注目企業インタビュー

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株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)

IIJの技術を結集した高度なサービスをSI部門が展開
自前のサービスと設備で、他社にできないシステムを作る

プロフェッショナルサービス第一本部
本部長
中 嘉一郎 氏

インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、1992年、日本初の本格的商用インターネット接続事業者(ISP)として創業し、文字通り日本のインターネットを作ってきた。今では国内最大規模のインターネット網を構築し、その信頼性の高さから、国内1万3000社にIPサービスや自社開発したセキュリティ、クラウド、モバイルのネットワークサービスを提供している。
そうしたサービス事業が目立つ会社ではあるが、もう一つの事業の柱となっているのがシステムインテグレーション(SI)事業だ。同社は、大別すると独自のサービスを開発する部門であるテクノロジーユニット(TU)と、営業部門と共にSIを手掛けるシステムエンジニアが所属するビジネスユニット(BU)で構成される。
今回は、BUの中の技術部隊であるプロフェッショナルサービス部門について、活動内容とそこで働く魅力をプロフェッショナルサービス第一本部の中 嘉一郎本部長に聞いた。

売り上げの多くが法人向けビジネス
ストック型でサービスを提供

IIJは、個人と法人向けに事業を展開しており、個人向けでは格安SIMや最新スマホを取り扱うサービスであるIIJmio(アイアイジェイミオ)を提供し、一般的にもよく知られている。だが、売り上げの大半は法人向けのBtoB事業が生み出している。

BtoB事業では、創業以来のコアサービスであるインターネット接続サービスをはじめ、WAN(企業内ネットワーク)、セキュリティ、クラウド、IoT、データセンターなど様々な領域のサービスを、設備も含めて主に自前で開発し提供している。その開発を担っているのが冒頭でも触れたテクノロジーユニット(以下、TU)だ。この組織には高度な技術力を持つエンジニアが集まっており、IIJが“技術者集団”である要因となっている。

一方で、IIJはシステムインテグレーターとしての側面も持っており、その事業を担っているのがビジネスユニット(以下、BU)である。簡単に言えば、TUが技術を駆使して独自に開発したネットワーク関連サービスを、BUが営業し、BU内の技術部隊であるプロフェッショナルサービス部門が顧客のニーズに合わせて構築、運用するという構図だ。つまり、IIJはネットワークサービスを開発する部隊とそれを用いて顧客にシステムを提供するインテグレーション部隊の2つを一つの企業体の中に持っており、これが他のサービスプロバイダーにもSIerにもない、IIJの大きな特徴となっているのだ。

そして、もう一つの大きなポイントがその収益構造だ。システムインテグレーションでは顧客向けにシステムを構築する際、当然のことながらその構築費を対価として得る。これは一時売り上げ、あるいは“ショット”と言われるもので、大手も含め多くのSIerはこれを収益の柱としている。だがIIJが特異な点は、この一時売り上げではなく、構築後のサービスの利用料(月額)を大きな収入源としていることだ。

月額売り上げは、SI運用保守に加え、IIJが独自開発した法人向けのインターネット接続、WAN、アウトソーシング、セキュリティ、モバイルなどの各種サービスで構成される。こういった顧客から継続的にサービス利用料を得るストック型ビジネスがIIJの事業の本質であり、売り上げの多くを占めるのが特徴だ。プロフェッショナルサービス第一本部の中 嘉一郎本部長は「我々は、自分たちで企画し、投資もして設備を持っているサービスを月額で切り売りしていくストックビジネスをメインの事業としている。そこが、ショットがメインのSIerとは大きく異なる」と話す。

サービス開発とSIを一社で完結
コンペで大手に負けない稀有なモデル

現在のIT業界では、大手SIerでもIIJのようなストック型のサービスビジネスの立ち上げを模索する動きがある。だが、言うは易く行うは難しで、企業によってはなかなか思うように進められていないのが実情だ。「理由は明白で、IIJのTUのような組織を事業内に抱えていないから」と、中氏は指摘する。

IIJは周知の通り、ネットワーク関連のサービス設備を自社で投資・開発し、提供することで身を立ててきた。その担い手であるTUはいわばIIJのコア部門であり、看板でもある。「そうした技術志向の社風に魅力を抱き、TUには毎年、技術が大好きな人材が入ってくる。新人には“技術分野のブートキャンプ”と呼ばれる若手向けの様々な研修を受けさせ、基礎から徹底的に鍛え上げる。その後もピュアに技術を追究し、若手だけでなく中堅層も技術に没頭できる組織になっている」(中氏)。そうして研ぎ澄まされた技術者集団から、次々と最先端のサービスが生まれ、IIJの大きな武器となっているのだ。

