自分たちが考えた助言であり、解決案なので、これで大丈夫かと聞かれたら、『大丈夫』と言える。その点で、前職のように責任を持ち切れないといった中途半端なことがないため、自信を持って仕事に取り組めます」。

高木氏のようにSE出身で同社に中途入社するケースは少なくない。会社役員に相当するパートナーを務める宮村氏も、実はSE出身だ。高木氏も宮村氏も、入社当初は会計や監査などアシュアランス周りの知識やノウハウを持っていたわけではない。研修や社内勉強会、OJTなどを通じて、身に付けていったという。「研修はグローバルで展開されているものが豊富に揃っています。OJTを受けながらになるでしょうが、案件も多数あるため、すぐに関与することができますし、先輩・上司からのフィードバックも適宜受けることができます。SE出身者であってもスムーズに仕事に入ることができると思います」(宮村氏)

採用ではマインドやポテンシャルを重要視

求める人材像として挙げるキーワードは「オーナーシップ」だ。「クライアント企業のことや一緒に働く仲間に対してオーナーシップ、すなわち当事者意識を持って突き詰めて考え、行動できる人と、一緒の仕事ができればと思っています」と、高木氏は言う。

宮村氏も異口同音に次のように話す。「様々な経験を価値ある形で積んでいる人に来ていただけることは大歓迎ですが、それよりも前にマインドやポテンシャルをどれだけ持っていらっしゃるかを、重要視しています。オーナーシップがあるのか。厳しいことでも、プロとして伝えるべきことは、相手に伝え説得できるプロフェッショナリズムがあるか。企業の経営者やステークホルダーの立場になって、何をやっていくべきかを考え抜ける人なのか。現状で、自分がやっている仕事の近辺だけを自分の目線からしか見えていない人は不向きかもしれません。逆に、一歩ステップバックして、他の部門とのつながり、取引先や社外の人とのつながりを考えて仕事ができている人は向いていると思います。面接ではそれらを注意して、適性を見定めています」。

RA部門が行っているリスクマネジメントやガバナンス、コンプライアンスなどの領域は、PwCグローバルネットワーク全体でも戦略的に伸ばそうとしている分野だ。市場環境が複雑化し、リスクが多様化する中、企業とステークホルダーを結びつける橋渡し役を担う仕事は、国内外で急激に増えているからだ。オーナーシップを持って、企業の本質的な価値向上に貢献したいと考える人にとって、PwC Japan有限責任監査法人のRA部門は、挑戦しがいのある舞台と言えるだろう。

ライター プロフィール

高橋 学(たかはし・まなぶ)
1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。

リーベルコンサルタントから一言

『クライアント自身で継続改善ができる企業になってもらう』
この言葉に、PwC Japan有限責任監査法人の信念と覚悟を感じました。

コンサルティングをする側としては、クライアントが自分自身で改善できるようになってしまうと仕事が減ってしまいますし、あれこれアドバイスしてクライアントに対応して貰うよりも、コンサルタント自身が対応したほうが遥かに早いと思ってしまいがちです。

少々時間が掛かってもクライアント自身が継続改善ができるようにしていくというのは、言葉で言うのは簡単ですが、実際は想像以上に忍耐力と粘り強さが必要であり、PwC Japan有限責任監査法人のクライアントへの思いがこの一言に詰まっていると思いました。

PwC Japan有限責任監査法人は比較的若い監査法人ですが、その分、様々な面で自由度が高く、キャリアの広がりも業界トップクラスです。
グローバル案件も豊富にあるため、国内外の様々なクライアントのトップレイヤーが抱えるあらゆる課題に取り組みたい方にとっては、PwC Japan有限責任監査法人は最高のフィールドと言えます。

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