ただ、それらのサービスも法人企業にそのまま使ってもらうことは難しい。企業別の要件に合わせて設計して、システムを構築・納品し、品質を担保して運用を支援する。その中で必要な部分をカスタマイズし、機能が足りなければオンプレミスで追加構築して組み合わせて提供する。法人企業にとって、こうしたシステムデリバリ(SI)の役割は必要不可欠であり、それを担当するのがBUのプロフェッショナルサービス部門なのだ。

IIJは、元々はグループの別会社でSI機能を担っていたが、2010年にIIJに統合。以来、サービスを開発するTUと共に、SIを行うPS部門が車の両輪となり、IIJの法人ビジネスを発展させてきた。その裏では、互いの仕事を理解するために、BUの技術者がTUに部門異動したり、その逆もあったりと、活発に人事交流も進めている。その結果、互いの仕事を知り、リスペクトする関係性を築くことにも成功しているようだ。「もちろん、意見を主張してぶつかり合うこともある。しかし、最終的には互いを尊重し、協力して自社サービスを軸としたシステムを構築して納品している。こうしてサービス開発とSIを一社で完結できる点が、他社との大きな違いだと感じる」と、中氏は話す。

実際のプロジェクトを例にとって、IIJの優位性を検証してみよう。中氏が紹介するのが、全国に支社が点在する某大手企業の案件だ。この企業ではあらゆるシステムが支社ごとで乱立していたが、これを一つのクラウド基盤の上に統一したいという要望があった。このリプレイスを実現するには、2つの事業が必要となる。クラウドそのものを提供する事業と、その上にシステムを載せるインテグレーション事業だ。

当初、コンペでの競合は大手サービスプロバイダーだったが、結局同社は最適な提案ができなかった。クラウドサービス自体はあっても、インテグレーションを行う部門との調整がうまくいかなかったからだ。

「同社はグループ会社に大手SIerがあり、一見その会社と調整すれば、2つの事業を揃えることができるように思える。だが、大手SIerも多くのプロジェクトを抱えており、現実的に横から新たな案件を割り込ませるのは非常に難しい。一方、IIJは元々TUとBUが互いに協力してITサービスを提供することをミッションとしており、社内でもあるため比較的調整もしやすい。結果、この案件ではIIJの提案が通り、勝ち取ることができた」(中氏)。こうして、サービスもSIもできる真価が発揮され、メガキャリアやメガSIerにコンペで競り勝つことも多い。

導入が増える国産クラウド「IIJ GIO」
最後までやり切るコンサルにも優位性

IIJのSI部隊であるプロフェッショナルサービス部門という組織をもう少し詳しく見てみよう。同本部は、IIJのサービスや IT インフラを中心としたシステム提供を行う第一本部と、アプリケーション開発を含むシステム提供を行う第二本部に分かれている。このうち、中氏が率いる第一本部は所属する技術職の社員は300名、パートナー企業のエンジニアを含めると1,200名以上の大所帯になっている。

同本部の事業領域は広く、ネットワーク構築に加え、SASE(サッシー)やゼロトラストを軸としたテレワーク関連、オフィスのIT化関連のSIなどをITサービスインテグレーション1部〜4部で行い、また、クラウドを用いたサーバシステム関連の構築をクラウドインテグレーション1部・2部で行う。また、顧客システム運用監視を請け負うアウトソーシングセンター部門もある。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ワークスタイル変革、ITシステム運用変革やセキュリティ強化などのIT戦略の立案や施策遂行支援を行うコンサルティングサービスを提供するコンサルティング部門も有している。

このうち、特徴的な部署に言及してみよう。まず注目したいのが、クラウドインテグレーション1部・2部だ。IIJは自社で開発した純国産のクラウドサービス「IIJ GIO」を提供しており、クラウドから撤退する国内ITベンダーもある中、数少ない国産クラウドとして、サービスを持続している。

こうした中、どのようにGIOの優位性を示し、顧客に提供しているのだろうか。ポイントはオンプレミスからのリプレイスだ。GIOは、パブリッククラウド移行の改修コストを懸念する企業やクラウド移行を断念したオンプレミスサーバが残っているなどの課題を抱える企業に対して、既存システムの設計思想をそのまま適用できるVMwareベースのホステッド・プライベートクラウド環境を提供するのが特徴。「『ずっとクラウド化できていないシステムがある』という課題を抱える日本企業のマルチクラウドニーズにマッチしている。」(中氏)

もう一つは、コンサルティング部門だ。現在、コンサルティングファームでもインフラやクラウドのコンサルティングを行うケースは多い。しかし、IIJのコンサルティングには違いがあると言う。「コンサルティングの専門事業者は、基本的にコンサルティングサービス自体を提供することが目的であり、後続のシステム実装はベンダーに任せたり、運用保守を担当したりすることは少ない。それに対し、IIJはコンサルティングからシステムの開発・構築や運用保守まで担う。そうして、顧客にとって作ったシステムの価値が最大化されるよう責任を持って継続的改善へと取り組む。
もちろんシステムの開発・構築〜運用まで担うコンサルティングファームもいるが、利益率の高い大型案件や、一部の超大手企業向けに限られるケースが多いと聞く。IIJのコア事業はあくまでITサービス提供であり、大手に限らず、全ての法人企業を対象にしていることも相違点と言える」(中氏)。

DX支援で新たにアプリのサービスを模索
戦略的なアウトソースで法人も業界も変える

では、IIJのプロフェッショナルサービスは、今後何に注力していくのか。大きく分けて2つの分野があるそうだ。一つは、企業のデジタルシフトに対する支援だ。顧客が推進するデジタル施策をIIJが支援し付加価値を高めるビジネスだ。「だが、DXの活動自体を支援するだけでは、単なる“役務提供(工数商売)”になってしまう。DX支援の先に価値のあるITサービスを提供することがサービスプロバイダーの目指す姿となる。」(中氏)。

現在、IIJではDXに取り組む企業にとって必要なプラットフォームのサービス開発を進めているという。開発主体となるTUが、BUのエンジニアへDXやデータ活用のニーズをヒアリングして、サービス開発の要件へと取り込む。このようにTUとBUが一体となってサービス開発を進めている点もIIJの事業体系ならではの特徴だ。

注力領域として二つ目に挙げるのは、顧客企業に対し、モノ・ヒトを含めたITインフラ資源をIIJが包括的に提供する「ストラテジックITアウトソーシング(以下、SIO)」の展開だ。SIOは、ITインフラに関わる業務やシステムリソースをIIJが標準化したシェアードサービスとして提供する。利用する企業は、インフラ領域を丸ごとIIJに委託することでソーシング戦略を見直し、IT部門のリソースをより重要なDX施策などにシフトできる。
・詳細URL https://www.iij.ad.jp/biz/sio/

昨今、グローバルな事業展開を目指し、内部の人材リソースをコア領域に集中させるためにソーシング戦略の見直す傾向が多く見受けられる。そうした中で、これまでコスト削減を主眼に行われてきたBPOは「競争力確保」を目的とした攻めの一手に転じつつある。

また、SIOは国内におけるIT人材不足の解決の一助ともなりうる。「国内全体において、IT人材不足が声高に謳われる中で、準大手や中堅企業のIT部門のみならず、ITベンダー側も、十分なITエンジニアを確保、増強することはとても厳しい。しかし現状は、ITインフラの構築を要件定義や設計、製品の選定も含めて一から行い、そこに貴重なIT人材を割いている企業も多い。このような企業が競争力に直結しないインフラ領域をシェアードサービス利用にすることで、エンジニアを業務システムの開発などに注力させられる。SIOによって企業はコア領域への投資に集中することができ、IT業界も人材の効果的な配転が可能になる。」(中氏)

このようにインフラにおけるインテグレーション領域の将来を見据え、一社だけでなくIT業界そのものを変えていこうとする姿勢もIIJならではだ。インターネット接続事業をはじめ、広範な企業が利用する標準的なサービスを長年作ってきた同社だからこそ、視野を広く持ち、世の中に貢献するようなビジネスの発想と推進力が生まれるのだろう。

SI発で新たなIIJのサービス作りに貢献
転職者にも手厚いサポートを提供

では、IIJに入るにはどういった要素が必要で、入社後はどんなことができるのだろうか。今回詳述したプロフェッショナルサービス部門に関して、中氏は次のように話す。「技術が好きであるということは大前提。だが、それだけでなく、その技術を使って法人市場をより良くするという視点を持っていることが重要。そうしたビジネスの観点でネットワークやシステムを考えることが好きな人が、当部門には向いているし、楽しんで仕事できる可能性が高いと考えている」。

また、「前述のSIOのように大きな絵を描いて、業界全体を変えていこうという志のある人材もIIJ向き」と、中氏は言う。例えば、自分が極めている技術知識を使ってITインフラやシステムの領域で新しい提案を企画し、それを複数の企業や公共機関へぶつけ、実現させていく。そうしたプリセールス活動からプロジェクトリードまで、自分がオーナーとしてやっていきたい人は、活躍の場が用意されているということだ。

さらに、プロフェッショナルサービス部門に入っても、SIだけでなく、IIJの新しいサービスを作ることに貢献できるチャンスもあるという。「IIJでこんなサービスを作れば法人や世の中をより良くできると着想した場合、まずはBU主導でソリューションとして開発し、何社かにパイロット導入してみる。その結果、ニーズや効果が高いと判断できれば、正式にサービス化につながることもある」(中氏)。通常のSI会社であれば、システムは一社に作ればそこで終わりだ。だがIIJではそれが新しいプラットフォームとなって複数の企業へ横展開される可能性もあるということだ。これはエンジニアにとってのやりがいとなるだろう。

一方、事業規模も魅力だ。IIJの社員数は4,000人余りだが、コンペで競合するのは数万人を抱える大手ITベンダーが多い。大手と同じスコープでビジネスを発想し、切り回すことができるのもIIJで働く醍醐味であり、自身のキャリアをアップグレードすることにもつながるだろう。

技術志向の強い会社でやっていけるかという不安を持つ人もいるかもしれないが、それに対しては「心配は無用」とのこと。「例えば、30代前半で中途入社した人には、相談や助言をもらえるメンターを付け、一緒にプロジェクトを回してみる。その上で、次はリーダーやプロジェクトマネージャー、あるいは一部分のアーキテクトを設計できそうだと判断されれば、そうした役割を任せていく。30代後半や40代でリーダー相当で入ってきた人でもまずは課長や他のリーダーと一緒にプロジェクトで動いてから、その後リーダーを経験してもらうことになる。」

つまり、転職者は一定のサポートが受けられ、その人のレベルに応じて最適なタスクや役割を与えていくというのが方針というわけだ。一方で、プロフェッショナルサービス部門では、ナレッジマネジメントシステムを設け、尖った提案や設計、構築手法など、自身の知識を投稿できる仕組みも作っている。このシステムに投稿したり同僚の投稿を見たり、互いに刺激し合い、成長していける土壌もある。

そして何より、SIやBPO、サービス開発など単体の業務に閉じず、顧客の声を直接拾いながらソリューションを企画検討する場や、それをサービス開発部門と連携しながらインフラサービスを創り上げていくチャンスがある。インフラを中心としたITエンジニアのネクストキャリアとして、IIJのプロフェッショナルサービス部門は魅力的な環境だといえるだろう。

ライター プロフィール

高橋 学(たかはし・まなぶ)
1969年東京生まれ。幼少期は社会主義全盛のロシアで過ごす。中央大学商学部経営学科卒業後、1994年からフリーライターに。近年注力するジャンルは、ビジネス、キャリア、アート、消費トレンドなど。現在は日経トレンディや日経ビジネスムック、ダイヤモンドオンラインなどで執筆。
◇主な著書
『新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『新版 やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』(光文社)(荒濱一氏との共著)
『「場回し」の技術』(光文社)など。

リーベルコンサルタントから一言

IIJの歴史は挑戦の歴史です。技術が本当に好きな社員が集まり、日夜スキルを磨いて技術志向の社風が生まれ、そこから多くの事業が生まれました。技術好きなエンジニアたちが先進的なサービスを生み出す源泉であって、そしてそれを社会へと届けて来たのもまたIIJのエンジニアたちなのです。

テクノロジー部門とSI部門がここまで一体となっている例は他にはありません。自社の高い技術力を最大限に活用しながら、多数の大規模なプロジェクトを今日も提供し続けています。他社とは違うプロジェクトマネージャー。ご興味のある方は、是非一度お話を伺ってみてください。

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